先日、久坂部羊さんの著書「テロリストの処方」読了しました。


ネタバレしない程度にあらすじを。


医療費の高騰で、病院に行けなくなる人が急増した日本。


医療の勝ち組と、負け組に患者が二分され、同じく医師も高額な医療で、破格の収入を得る、勝ち組医師と、経営難に陥る負け組医師とに二極化される。


そんな中、勝ち組医師を狙ったテロが連続して、発生。


現場には「豚ニ死ヲ」の言葉が残されていた。


若くして、全日本医師機構の総裁となった、狩野は、ネオ医療構想『医道八策』を掲げる。


『医道八策』とは、①医師免許の更新制、②医師年棒制、③無駄な医療の撤廃、④医師の再教育プログラム、⑤医師のキャリア管轄、⑥医師配置の管轄制、⑦医療機関の経営統括、⑧患者説明の徹底の8つの施策。


他にも、医師を「特医」と「標準医」に分け、高度医療を残し、無駄な医療費の削減を目指す。


これらを『ラジカル・リセット』と呼び、医療改革に取り組もうと考え、日本の医療の未来に警鐘を鳴らすが、ある日、その狩野の下にも、脅迫状が届く。


狩野と医大時代の同期で、医事評論家の浜川は、狩野に依頼され、テロへの関与が疑われる医師・塙の行方を探す事に。


浜川宛の謎の葉書を残し、失踪した、医大時代の同期だった、負け組医師の小村が、ある日、亀戸で、ホームレスになっていて、殺害されるという事件が発生。


容疑者として浮上したのも、医大時代の同期だった、塙医師。


しかし、浜川は疑問を抱く。


本当に殺害されたのは小村なのか? 


真の被害者を追求していく事で、真実が明らかにされていく。


迫り来る、日本の医療危機を予見する、戦慄の医療ミステリー。


先日読了した、同じ、久坂部羊さんの著書「神の手」の内容と重複するような内容が一部見受けらたのは、ちょっと残念だったのですが「多作になって行けば、そういう事もあるのかなぁ〜?」と思いながら読みましたが、この作品は、この作品ならではの面白さはありました。



物語中の登場人物の安達と塙、やり方や、心情はお互い、全く真逆なのですが、2人共、医療格差を無くそうとした志は、同じだったように思いました。


この小説が描いた、医療格差が広がる未来が、そこまで、やって来ているのかもしれません。


「国民皆保険制度」は維持して行く事が、年々、困難になっているように感じますし、医療は日々進歩しているのに、碌に勉強もせず、知識が更新されていない、ロートルな医師も、かなりの人数がいるのでは?と、個人的には思っています。



医療ミステリーが好きな方には、やはり、お薦めの1冊です。