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私は12月10日の上演を見て来ました。
終演後レストランでネトレプコに遭遇しました。
初日にロジョーネで見た友達が話してくれたのですが、現代風に設定された演出がとても不評であったそうで、その事はダヴィデ・リヴァモアに対する激しいブーイングからも窺い知れます。私自身は美しくコントラストに満ちた舞台が気に入りましたが、イタリアの保守的なファンには過激であったのでしょう。それよりも人物間の葛藤がダイナミックに描かれた事に興奮しました。
ネトレプコに対するブーイングは毎度の事ですが、その理由は彼女のイタリア語の表現にあります。2012年ドン•ジョヴァンニのドンナ•アンナでデヴューした際は『何を歌っているのか分からない』と無視されました。言ってみれば歌舞伎を外国人が演じることを思い浮かべれば見当がつくと思います。楽譜に正確に歌詞を歌うだけで精一杯で、その意味を表現できなければ納得されません。しかもそこに裏の意味が隠されていたりすると、普段からその言語に慣れていないと理解する事が不可能でしょう。
しかしその様にブーイングが飛ぶのはプリミエの時が多い様で、私の行った日はブラヴォーの嵐でした。かつてバイロイトのカテリーナ•ワーグナー監督が彼女の演出に対するブーイングに意見を求められて『あれは自分の声を放送に載せたい連中がやっているんだ』と一蹴した事がありましたが、そういう部分も有るのかな、と思います。というのはもう数え切れないくらいスカラを訪れていますが、ブーイングを聞いたことはほんの数回しかありません。ネトレプコもそういうことを心得ているのか、全く気にしていない様です。
配役は
指揮:リッカルド・シャイー
演出:ダヴィデ・リヴァモア
マクベス:ルカ・サルシ
バンクォー:イルダル・アブドラザコフ
マクベス夫人:アンナ・ネトレプコ
マクベス夫人の侍女:キアーラ・イゾットン
マクダフ:フランチェスコ・メーリ
マルカム:イヴァン・アヨン・リヴァス
侍医:アンドレア・ペッレグリーニ
という豪華なものでした。それを象徴しているのが侍女を歌ったイゾットンでしょう。彼女は割と最近までスカラ•アカデミーの研修生でしたが、ドン•カルロのエリザベッタやトスカなどで様々なオペラハウスに客演しています。東京の新国でもトスカを歌った筈です。そんな人が脇役にまわっていて、王様が殺害された後のコーラスを突き抜けて見事なハイCを響かせていました。ここはネトレプコも一緒に歌うはずですが、どうも彼女は声をセーヴしてイゾットンに任せていた様に聞こえたのですが。(追記:ヴィデオで確認したところ、ネトレプコは実際スコアに書かれているハイCを含む部分を全く歌っていません。聞こえてくるのはイゾットンの声のみです。友達のソプラノ歌手に話したところ、この様な場合二人の声をきちんと綺麗に合わせる事が難しいので、よく行われている手法で有るそうです。実際アバード指揮のヴィデオでもヴァーネットはここを歌っていません。またネトレプコの発音について、ロシア訛りがありイタリア人が批判的なのが理解出来る、と言っています。この友達の母国語はドイツ語ですが、更にスイスの公用語のイタリア語とフランス語に加えて英語を自由に話します。特に20才でドン•ジョヴァンニのツェルリーナでデヴューしているのでイタリア語は完璧です)
なにせネトレプコは50才ですからオペラ全曲を歌うのにそれなりの計算をしている様にも思えます。ビルギット•ニルソンはその為いつも小節数を数えながら歌っていたという話です。
ともかく素晴らしい公演でした。
