第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、話題となった、デビュー作の「ロスト・ケア」を読み、衝撃を受け、続く奥貫薫シリーズ「絶叫」・「Blue」を読み、すっかり、葉真中作品のファンとなり「コクーン」で、新たな境地を切り開いた、葉真中顕さんの著書「凍てつく太陽」を先日読了しました。



この作品は「第21回大薮春彦賞」&「第72回日本推理作家協会賞」をW受賞した傑作です。


ネタバレしない程度に、あらすじを。



昭和20年、終戦間際の北海道・室蘭。


「逼迫した戦況を一変させる」という陸軍の軍事機密を巡って、軍需工場の関係者が、次々と毒殺される。


アイヌ出身の特高刑事・日崎八尋は「拷問王」の異名を持つ、先輩刑事、三影らと共に、捜査に加わるが、事件の背後で暗躍する者達に翻弄されて行く。


真の「国賊」は誰なのか? 


『かつてない「戦中」警察小説!』


帯の『かつてない「特高」警察小説』と言う、コピーの通り、主人公の日崎八尋は、特高所属の警察官。


「特高」と言う組織そのものが、物語の重要なキーになっているのですが、物語は大日本帝国vsアイヌ&朝鮮民族、引いては国家・個人の関係や、有り様を問うもので、アイヌ民族の血を引く、日崎・朝鮮人の軍需工場労働者・ヨンチュンを中心に壮大なヒューマン・ドラマが展開されます。


「案外、服みてえなもんかもしれねえよ、国だの民族だのってのは」と言う文中のセリフが刺さる小説です。


ミステリーの要素も、程良く配置された、バランスの良い、エンタテインメント小説です。


お薦めです。