プロレス名勝負伝~アントニオ猪木vsマスクド・スーパースター~
“そんな試合知らないよー”
とか“
それは名勝負なのぉー?”
とか
“もう!私と仕事、どっちが大事なのよぉ!”
というようなものが多々出てくると思いますがその辺はカンベンしてくださいね。
さて第1回目の今回は昭和56年8月6日に東京・蔵前国技館で行われたアントニオ猪木vsマスクド・スーパースターの賞金3万ドル&覆面はぎマッチです。そう、ボクが勝手に二代目として襲名している流星仮面マスクド・スーパースターの試合です。
これはねー、思い出があるなぁ・・・
なんたってマスクドが勝てば猪木が3万ドルを払い、猪木が勝てばマスクドがマスクを脱ぐ、というこの賞金3万ドル&覆面はぎマッチというのが当時8歳くらいのボクの五臓六腑には染み渡ったもんでした。
子供だったから当然賞金3万ドルがいくらか?なんて興味もなかったし、覆面はぎマッチが決まってから実況の古舘さんが、一説では正体はなんとか・・・というウワサがあります、みたいなことをいっていても誰だかさっぱりわからなかった。でも!正体不明のマスクマンが負けたらマスクを脱ぐという単純明快にしてインクレディブルな事態に興奮は抑え切れなかった。
マスクド・スーパースターは当時から大好きなレスラーだ。
あの頃、ヘビー級のマスクマンてだいたいしょぼいのばっかりだったが、マスクドはパワーがあったし動きもよく、そしてなんといっても得意技のフライング・スリーパーに惹きつけられるものがあった。相手をロープに振って、返ってきたところを大きくジャンプし左腕を相手の首に引っ掛けて倒す強烈なこの技。
フライング・スリーパー。この跳躍!!
よく馬場さんのジャンピング・ネックブリーカードロップのパクリという人もいたが、走っていって相手の首に腕が引っ掛かってからジャンプし落とす馬場のそれとはちがい、マスクドのは相手めがけて初めからジャンプしながら跳んでいって首に腕を引っ掛けるので滞空時間が長かった。馬場のドスーンという破壊力あるネックブリーカーに対しフワっと浮く感じで相手を眠らせてしまうような・・・まさにフライング・スリーパー(空中で眠る人)で、それがなんともカッコよく好きだった。
そんなマスクドとあの頃の猪木の試合だ。しかも覆面が懸かっている。大興奮であった。
試合は12分くらいだったった。試合内容は猪木がマスクドの腕を、マスクドが猪木の首、背骨を攻め込んでいくという展開で、序盤戦はけしてデッド・ヒートというわけではなかった。
ワンハンド・バックブリーカーで攻めるマスクド
でも試合終了間際、終盤が熱かった!!マスクドの必殺フライング・スリーパーを自爆させた猪木が延髄斬り!!そしてそのあと放った技はなんと猪木久々のジャーマン・スープレックス・ホールドだったのだ!!
賞金3万ドル&覆面はぎマッチにしてこの試合のフィニッシュがジャーマン・スープレックス・ホールドとはぁ!!
猪木の人間橋だ!!
ボクはリアルタイムで猪木のジャーマン・スープレックス・ホールドは、この試合まで見たことなかった。この頃の猪木はジャーマン・スープレックス・ホールドをほとんど使わなくなっていたからだ。
当時の相手がハンセン、ホーガン、そしてアンドレと大型の選手ばかりであったから使う機会がなかったのかもしれない・・・とはプロレス的な考えだが、この当時の猪木はかなり体調が悪かったそうなので、その辺の理由もあって使えなかったのかもしれない。しかし、どっちにしろボク的にはストロング小林戦での猪木のジャーマン・スープレックス・ホールドを本で見たのが当時としては知識として精一杯。だから幼心に猪木のジャーマン・スープレックス・ホールドは完全に“伝説”だったのである。
それが!!よりによってこの子供心をくすぐる覆面はぎマッチにきて198cmで130kgもある大好きなマスクド相手に“伝説”が炸裂したんだからたまったもんじゃない!!
しかもこの日、試合中に解説の桜井康雄さんが、猪木がこの試合の朝、カール・ゴッチの夢を見て、ゴッチに喝を入れられ早朝5:00に目が覚めた、と話していて・・・そして結果ゴッチ直伝のジャーマン・スープレックス・ホールドでフィニッシュだなんて桜井さん子供心をくすぐりすぎだぜェ~!!(別に桜井さんのせいではないけど)
そして感激的興奮してるのもつかの間、そうだった!!覆面はぎ!!猪木の覆面はぎが始まった!!
マスクドの覆面が剥がされるー!!
いやがるマスクドをボディスラムで投げ覆面を取る猪木!!あああ覆面レスラーの素顔が出る!!
覆面はとうとう剥がされた。しかしセコンドの外国人レスラー(確かスタン・レーン)がタオルで顔を隠しマスクドは逃げるように控え室に帰っていった。リングでは覆面を叩きつけ踏み潰しダァー!!の猪木。
なんだ、マスクドの正体は見れないのか・・・
覆面はぎ=素顔をさらすわけではなかったのか・・・
でも日本初の覆面はぎマッチ、猪木のゴッチの夢、そして初めてテレビで見た猪木のジャーマン・スープレックス・ホールド!!なんて夢のある試合だったんだろう!!
アントニオ猪木が引退する頃、テレビでも特集やったりしたし、もちろん雑誌でも多く取り上げられた。
そんな中に必ず猪木の名勝負を・・・みたいな企画があり、芸能人やレスラー、スポーツライターなどが名勝負をピックアップしていたものだった。ジェットシン、ハンセン、アリ、ウィリーウイリアムス・・・それらは確かに名勝負だったかもしれない。ボクももちろんそう思う。でも誰に聞いても、どんな雑誌でも登場しなかったけど・・・そして猪木抜きでの名勝負を上げろといわれてもけして出てくることはないだろうこの試合だけど・・・
好きだった猪木とマスクドが戦った、夢のあったこの試合はボクの中で思い出の名勝負なのです。