今日もこの電車から1日は始まる。
色々な人や物を運ぶこの電車から。
揺れることの少ないこの電車では多くの人が無防備に立ち尽くし、居眠りをしている。
その中で一際目立つ女がいた。
鮮やかな赤のミニスカートを履いた女だ。
紺のジャケットにクリーム色のブラウス、シックなリボンをつけスクールテイストな服装をしている。
女はスラリと伸びた足を組みながら、手すりによりかかっている。
音楽を聴きながら時計を気にしていた。
ふと、リズムを刻み始めたその女の足に目を向ける。
四拍ごとに区切れるその動きから、バンドが好きなのだろう。
ブランドもののバッグに最新のスマートフォン、どうやら情報に敏感なようだ。
そんな彼女の好きな曲はなんだろう。
などと考えていると、ふいに視線を感じた。
ミニスカートの女は少し太いが整った眉を歪めながら、訝しげにこちらを見つめていた。
前髪を作らず惜し気もなく見せつけるおでこに、ほっそりとした頬、茶色に染まったセミロングな髪、細身の顔がより縦長に感じる。
二重瞼の大きな瞳が、縦長の顔に強調され、強い力を宿していた。
思わず顔を背けてしまった。
そのことに満足したのか、女もこちらから視線を外し辺りをうかがいまた目を閉じた。
この女は何かを警戒している。
他の乗客にも同じように訝しげな眼差しを向けていたのが何よりの証拠だ。
ここまで周囲を警戒するのは不自然だ。
何か企んでいるのか。
何者なのか興味を持った僕はもう一度よく観察してみることにした。
少し捲れたスカートから覗く太ももはよく見ると、細いが筋肉がしっかりとついている。
そして、スクールテイストな服装に浮いているスニーカー。
そのままスカートに乗ったバッグに目を向けると、大きく膨らんでいた。
時折、壊れ物を扱うように優しく丁寧に置きなおしている。
余程気に入っているのか。
などと考えているとき、ふとある考えが頭をよぎる。
中身は爆弾ではないか。
突拍子のない考えだが、そう考えると今までの行動の辻褄があう。
時間を気にする仕草、周囲に対する異常な警戒、大きく膨らんだバッグ、それを慎重に扱うこと、転ばぬようにスニーカーを履いている。
そして視線の先にある太もも。
重い爆発物を運ぶためには筋力が必要だ。
アスリートのように無駄のないこの筋肉のつき方なら、容易に運ぶことができるだろう。
真相にたどり着いた僕は、驚きに視線を反らすことができなかった。
女が訝しげにこちらを見つめる。
しかし、目が離せない。
すると、電車が停止した。
どうやら駅に着いたようだ。
その時、女が素早い動きで立ち上がり
不愉快そうな表情をこちらに向けながら電車を降りていった。
こちらが爆発物に気がついたことを察したのだろう。
逃げられる。
追いかけようと立ち上がったが、無情にも扉は閉まってしまう。
この電車での爆発は防ぐことができた。
しかし、どこかで爆発することがあるかもしれない。
そのようなことのないよう願う。
