7年ぶりのソロアルバム。前作NEW VOICESが発売されたのが2002年。少なくとも私の中の最高傑作はこのアルバムを聴くまでは前作であった。
間に様々な形で音と可能性を届けてくれた先生の活動を裏付けてくれるような作品。
しかし今までの活動とはかけ離れた世界観を持ち、日常を紡ぐ中で起こる感情の変化や季節感、そしてまるで時の中のその一瞬をきれいに切り取ってしまったような音と言葉。
広大な世界というよりは日常や小さな幸せに気付かせてくれるような温かくさわやかなアルバムだと思う。

1 Grow
一曲目にこの曲かぁとびっくりしたのは私だけでないはず。
今までのパターンであれば最後に持ってくるだろうなと勝手に思う。
詩や曲もさることながら間奏の弦楽器には感動。詩の中に冬という言葉が使われているにも関わらず、間奏のバイオリンにより春の訪れを待つような前向きな雰囲気が伝わってくる。
壊れそうな心を優しさで包み込んでくれる歌声は先生の十八番。

2 Feel it(ver.)
駆け抜けたくなるようなポップな一曲。
と前回配信のときのレビューに書いているがやっぱりその通り(笑
自転車に乗ってどこまでもいけてしまいそうな気がする。
先生がver違いについて説明してくれていたので聴き比べ。
確かに違う!!!!全然違う!!!!私にも違いがわかるくらい違う。
アルバムの方が音に奥行や広がりを感じる。ぜひ聴き比べを。

3 Love Hurts(al)
えっとごめんなさい。知らなかったのか忘れてたのか。
Brian Peckだったのですね(笑)
この曲も聴き比べてみたんですが・・・・違いがFeel itほどわからない。
確かに違うんだけど、どこがどう違うのかが何度聞いてもわからない。もう少し精進せねば。

4 Scene39(ver.)
こちらも聴き比べ。
アルバムverのほうがライブ感が高い。ライブでぜひとも聴きたい1曲。
木下さんのベースに注目。

5 Maybe
確かに知らぬ間に口をついてる。あいまいだけど肯定に近い。
未来はいつでもmaybeだけどきっと大丈夫。
時の移り変わりを切なく感じるけどメロディーが優しい。
September Rainとはまるで対極にある雨の歌。

6 Silencio
びっくりした。潮音ちゃんの「霧の夜」と全然違う。
はじまりは西部劇を思わせるようなギターソロ(笑
がしかし先生が歌いだすとその世界観は全く別の方向へ向かう。
霧の夜がはじまりならばSilencioは終わりだろう。深い悲しみ。
黒沢健一の楽曲の中でも独特な世界観。切り裂くとか毒のような甘い願いとか詩の与える印象を歌声で中和しているように聞こえる。
まるで童話の1ページを切り取ったような曲。好き。

7 POP SONG(al ver.)
配信とは全くの別テイク。
個人的にこの曲には本当に救われた。前に進みたいのに進めないジレンマに耐えられなかった私にこの曲は染みた。まさしく私の心に光をさしてくれたのはまぎれもなくこの曲だった。
アルバムのテイクは配信よりも軽くpopになっている。

8 Mute
この歌は最後の詩にすべてが語られているのではと思う。
理不尽さやつまらなさをこんなにpopに歌ってしまうあたりが天才!
納得はいかないけれどそれを冷静に見ている。それがMuteなのかも。

9 DO we do
Muteを打ち破ったのがこの曲。
アップテンポナンバーで、細かくリズムを刻んでいる中の手拍子が聞き手の気持ちを高ぶらせる。
複雑なメロディー。
それに負けないボーカル。これこそ黒沢健一のrockだと感じさせる。

10 Somewhere I can go
これからの黒沢健一の向う先はこの曲にあるのだろう。
メロディは私たち聞く手を裏切らない。そしてどこまでも共に歩むことができるものなのだ。
それは美しいもの中に美しいものを見出す時も汚れたものの中に美しいものを見出す時も。
壮大な世界観、日々のなかで立ち止まりたくなるような自然の美しさ、素敵な歌声。
愛してやまない1曲となるだろう。

11 September Rain
はかなく冷たい9月の雨。
少ない言葉でこれ以上ないくらいに胸に響くメロディー。
最後のピアノが音色より心に重く残る。