今回はシューベルトの交響曲について呟きます。
皆さん、シューベルトの《未完成交響曲》は何番でしょうか?
「そんなの簡単!第8番でしょう!」
そう答えた方、もちろん正解です……が、最近の楽譜を見ると「交響曲第7番《未完成》」と書いてあることがあります。
では《ザ・グレート》は?
昔から親しんできたのは「交響曲第9番《ザ・グレート》」。
ところが、こちらも現在では「第8番」と書かれることがあります。
第8番が《未完成》だったり《ザ・グレート》だったり……。
「いったいどうなっているんでしょうか?」
実はシューベルト本人が悪いわけではありません。
そもそも彼自身が現在のように「これは交響曲第○番」とすべての番号を整理したわけではないのです。
シューベルトは1828年、わずか31歳で亡くなりました。
その時、多くの作品が出版されずに残され、さらに作曲途中の楽譜やスケッチもたくさんありました。
つまり、このややこしい番号は、シューベルトの死後、後世の人たちが整理していく過程で生まれたものなのです。
第1番D82から第6番D589までは、ほぼ問題ありません。
問題はここから!
シューベルトの死後、シューマンが兄フェルディナントのもとを訪ねた際、大規模なハ長調交響曲D944の楽譜を見つけます。
現在《ザ・グレート》と呼ばれている名曲です。1839年、メンデルスゾーンの指揮によってライプツィヒで初演されました。
当時、第1番から第6番までが知られていました。
「それなら、これが第7番だ!」となります。
ところが、その後とんでもない名曲が出てきます。
1860年代になって、シューベルトが1822年に書いたロ短調交響曲D759が世に知られるようになります。
そうです!
あの《未完成交響曲》です。
第1、第2楽章は完成していますが、第3楽章は途中まで。第4楽章はありません。
しかし、たった2つの楽章だけでも音楽的には圧倒的な存在感を持っています。
1865年にウィーンで初演されると、この作品も重要な交響曲として扱われるようになります。
しかし困りました。
《ザ・グレート》をすでに第7番と呼んでいる……。
「じゃあ《未完成》は第8番にしましょう!」
ということで、《未完成》が第8番と呼ばれるようになりました。
その後、作曲年代を考えて《ザ・グレート》を後ろへ送り、
第8番《未完成》
第9番《ザ・グレート》
という番号が広く定着します。
私たちの世代には、この呼び方が一番馴染み深いです。
「でも第7番はどうなったの?」
そこで登場するのが1821年のホ長調交響曲D729です。
この作品は全体の構想が残されていますが、シューベルト自身による完全なオーケストレーションは完成していません。
そこで、
第7番=D729
第8番=D759《未完成》
第9番=D944《ザ・グレート》
と整理すれば、確かに番号がきれいにつながります。
ところが研究が進むと、
「完成していないD729を正式な第7番として数えていいの?」という話になります。
その結果、新しいシューベルト研究や全集では番号を整理し直し、
第7番=D759《未完成》
第8番=D944《ザ・グレート》
とする方式が採用されるようになりました。
つまり《未完成》は「第8番」でも「第7番」でも間違いとは言い切れない。
《ザ・グレート》も「第9番」と「第8番」、両方の表記が存在するのです。
ややこしいです。
そこで一番間違いないのが「D番号」です。
D759=《未完成》
D944=《ザ・グレート》
これなら世界中どこへ行っても迷子になりません。
でも私は、この番号の混乱もシューベルトの魅力の一つだと思っています。
31歳というあまりにも早い死。
そのため自分の作品を整理しきれず、死後になって「あっ、こんな交響曲もあった!」「こっちにもあった!」と名曲が次々に世の中へ現れました。
第7番? 第8番? それとも第9番?
このややこしさこそ、シューベルトの音楽が彼の死後も発見され、研究され、そして200年近く愛され続けてきた歴史そのものなのかもしれません。
ということで皆さん、《未完成》は何番?と聞かれたら――
「昔の番号なら8番、現在の整理では7番。D759と言えば間違いなし!」
これであなたも、ちょっとしたシューベルト通です!
※シューベルトの作品についている 「D」 は、ドイチュ番号のことです。
シューベルトは生前に作品番号(Op.)が付かなかった曲が非常に多いため、音楽学者 オットー・エーリヒ・ドイチュが作品を整理し、1951年に作品目録を出版しました。
その番号が D番号 です。
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