はじめに
2014年2月2日から放送された『ハピネスチャージプリキュア!(以下ハピチャ)』も2015年1月25日に無事最終回を迎えました。今回はそんなハピチャが私に残してくれたものと題しまして、感想を述べさせていただきます。
注意:この感想文は他のプリキュア作品との比較が含まれています。ただし、対立を煽りたいわけではありません。
私自身の感想文です。
『残したモノ』ですので、良いものにも悪いものもお話します。
過去作品を見た持論を含みます。
また、書いてる本人が限られた時間で書いておりますので誤字はご愛嬌。
以下、プリキュア作品名は長いため、略称
ふたりはプリキュア:『無印』
ふたりはプリキュアMaxHeart:『MH』 (無印とMHを合わせて『初代』)
ふたりはプリキュアSplashStar:『SS』
Yes!プリキュア5 & Yes!プリキュア5GoGo!:『5』
フレッシュプリキュア!:『フレプリ』
ハートキャッチプリキュア!:『ハトプリ』
スイートプリキュア♪:『スイプリ』
スマイルプリキュア!:『スマプリ』
ドキドキ!プリキュア:『ドキプリ』
目次:①10年目の挑戦と過去作への尊敬。
②個性溢れるハピチャメンバー達の魅力。
③日常回、中盤戦、そして最終戦。
④伝えたかったこと。『愛』とは何か。
⑤総評。プリキュアに対する雑談。
① 10年目の挑戦と過去作への尊敬。
10年目のプリキュアであるハピチャは数々の挑戦を行いました。挑戦に関して目を見張るものが多く、見ているこちらも楽しくなるものが多々含まれていました。
・プリキュアにコスチュームとそれに準ずる能力を与える『かわルンルンシステム』
・全員が飛行能力と、シールド常備(SS以来なんと8年ぶり)
・準必殺技を放つために、プリキュア初の『モードチェンジ』を搭載(SSはモードチェンジではなく2つの別の変身を持つ扱い)。
・『ラブプリブレス』と呼ばれるプリキュアは自身が考えついた必殺技を放つことができる。つまり、想像力の豊かなら無限に技を持てる。
・歴代初の『伝説の戦士』ではないプリキュア(1度も伝説と明言されていない)。
・世界中にプリキュアが蔓延る、オールスターズ状態。
・すでに敵の侵略が地球に広がっている。
・映画でつぐみちゃんの『足が動かない』という、プリキュアでもどうしようもない課題。
・シリーズ初の炎属性の主人公。そして、初めて『プリキュアになりたい』という夢を持ってプリキュアになっためぐみ。
・『ごはんをゆっくり食べたいから』という歴代戦士もビックリの理由でプリキュアになったゆうゆう(そのくせ強い。やはり想いの強さ=プリキュアの強さ)。
・・・とまあ、今思いつくだけでもこれだけの量の挑戦が含まれていました。特に飛行能力などの特殊能力を使用できる基本ステ高めのプリキュアには驚きました。苦戦していたのも正直最初の2,3話だけだったことを覚えています(笑)。他にはプリキュアではどうにもならない『悩み』を題材にした映画はとても良い出来でした。私自身、目からうろこだったというか、映画館まで見に行って本当に良かったと思える作品でした。作画も挿入歌『勇気が生まれる場所』も素晴らしく、ハピチャファン並びにプリキュアファンなら必見映画だと思います。
そして10周年作品として、過去作への尊敬まで兼ね備えていたのがハピチャの凄いところと言えるでしょう。
・背景などに過去作品の言葉、関係したものが置いてある(『ふたりでプリキュア』、増子美代など)。
・10周年記念応援メッセージ。
・過去作のタイトルをふんだんに散りばめたED『プリキュアメモリ』。
・初代に原点回帰したようなステゴロの戦闘シーン。
やはり、過去作も見てきたプリキュアファンからしてみれば、10周年メッセージというのは好きなプリキュアにオールスターズ以外で会える夢の時間だったわけですし、過去作をリスペクトした熱い言葉、戦闘シーンには心打たれたものです。そして『プリキュアメモリ』は聞くだけで11年間愛してくれてありがとう、という言葉が聴こえてくるかのような素晴らしい曲でした。
これら、挑戦と過去作への尊敬というのは、今現在プリキュアを含む『女児アニメ』の熾烈な戦いを勝ち抜くための手段だったと言えるでしょう。ここ数年、プリキュアブランドは梅澤プロデューサーの最初の作品『フレプリ』の特性を色濃く受けていました。フレプリは、初代を手がけた鷲尾プロデューサーの初代~5までの作品を尊敬しつつ、かつ挑戦をしたプリキュアでした。今までの殻を破るため、タブーとされてきた『水着』などの肌の露出、〇〇プリキュアという名前の定着。人気が例え出ても、ストーリー、キャラクターを1年で一新するやり方、初代から言われ続けた『伝説のプリキュア』をより、ヒーロー性に特化させた手法等、ハピチャの前作である『ドキプリ』まで、多く引き継がれてきたものばかりです(水着は無理でしたが)。これにより生まれたアドバンテージは
・プリキュアブランドの新たなる可能性の模索、視聴年齢幅の拡大
やはり、これだと私は考えています。この狙い通りフレプリは商業的な面でもSSからの女児アニメのライバルであった『きらりんレボリューション』を倒し、大成功を収めました。それからハトプリ、スイプリと平穏な時代を過ごしたプリキュアに、再び強いライバル達が現れました。『アイカツ』『プリパラ』『妖怪ウォッチ』『アナと雪の女王』などです。これらは新しく、プリキュア達の不動の女児人気を奪っていきました(というよりは、奪われに行った)。このように最近の『女児アニメ』に対抗するためにはフレプリから受け継がれてきたテンプレだけではない、新しい『何か』をプリキュアで示さなければならなかったわけです。そして、過去作への尊敬はもちろん、今までプリキュアを見てくれていたファン、昔プリキュアを見てくれていた、大きくなった女の子達にもう一度プリキュアに目を向けていただくサービスだったと考えられます。これは10周年という記念すべき時にするには名案だったと思います。また、10周年だからこそ、過去作への尊敬を忘れずにそれらを思い出させるようなことをハピチャの劇中ですることによって、昔見ていた女の子が子供を授かっていた場合、彼女たちの子供がプリキュアを見せてもらえるチャンスが増えるわけです。ですから、私はこの過去作をリスペクトする方法は、プラスに働いた、と考えています。
② 個性溢れるハピチャメンバー達の魅力。
プリキュアシリーズは、やはり中学生の女の子達が主役ですから、彼女達に魅力がないといけません。今までのシリーズを見ますと、あきらかに主役に役回りが行き過ぎていたり、誰かが不遇な役目を受けたりなどすることがありましたが(私の好きなブッキーはそれに該当しますね・・・)、今回のハピチャは不遇な役割を受ける子がなく、全員の個性が光っているというとても面白いものでした。ただし、ここで注意しなければならないのが『全体のバランスを見たときに不遇な役割を受ける子がいない』というだけで、各クールに分けた時、前半はめぐみちゃん以外が優遇され、後半はめぐみちゃん以外が不遇な扱いを受けていた事は間違いありません。これは序盤に個性の強力なヒメとゆうゆうのキャラが出しやすかったこと、中盤は新プリキュアとして登場したいおなを押していたこと、そして終盤では『恋愛』『愛』を語る上で、その中心にいためぐみちゃんが必然的にキャラ立ち(悪く言えば、他キャラの個性を脚本上潰す)していった事が挙げられます。
ですが最初に話した通り、全体的に見れば個性溢れるプリキュア達です。
主人公の『愛乃めぐみ』はシリーズ初の『プリキュアになること』を夢見てきた主人公で正義感に溢れ、人が幸せハピネスでいることを大事にする子です。持ち前の明るさはヒメを明るくさせ、プリキュアであることを隠していたことを苦しく思っていたゆうゆうを軽く受け入れ、ヒメと当初仲の悪かったいおなとヒメを仲良くさせるために一役貢献しました。変身前のほがらかで陽気な雰囲気とは逆に変身後は『キュ荒ブリー』と呼ばれる程の歴代屈指の戦闘狂となり、目の前の的には言葉よりも拳で語るなんとも男前なキャラクターとなりました。そして今シリーズの根幹をなす『愛』『恋愛』を『愛の名を持つプリキュア』として真っ向から受け止め、自らも恋愛で傷つき、人を傷つけてもそれを悪く言う敵に打ち勝つ強さを最後には身につけました。彼女は最初『愛』を自分を大事にしない、人に献身的に接するものだと思っていました。これは同じ『愛』を人に与えたドキプリの主人公『相田マナ』とは異なり、非常に危ういものでした(自分を大事にしない愛は、最終的に裏切られ、絶望へと突き落とされる。童話の幸福な王子などがその象徴的な例です)。しかし、最終的に愛とは自分さえも満たしてくれるもの、と彼女なりではありますが、次第に答えを見つけ成長していきました。
本名『ヒメルダ・ウインドウ・キュアクイーン・オブ・ザ・ブルースカイ』、通称『白雪ひめ』は歴代中最も卑しい心を持ち(友達は自分に都合の良い道具)、弱く(プリキュアとしては基本スペの髙いハズのハピチャのスペックを持ってしても弱い。おそらく開始当時ではキュアブロッサムより劣る。戦闘では逃げ出し、普段も人との接触を避ける)、すぐ調子に乗る(ファッションオタクなわけですから、自分のテリトリーであるファッションの話になるとすぐ調子に乗る。そうすると急にため口で話し始める)等駄目駄目な所が目立つプリキュアとして個性をいかんなく発していました。もちろんそれが最終的には見違えるように成長するからこそ彼女は愛されキャラな訳です。私もこのヒメの自分勝手だけど、それでいて温かみのある人懐っこい性格がとても好きになりました。彼女がこれだけ調子に乗るのも裏を返せばそれだけ心を開いているという証であり、友達を都合の良いものなどの発言も、視聴者である子供たちと同じ目線で成長していくキャラとして書きやすいし、第一彼女自体もともと友達というものを知らなかったわけですから、『知らなかったなら仕方ない』で済む話です(げんに成長した彼女の姿を見て、昔の彼女を強く咎める人はいないでしょう)。序盤では強烈な個性でほぼハピチャチームのムードメーカーとして、中盤戦では『願いを1つだけ叶えられるプリカード』の力を、序盤では考えられない人のため、自分を憎むキュアフォーチュンに対して使います。彼女のこういった度胸はまさにopの『勇気』の部分を担当するプリキュアとして素晴らしいものを発揮したと言っていいでしょう。
ハピプリ最強の能力を持つプリキュア、『キュアハニー』こと『大森ゆうこ』愛称『ゆうゆう』はごはんが大好きすぎて飯をゆっくり食べるためにプリキュアになるという変わった経歴をもつ少女です。今までのプリキュアは第一に妖精の王国の再建などの妖精の国をなんとかしないと・・・という、頼まれたからしたものが多いですが、ゆうゆうは飯をゆっくり食べたいからというとんでもない理由でなっちゃいます。その癖強い。彼女は通常の『ラブプリブレス』と呼ばれるアイテムを持たず、『トリプルダンスハニーバトン』を使います。これにより、
・短距離の瞬間移動能力(効果範囲は自分の触れた人物にも及ぶ)。
・中程度の傷を完全回復させる能力。
・リボンによる、拘束能力。
・歌による洗脳、戦闘不能化させる能力。
・コロニー落とし。
などなど、数々のチート能力を発揮します。また、彼女が他のハピチャメンバーと大きく異なるのが『完成された精神面』です。プリキュアは基本主人公だけ精神面が強いというのが普通でした(初代のなぎさや、ハトプリのつぼみなどの一部例外あり)。それが今作ではめぐみは普通の中学生並みの精神力しか兼ね備えておらず、むしろプリンセスの方が後半ではまだ芯の強さを見せるほどです。ですが、ゆうゆうはそのようなブレを一切感じさせない、まさに大人な少女であり、ごはん愛を最後まで突き通すという心の強さを見せつけました。
序盤から出ていましたが、中盤から正式にハピプリメンバーとなる少女『氷川いおな』は、過去に目の前で自分を庇って姉を敵に奪われたという事から、序盤は強い恨みをひめにぶつけます。ですが、次第にハピプリメンバーと触れ合い、ひめにアクシアの箱を開けたという事への贖罪を悔やみ、精一杯の誠意を見せたことにより完全に和解。和解後はひめと一気に仲良くなり、お金の事に厳しいお母さんのような存在になっていきました。非常に真面目で優秀なのですが、その優秀さが時に空回りしてしまう(スマプリの青木れいかさん、フレプリの美希たん等)のようなキャラで、かつ真面目にする時はするタイプです(同じ紫のプリキュアなら、ソードよりもムーンライトさん寄り)。案外精神年齢は年相応で、恋愛話では頬を赤らめたりする場面も見受けられます。しかし、長年宿敵ファントムを倒そうとしていた事もあって周りの動向、戦いにおいては歴戦の戦士のような振る舞いです(映画の警戒シーン等)。戦闘は、序盤の旧キュアフォーチュンも中盤以降の新キュアフォーチュンも、星をイメージした物理攻撃主体です。単純な近接戦闘能力ではファントムと1対1で打ち勝ったところを見ても、中盤ではラブリーよりも強かった事がうかがえます。彼女は恋愛絡みのことがありましたが、まだまだ女友達といる方が楽しい描写が多く(クリスマスを女友達と過ごす等)、終盤の『恋愛劇』ではオレスキーとの熱い格闘戦以外での目立った活躍はあまり出来ませんでした。成長は序盤~中盤にかけて思いっきり描けていたのではないでしょうか。といっても、彼女もゆうゆう程ではありませんが達観しておりますので、あまり成長していたかと言われれば怪しいですが(笑)。
③ 日常回、中盤戦、そして最終戦。
ハピチャを語る上で欠かせないのが個人回のユニークさです。視聴すれば分かりますが、日常回がどれを取っても記憶に残るしとても面白い。私が特に印象に残っているのが
・ひめとゆうゆうが一緒にじゃがいもを剥く。
・ハニーvsホッシーワ歌合戦(作画的な意味でも笑)。
・潮干狩り。
・母国へ帰る母の日
・いおなとひめと初めてのおつかい
・夏合宿と、ひめの誠司に対する気持ち
・アローハプリキュア
・ファントムを看病するゆうゆう
などなど、思いつくだけで、こんなにもたくさんあります。ハピチャの魅力は、こういった日常の何気ない幸せであり、そこに『幸せハピネス』を感じるという事ではないでしょうか。だからこそ、私はハピチャを振り返った時、『どんなに結末が粗末な争い』だとしても、面白かったと胸を張ることができます。
それでは次に中盤戦です。プリキュアの大きく盛り上がる回は基本2つ。追加戦士や新パワーアップアイテムが手に入る中盤戦、そして最終戦です。最近は特に追加戦士を中盤に、パワーアップアイテムを3クール目に出すパターンが主流ですね。さて、そんなハピチャの中盤戦は、いおなとひめの間に走る亀裂、それをいかにして治すかというものでした。1話から『絶対に許せない』と強く恨んでいたいおなは、姉を封印したファントムをアクシアの箱から開放した張本人であるひめを許せなかったワケです。そして、ひめはアクシアの箱を開けたことをとても悔やんでいました(その結果、贖罪を晴らすためにプリキュアになって戦っている)。ひめに悪気は無かったし、裏ボスの手引きでアクシアを開けてしまったわけですが、それでもアクシアの箱を開けてしまった自分自身を許せなかった。ハピチャはこういった『非常に難しい問題』に対して中盤戦でぶつかり悩みました。これは正直当の関わっている本人たちの問題であり、他者が口出しするには躊躇するような問題です。ですからプリキュアではどう、問題を解決していくのかが楽しみでした。その糸口になったのが、ひめの周りの達観した仲間(めぐみ、ゆうゆう)と、今まで2クールに渡って積み重なったひめの経験値でした。ひめはめぐみ達に会うまでは自分の事しか考えなかった人間でした。ですが、めぐみ達と会うことにより、その心は視聴者に伝わるほど成長していった。彼女は自分のために集めてきた『プリカード』を、めぐみ達に相談してから、いおなに渡したのです。ひめが下した結論、それは『許されなくてもいい、ただ、私がしたことは悪いことだ。だからあなたに今私が出来る精一杯をさせてほしい。このプリカードであなたの願いを叶えて』という事でした。これは今まで2クールに渡って彼女を見てきた視聴者には感動するシーンだったに違いありません。あのワガママ娘が、相手のことを想いハピチャメンバー3人の持てる財産をちゃんと相談してから渡す。これには私もまさに脱帽せざるを得ませんでした。
それではここで、いったんひめではなくいおなに目線を当ててみたいと思います。前半で書いたことを読んだ人には『あれ?』と思うことがあると思ったからです。それは『ひめは別に開けたくてアクシアの箱を開けた訳じゃなかった。それに、ひめがいおなの姉を封印したんじゃないじゃない。これでひめだけを怒るのは理不尽じゃないの?』と。そうです。そのとおりです。ひめを強く怒っていたいおなはひめの話を聞けばとても屁理屈をいう悪い奴にも聞こえます。ですがこのひめの話、これは視聴者側には小出しに出ていた情報であり、いおなはひめが『悪意を持って』したものだと思っていたのです。それにファントムに目の前で姉を封印されたいおなは勿論、強くなってファントムを倒したいと考えます。ですが強大なファントムには勝てず、それにアクシアの箱を開けた本人であるひめは敵と出会っても逃げてばかり。勝てない自分の不甲斐なさと姉を目の前で失った喪失感が向けられてしまった矛先、それがひめだったという訳なのです。結果ひめの『勇気』がいおなを『希望』のプリキュアに成長させる事となるのです。後日談として23話では2人の少しぎくしゃくしたお買い物回があるのですが、これはとても人間感情を描き、2クール離れていた2人の心をつなぐ良回となっています。是非ご覧下さい。
最後に、最終戦です。率直に言いましょう。『歴代トップクラスの神作画』と、『歴代ワーストの内容の無い最終戦』でした。というか、他のプリキュアと比べたくない程にダメです。ちなみに、最終回Bパートの日常シーンは良いです。最終回Aパートを含む、最終戦が駄目なのです。一応話すならこうです。
・・・ミラージュを操っていた裏ボス『レッド』。彼はブルーを憎み、ブルーの愛する地球を滅ぼすために自身の従える『赤い星』を地球にぶつけようと試みる。赤い星に乗り込み、彼と戦うハピチャメンバー達。彼は戦いの中で語りだす、自分が地球を滅ぼす理由、それはかつて『愛』を持って赤い星を育んでいた自分だったがその愛は裏切られ星は滅びた、こんな気持ちをブルーにも味あわせてやりたいのだと。戦いの中でラブリー以外のプリキュアが封印される中、ラブリーは愛を語る。そして地球上の全ての人の愛で最終フォーム『フォーエバーラブリー』となり、『愛無き者』に愛を与える決戦が始まる。彼女の思いは拳となり、死闘の中でレッドに伝わっていく。そして最後に完全にレッドに愛を伝える事に成功。和解したレッドはブルーとミラージュと共に赤い星にまた命ある星にするために地球を離れるのであった――。
以上がハピチャの最終戦のほぼ内容です。正直文章にすれば面白そうです。それもそのはず、別にストーリー構成の地盤は悪くないからです。それではどこが悪いのか。問題は④でたっぷり語る『愛』にあるのです。つまり、ここで敵を改心させる為に必要絶対条件である『愛』これがハピチャ最終回Aパート、および最終回までの展開上響かなかった、これが私が、史上最低の最終戦の評価を付ける要因になったことです。それでは④へと移りましょう。
④ 伝えたかったこと。『愛』とは何か。
②でお話した通り、ハピチャはキャラの魅力が素晴らしいです。しかし、その魅せ方は前半~中盤までずっとひめ、ゆうゆう、いおなに主役の座を食われ続けためぐみにとっては不遇なものとしか言いようがありませんでした。主役は作品の方向性、そして物語の根幹となる重要な役割を帯びています。初代、SSでは『ふたりは』の名のとおり主役が二人であることに意味があり、二人だからこそどんなに困難な敵にも立ち向かう強さを持っていたし、乗り越えることができました。SSの映画の名台詞『ひとりでは無理でもふたりなら出来るって思える・・・だからプリキュアはふたりなの!』はまさに初代とSSの主役が2人いる理由を指し示す素晴らしい言葉でしょう。このように主役は物語の根幹をなす重要な役割を帯びています。しかしいかんせんハピチャはめぐみが頭はあまり良くないがコミュニケーション能力に秀でていて優れたバランスの取れた人間でありなかなか扱いづらかったこと、他の3人の個性が強くキャラ立ちがしやすかったことがつらかった訳です。しかし終盤に入って物語は『恋愛話』へと入っていきます。
ここで過去作に少し触れていきたいと思います。過去のプリキュアの恋愛話とはどういったものかと申しますと、ウェスターの言葉を借りるなら『あまずっぺー』という事でした。恋愛色の強かった5(特に1年目)では主人公と好青年の恋愛が書かれています。相手は淫獣、教師と先生の関係、年上、王子様と書くと非常に怪しくなりますが(笑)、主人公ののぞみちゃんを力の強さではなく心の強さの支えとなってきました。ハトプリからドキプリまでは逆に恋愛色を薄め、基本的にプリキュアだけで物語が進んでいくといった方式を取っています。つまり、これは作り手側も恋愛は複雑な感情の混ざり合いで生じるものであり、それを物語の基軸にすればそこにストーリーの圧迫が発生してしまうから極力避けようという気持ちが見え隠れしているというワケです(恋愛色強めの5でさえ、メインのストーリーは『夢』)。そういった意味では少し男と接触のあったいおながほぼ1話で恋愛ストーリーから離れたこと、ひめの恋愛心を気のせいにしたのは正解だったのかもしれません。
ハピチャは①で話したとおり挑戦したプリキュアです。初めてメインストーリーに『恋愛』を絡め、ブルー、ミラージュ、そして主人公のめぐみちゃんの三角関係を作り出しました。そして、たった14歳の少女であるめぐみちゃんはブルーの元カノであるミラージュを殺さず改心させるためにどうしたか。自分の気持ちを押し殺し、元カノの今でもブルーを愛する気持ちを優先させたのです。これは②の時に話した『自分を大事にしない愛』であり、他者の幸せを望んできためぐみちゃんらしい回答でした。しかし、逆に言えば、彼女はこの終盤時点で『第1話から何の成長もしていない』事をストーリー構成は語ってしまったのです。
・・・④のタイトルの結論を申し上げます。何も伝わりませんでした、彼女たちにとっての愛とは何だろう。最終回Aパートを見れば分かるとおり、15分の間に何度も『愛』ということを連呼しました。そして愛という言葉を連呼した結果、めぐみちゃんの想い・・・愛が通じレッドは改心したのです。どういうこっちゃ。私に誰か教えて欲しいです。確かに去年の『ドキプリ』の主人公である相田マナちゃんも愛を連呼するという点では同じでした。最終決戦前からのゴリ押しの愛の連呼。しかし、彼女にはそこまで愛を連呼する事を裏付ける強さがあった、プリキュアとして、生徒会長として、人として愛を何度も連呼出来るだけの能力があったのです。マナちゃんは中盤戦から愛について悩み、自分の語る愛が遠くの人だけを見て、近くの人のほんの少しな気持ちに気づくことが出来ていない事を理解します。そして行動に移すのです。結果、彼女は今まで自分が振りまいてきた愛を最終回に受け取り、歴代最強クラスの『パルテノンモード』に進化するワケです。それではめぐみちゃんの場合はどうだったのか。自分自身の愛の欠陥に気がついたのはなんと44話。遅すぎます。それでも気づいてくれてよかった・・・とは思いましたが、最終戦に本格的に入る46話から、44話の葛藤なんて無かったかのように『愛』だけを連呼されていました。・・・かつて、初代の敵『ポイズニー』は語りました。『力無き正義は悪にも劣る』と。この力とはもちろんパワーの事も指し示しますが、悪の理論を覆すほどの意思の力も必要である、ということも含まれています。まさに『ハピチャ』は悪を説得できるだけの意思の力を持ち合わせておらず、ただ子供の喧嘩のように、愛という安っぽい言葉をぶつけたのです。一応まだ救いの道はあったと思います。めぐみちゃんの代わりにゆうゆうがリーダーとなって敵を倒すことです。ハピチャのキャラで最も達観とし、愛(恋愛も含めて)についてよく理解していたのはゆうゆうでした。それならいっそゆうゆうが倒せば整合性も取れるし、現在の安い言葉の投げ合いも重みのあるものへと変わるはずだと思っていました。まぁ結果は前述の通りなのですが。
結果『ハピネスチャージプリキュア!』は、当初のありふれた日常を守るために戦うわけではなく、ドキプリのように意味のある愛を敵にしめす訳でもなく、ただ『あい』という2文字をたくさん叫んで敵をなんだかんだ改心させる最終戦となってしまったのです。ハピチャが前作ドキプリを含める『歴代の伝説の戦士』になれなかった理由は今まで禁断とされてきた甘酸っぱくない大人の恋愛に手を出し、尺をそちらに大きく削られてしまったこと(挽回するにも44話ではもうすでに遅かった)が大きいでしょうね・・・。
⑤総評。プリキュアに対する雑談。
なんだかんだグダグダ書いてきましたが、言いたいことはただ1つ。ハピネスチャージプリキュア!は、面白かったということです。
そして④で散々言っていますが、私は愛乃めぐみさんが1番ハピチャの中で好きです。だからこそ、最後のハピチャを締めくくる最終戦がこんなにも気に食わなかったのかもしれません。多くのプリキュアファンにとってプリキュアは特別な存在で毎週見ないといけない体になっているのではないかと思います(笑)。私はその1人なのですが、46話から最終回までの期間、初めて自分が熱く見ていたプリキュアを見る目が変わってしまいました。製作陣の伝えたいことが汲み取れない悲しさ、もどかしさ、プリキュア達が言葉で必死にレッドを説得しているのにその言葉がまったく胸に刺さらない苦しさ。ですが生活の一部ゆえ、それから逃げることができない(見ないという選択肢がない)つらさ。どれをとってももどかしかった。ですが、最終回Bパートを見て救われました。③で話したとおり最後レッド、ブルー、ミラージュの3人は地球を離れ、プリキュア達に日常が戻ります。そして、かつて倒した3幹部も人に戻り、生を全うしていました。映画で登場したつむぎちゃんも足がすっかり回復して動くことができるようになっていたのです。これだけで泣きそうですが、ハピチャ組と誠司くんはかつてめぐみちゃんとひめが出会った場所でお話をします。そこに全てのハピチャの回答が詰まっていました。確かに最終戦こそひどかった。ですが、それまでずっと『幸せハピネス』な気持ちを与えてもらったのは間違いじゃなかったと。そして彼女達がまたあの序盤~最終戦までにたくさんあった幸せな日常に戻ると聞いたとき、心から『よかった』と思うことができました。ですから、最後こそ文句がありましたが、ハピチャは私の中で面白かったと思うことができるようになれました。そしてハピチャの映画。これはおそらく制作側が本当に『ハピネスチャージプリキュア!』でしたかった事がちりばめられているように感じます。
・・・2015年2月1日より、12年目10代目のプリキュア『Go!プリンセスプリキュア』が始まりました。シリーズディレクターはスイプリ、スマプリ、ドキプリと名演出を手がけた『田中裕太』さんです。1話を見ましたが、非常にプリンセス要素を取り入れた、新しいプリキュアが始まったなという気持ちがしました。このようなワクワクした気持ちを、ハピチャが始まった当初の私も感じていた事を思い出しました。是非とも失敗の経験を活かし、次の作品をより良いものにしていただけることを願っています。
最後に・・・これはただの1個人の感想であり、この感想がプリキュア自身に与える影響は皆無です。ただ、私自身1年間楽しませてもらったハピチャにせめてものお礼がしたいと思い、こうした文に書き記すことにしました。ハピネスチャージプリキュア1年間お疲れ様でした!