「想い出」2014年3月15日

若いころノートに
イメージを言葉にしようと
何冊も書き綴った

夢の中で見たのは
白紙のノートだった

私は「やさしくない」と
夢の中で何度もそのノートに書きなぐっていた

それでも
またみる夢では
白紙のままだった
「きれいなだけなら白でいい」と
そのノートに黒い鉛筆で書きなぐった

それでも
夢の中で
表紙から何から何まで真っ白いノートが出てきた
「誰にでも好かれたいとは思っていない」と
書こうとしたが
ひとりの女性の名前をぽつんと書いた

次の夢でも
ノートは白紙に戻っていた
もう一度その名前を書くべきか悩んだ
「どうせまた白紙に戻るのだろう」と
しばらくはその名前を書く力が抜けた

あるとき
気になって初めての人に名前を尋ねた
しばらくは
夢の中の白紙のノートに
その名前を消されても書き続けた

しばらくして
夢の中のノートは
また白紙になった

さらにしばらくして
また別の名前を書き続け始めたが
いつの間にかまた白紙になった

そんなことの繰り返し

あるときから
夢の中の白紙のノートに
よく見えないのだが
うっすらと一人の女性の名前が浮かんできた
書いていないのに
試しに他の名前を上書きした

それでも次から
そのノートは
他の名前は消されて
同じ 一人の女性の名前が

なにもしないで放ったらかしにすることにしたが
うすい文字の名前は濃くなっていった

ノートではなく文字だけになった
これはなんだろう?

私はその名前の女性に電話をかけて
その名前を呼んだ
そして『一緒にいたい』と『ずっと』と話し掛けた
その名前の女性は電話の向こうでうなずいた

紙切れにふたりで自分の名前を連ねた
夢ではなく
いや たまに夢で白紙の表紙のノートが出てくるが
ページを開くと同じ名前が出てくる
他の名前は出てこない
その名前の女性と一緒に一つになって眠っているのだから


2014-03-15 @yoshifumi_