何処へ


高校生というかティーンエージャーのころというか
前頭葉が最後の成長段階だった22歳くらいまでの頃
感受性が自分にとって最高潮だったけど
受け取れたけど表現力が未熟だった
表現力だけなのか
今よりインプットはできたけど
アウトプットの力量がなかった
というか自分の言葉をまだはっきり持ち合わせてはいなかった
けど今とは違い自分の成長を薄っすら信じてた
もっとうまく伝えられると少し苛立ってた
それは力になった
今より遥かにあがいていた
取り戻せない戻れない何かがあった

あの頃使ってた珈琲碗皿(カップ&ソーサー)をメルカリで手に入れたよ
あの頃レコードで聴いてた音楽ダウンロードしたよ
スマホを使ってLDACコーデックのBluetoothスピーカーで鳴らしてみたよ
紀州塗りの珈琲盆の上にそれらを並べて煙草も吸ってみた
あの頃と何もかも同じには出来ない
それにあの頃の自分じゃない
なのにそんなことをするのは懐古趣味なのか
あの頃の感受性のほんの少しでも取り戻したい

コロナ禍のせいなのか
いくつも花が咲いたのに
今までの様にこころが動かない
もう六十歳に近いからなのか
前頭葉がそろそろ瓦解し始めてるのか
あの頃を思い出して旅に出ないといけないのかもしれない
でも何処へ?
こんな感じだった「でも何処へ?」

『何処へ』正宗白鳥の初期代表作
雑誌記者の青年の虚無的な感覚を描く
再読してみるか
いや読んだことあったっけ?
その『何処へ』じゃなかったかもしれない
ともかく青年が主人公の小説なんだろう

冷めてしまった珈琲を飲みながら
Do It For Your Love (Bill Evans feat. Toots Thielemans)を聴きながら
また煙草を巻いてみる

高校生のときに手巻き煙草なんか吸ってたかい
螺旋階段を過去に訪ねてみると
一つ上と一つ下が混ざってくるんだよ

2022-07-05 @yoshifumi_