先日、長浦京さんの著書「リボルバー・リリー」を読了しました。


解説なしで、序章・終章を除き、全13章


650Pの大長編小説。


読み終えるまで10日掛かりました。


第19回大藪春彦賞受賞作。


関東大震災直後の東京を舞台とした、冒険アクション小説。


日本領台湾で殺し屋に仕立てられ、かつて「リボルバー・リリー」と呼ばれて、恐れられた、美しき諜報員・小曽根百合と、父親が、帝国陸軍の機密作戦に関わっていたが為に、家族を皆殺しにされ、復讐に燃える細身慎太という少年との2人の逃亡劇。



2人は陸軍の精鋭部隊から追われる身となり、決死の逃避行を開始。  



実業家に見せ掛けた暴力団、日本陸軍、更に、特務部隊までもが、百合と慎太を追います。


何故、2人は追われるのか?


全編にわたって展開する、ガン・アクション。


特に、豪雨の中、繰り広げられる凄絶な市街戦は三船敏郎さん主演の映画『七人の侍』の名シーンを彷彿とさせ、ひたすら泥臭く、激しく、そして惨いです。


ひたすら追って、追われて、そして闘います。


金だけでは無い、当時の日本と、諸外国との緊張関係にまで影響を及ぼす、父親が遺した「機密書類」の内容が徐々に明らかにされて行きます。


「リボルバー・リリー」と呼ばれた、美しき女性百合を主人公として、断続的に死ぬか生きるかの戦闘シーンが展開されます。


百合と慎太と共に、大正時代の東京を駆け抜けたような疾走感を読後に感じました。


陸軍の精鋭達と、がっぷりと組んだ汗握る展開に引き込まれます。


少し、ネタバレになりますが、陸軍に追われる、百合と慎太が、海軍省へと逃げきろうとする最中日露戦争の日本海海戦で、バルチック艦隊を撃破した、海軍大将の山本五十六まで登場する、荒唐無稽の魅力満載ですが、逃避行の背景に、大正時代の日本を取り巻く世界情勢や、米国を敵視する

国家観が、物語に深みをもたらしています。



関東大震災を挟んだ事で、第一次大戦や、その後のポーツマス条約、関東軍の肥大などが有機的に物語に絡み付いて行きます。


その様子が詳しく書けており、どんどん引き込まます。


食傷気味にならなかったのは、日露戦争や、シベリア出兵の後遺症、陸軍と海軍の対立、軍人への反感といった時代の空気感を染み込ませている点と、当時の都内の開発や街並みの様子を細かく描き込んでいる上、プロットも、これらの時代考証を反映させています。


爽快というには、泥臭いですが、最高のエンターテイメントでした。


続編が出来たなら、是非読みたいです。


2023年8月に、綾瀬はるかさん、長谷川博己さん主演で映画化されたようです。


僕は、映画は、まだ観てないのですが、この作品を完全映画化するのは至難の技かと?(苦笑)


小説で、イメージを膨らませた方が断然面白いと思います。


(あくまでも、個人的な意見です)


綾瀬はるかさんファンの方は、楽しめるとは思いますが、個人的に、あえて観たいとは、思わないです。