ケンちゃんシリーズを必死こいて見たり、かぶりつきで見た

ということはなかったが、人気の番組ゆえ度々見ていた。

すし屋の店員というか丁稚奉公の青年は、マンガが得意というだけで、周りから「マンガ君」「マンガさん」のあだ名で呼ばれた。

ここではケンちゃん目線でマンガさんと呼ぶことにする


お人好しでおっちょこちょい、つぶらな瞳とハの字眉毛が人柄を醸し出している。

出前を13回も間違えたのに、本人15回目だとその回数すら間違えているすっとこどっこいでもある。


独特の「〜だもんね」の言い回しは自己肯定感強く、自分の世界を出ない気弱な風にも見えた。

彼の描くマンガとは鼻血ブーで有名な谷岡ヤスジそのもので、ケンちゃん家族とその周辺の「上手い」の基準がどうだったのかは定かでない。



マンガさんを演じるのは進士晴久、

龍角散のコマーシャルでも有名になったあのストーカー、かつ、妄想癖のある学ラン青年なのだ。

このCMも表情といいキャラといい実にグッド!それに加えて声もいい。

これは彼にしか演じることが出来ないと年下のくせにそう感じた。


そんなマンガさん、いや、進士さんを見なくなり数年

全日本プロレス中継、花道から登場するジャイアント馬場の護衛の付き人にあのマンガさんを見つけた。

「あっ!マンガさん!」

そう叫んだかビックリしてあめ玉飲み込んだか、牛乳を吹き出したか忘れたが、これはマンガさんに違いなかった。

見ないと思ったらプロレスに入門していたんだ。

やがて、この選手の名は越中詩郎であり、進士晴久ではないことを知った。


ただ、いつかインタビューで

「明日は絶対に勝つんだもんね」とか

「今日はリック・フレアーから念願のNWAのベルトを取った。……と、日記には書いておこう」

とか言うんじゃないかと期待していた。



つづく