先日、久坂部羊さんの著書「第五番〜無痛II〜」を読了しました。


ネタバレしない程度にあらすじを。


1967年にドイツで発生したエボラ出血熱。


1981年にアメリカで発生したAIDS(エイズ)。


1993年に、イギリスで発生した狂牛病。


2002年に中国で発生したSARS。


それらに次ぐ、作られた悪魔の疫病「No.5」が

突如、日本を襲いました。


その疫病の名前は、「新型カポジ肉腫」。


この「新型カポジ肉腫」は恐るべき致死率を示しました。


私立医学部の雄・創陵大学皮膚科の准教授・菅井憲弘を訪ねて来た患者の病状は、これまで見た事の無いウィルスが原因でした。


身体の表面に真っ黒いシイタケ状の肉腫。


エイズ患者が発症するガンの一種「カポジ肉腫」に酷似していましたが、ウイルスは全く別物でした、


更に腫瘍が骨を溶かし、数日で全身に転移し、意識障害を起こし患者は死亡。


この皮膚病の治療で「スガイ療法」を確立しようとした矢先、准教授・菅井憲弘は、ありとあらゆる手を尽くしますが、この病を発病し死亡。


エイズや、ガンの特効薬は全く効かず、数カ月の内に日本列島に患者が同時多発で発症しますが、国も、医療界にも、全く手立ては無く、日本人を恐怖のどん底に陥れて行きます。


前作「無痛」の続編です。


日本の医療界や、昨今の根拠の無い健康食品ブームに一石を投じる内容の作品でした。


随所に医学の専門用語が登場するのですが、苦になる事は無く、文章は読み易く、場面の展開は、ドラマチックで、ページを繰る指先が、先へ先へと進み、全く止まる事が無かったです。


今作には、新たな人物も登場し、グロテスクな描写もありましたが、医者の話と相まって、臨場感を醸し出しています。


前回に引き続き、ウィーンに渡った、外見を見るだけで、症状や予後や、犯罪者に見られるエネルギー過多の一種である「犯因症」の兆候も見分けられる為頼医師、高島菜見子、南サトミ、先天性無痛症で、無毛症のイバラが登場し、今作には、フリー・メイソンがモデルでは? と思える、謎の秘密結社のような組織や、美貌の新進画家・三岸薫らも登場し、前作で海外へ逃亡した、為頼と同じく「犯因症」が見える、医師の白神陽児の行方など、前作から、更に、ミステリー性を深めています。



個人的には、この作品は、まだ続編が出来そうな終わり方にも感じました。


読後の感想としては、病気の不安が無くなれば、医師に対する感謝や、ありがたみが軽減されてしまうので、人類を震撼させる病気を定期的に流行させると言う、謎の組織の存在と、誰もが信頼している「WHO」との繋がりを著した、この小説のリアル感は、実際に発生する、様々なウィルスに起因する病気の延長線上に、今作で、登場した「新型カポジ肉腫」は、ひょっとしたら、本当に実在するのでは?と思わせるような現実味を感じました。


この「新型カポジ肉腫」という疫病が、WHOが意図的に作り出したと考えるならば、新型コロナ・ウィルスは「実は『第5番』だったのかも知れない」と考えさせられる小説でもありました。


新型コロナ・ウィルスのパンデミックを経験した後に読みましたので、怖い位、点と点が繋がりました。



新型コロナ・ウイルスのパンデミックが起きる、約8年も前に、この小説を発表された、久坂部羊さんは凄いと感じました。


お薦めです。