先日、幻冬舎文庫刊の久坂部羊さんの著書

「神の手」(上)・(下)を読了しました。


ネタバレしない程度に、あらすじを。

21歳の末期ガン患者・古林章太郎の激痛を取り除く為、外科医の白川は、最後の手段として安楽死を選択する。

しかし、章太郎の母の康代は反発し、訴える事を決意する。

殺人か? 過失致死か?

状況は限りなく、白川に不利であったが、検察に謎の圧力が掛かり、白川は不起訴処分となる。

背後に蠢く「医療庁」設立の動きと「安楽死法制化」の画策と世論誘導。

マスコミを使って、「安楽死法」の制定阻止を諮る康代。

白川は困惑しつつも、その激流に呑み込まれていく。

敵対する医師会を解散させ、勢力を拡大する、新たな医師組織である、JAMAと、その後ろ盾である、大物政治家で、元・総理の佐渡原。

両者の思惑通り、医療庁の設立と、安楽死法は制定に向かって邁進する。

しかし、やがて発覚した、JAMAの内部抗争と、JAMAの代表の新見のスキャンダルに発覚により状況は一変する。

次々と抹殺される、JAMAの核心に近づく関係者達。

そして、遂に発表された、安楽死専用薬『ケルビム』

そして、事態の全てを操る『センセイ』と呼ばれる、謎の人物の正体とは?

遂に、戦慄の真実が暴かれる。


2019年にWOWOWで、椎名桔平さん主演で、鈴木砂羽さん、杉本哲太さん、星野真里さん、坂井真紀さん、北村有起哉さん、近藤正臣さんらのキャストにて、ドラマ化されていたようです。


僕は、ドラマは観ていません。


「安楽死」の問題は「代理出産」と同じく、かなりデリケートな問題ですが、少子高齢社会に突入している、現在の日本では、もはや避けて通れない問題でもあると思います。


この小説では、そんなデリケートな「安楽死」について、かなり踏み込んだ問題提起を投げかけています。


同じく「厚労省」から独立した組織として、医療分野に特化させた「医療庁」を設立させようと画策する勢力が描かれています。


「医療庁」のアイデアは読んでいて、思わず唸ってしまう程、目の付け所が良いと思いました。


久坂部羊さんの作品は、現役の医師が書かれているだけあり、かなりリアルで読み応え充分です。


惜しむらくは、終盤に、やたらと人が亡くなって行く事と、少しバタバタしたラストになった所でしょうか。


それでも、やはり、お薦めの1冊です。