先日、4月30日の22時から、NHKのドラマ10枠にて放送された、石橋静河さん主演のドラマでも燕は戻ってこない」の第1話のネタバレ&個人的感想を。



桐野夏生さんの同名小説が原作の、このドラマは『命は誰のものか?』という重要なテーマを扱った、鮮烈なエンター・テイメント作品です。



病院事務の派遣社員として、月々の手取りが、僅か14万という薄給で暮らす、石橋静河さん演じる主人公のリキは、薄暗いアパートのキッチンで、卵を茹でながら「卵の本質」を語る老婆を思い出しながら「卵子」について想いを巡らせます。



職場の同僚の伊藤万理華さん演じる、テルから

「『卵子提供』をして、金を稼ごう!」と誘われ悩んでいました。


卵子提供すると、謝礼として、50万円もらえるという話でした。


テルは乗り気でしたが、リキは気が進みませんでした。


仮にも「卵子」は自分の分身なのに、見知らぬ男の精子と合体などさせられません。


でも、テルは「そんなの『献血』と同じだ」と言い張ります。


「体から出ていけば、もう関係ない、なので、しょっちゅう献血をして『プチ・リッチ』な気分を味わうのだ」と嘯きます。


「今日のお昼は外食!」と言い、「ささやかな贅沢!」と言いながら、コンビニのイート・インコーナーで、おにぎりと、カップラーメンを食べながら、テルと、シュークリームのカスタードを分け合いながら昼食を食べます。



それでも、リキは登録に踏み切れませんでした。


しかし、来年には、リキの派遣の契約期間が満了します。


「実家に帰るのも、以前の介護の仕事に戻る事も嫌だ」と考えるリキ。


仕事からの帰りに、突然の雨に降られるし、その雨の中、自転車置き場では迷惑駐輪の片付けを余儀なくされ、部屋に戻ると朝ベランダに干していった洗濯物は雨でびしょ濡れ。


そんな時に限って、3年前に別れた元カレのレイジを思い出します。


レイジは妊娠を告げた途端、いかにも迷惑そうに怒って部屋を出て行ったのでした。


洗濯物を片付けたリキは、ふと気づいて、トイレへ行くと、毎月のモノが始まっていました。


リキは汚れた下着を手洗いしながら「女で良かったことなんて、1つも無い」と呟きます。



ようやく一段落ついて、ビールを1口飲んだリキは、大きなため息をつきます。


ぼんやりとスマホを眺めていた時に「生殖医療エージェント・プランテ」の広告が流れてきます。


リキは遂に、これをクリックしてしまいました。


テルが言っていた通りの「面倒臭いアンケート」に答えた後、最後の「動機」の欄に「人の役に立ちたい!」と記入します。



度重なるテルの誘いを受け、アメリカの生殖医療エージェント「プランテ」の日本支社の面談を受けて、正式に卵子提供者に登録したリキ。


そこで、リキに持ち掛けられたのは『卵子提供』では無く『代理出産』」でした。


稲垣吾郎さん演じる、元・世界的バレエダンサーの草桶基と、内田有紀さん演じる、その妻、悠子が、高額の謝礼と引き換えに、2人の子を産んでくれる「代理母」を探していたのでした。



「代理出産」を望む、基の妻・悠子の生活は、悠子本人が「白い悪夢」と嘆く程、何不自由の無い眩しいばかりの光と満ち足りた生活に溢れているのですが、その生活に、彼女が本当に欲しかった物は無く、3度の流産で『不育症』と宣告された悠子は、44歳という年齢の壁もあり、実子を諦めるしかありませんでした。



「命が、お金で買えれば安いもの」と、ペットを家族として受け入れた悠子でしたが、夫が、今もまだ『血の繋がった子供』を切望しているという事が悔しくてならないのでした。



ある日の出勤前、自宅アパート前の自転車置場に無造作に置かれ、自分の自転車を出すのに邪魔になった自転車を蹴飛ばして避けた際、その自転車の持ち主である、酒向芳さん演じる、同じアパートに住む、年配の男に絡まれ、目を付けられてしまい、その隣人が、リキが忘れてしまった、タラコがメインの自家製弁当を無断で食べられ、更にその日の夜、その隣人は、嫌がらせ行為で、玄関の扉を何度も叩きながら「今度は、おまえのタラコを食べさせろ!」と、セクハラ紛いの発言を受けて屈辱を感じるリキ。



リキには一度、妊娠中絶したという過去があり、それが「代理母」の合格条件になったのでした。


「一度妊娠した事がある人は妊娠できる!」と、

朴璐美さん演じる「プランテ」日本支社の青沼薫から告げられ、更に「もし、リキが引き受けてくれなたら、報酬は最低でも300万、他にも妊娠中や、産後の体力が回復するまでの生活費を保証すると説明しました。


リキは、悩みますが「これは単なる『卵』の話だ」と割り切ろうとします。


そして、青沼薫は、リキに「代理母を望む、良いご夫婦がいる」と告げられます。


その2人とは、リキが、同じアパートに住む、年配の隣人と自転車置き場でトラブルになって、仕事に遅れそうになり、慌てて職場に向かう為、自転車を急がせて転倒した際、車で、その瞬間に居合わせて、ケガを心配してくれ、ハンカチを貸してくれた夫婦なのでした。



第1話は、ここまで。



このドラマのテーマが『卵子提供』という事もあってか、やたらと「卵」の描写が続き、思わず

その生々しさから眼を逸らしたくなる程、思いテーマのドラマです。


殻に閉じ込められたような閉塞感しか無い、リキのリアルな生活は重く暗いです。


薄暗いリキの日常、キラキラと美しい基と悠子の日常。


3人が互いの日常を知らず交わる事になった、薔薇色の紙ごみの艶やかさと、エージェントのショッキングピンクの衣装。


文章では到底表現出来ないであろう、カラフルな色彩による表現方法に「さすが、NHK!」と、画面に惹きつけられました。


人生に怒りを感じているリキ、人生の空虚さを嘆いている悠子、不完全でいる吾郎に耐えられない基。



3人が望んでいる現状は、夢の詰まった「卵」という物で、それは、まだ、リアルな『命』では無いのだと思って見ました。


この後も、延々と「卵」の話が続くようなら、ちょっとエグすぎるかも?(苦笑)


第2話以降、本当の『命』と向き合った時、それぞれが、どんな変化をみせるのか?


そして、どんな選択をして行くのか?


個人的には、このドラマで、初めて知った、テル役の伊藤万理華さんにも注目してます。


元・乃木坂のメンバーだったらしいですが、頭が悪そうで、品の無いテル役を好演してました。


所作も話し方も上手く、まさにハマり役ですね。


次回も楽しみです。