先日、葉真中顕さんの著書「Blue」を読了しました。


「絶叫」に続き、奥貫綾乃シリーズの第2弾。


プロローグ・エピローグ・解説含め、2部構成で全596P。


相変わらずの面白さで、一気読みでした。


映像化を熱望する小説です。


ネタバレしない程度に、あらすじを。



平成が始まった日に生まれ、終わった日に死んだブルーという名の青年が主人公の物語です。


平成15年に発生した一家殺人事件。


最有力容疑者である次女は、薬物の過剰摂取の為浴室で死亡。


事件は迷宮入り。


時は流れ、平成31年四月、桜ヶ丘署の奥貫綾乃は「多摩ニュータウン男女二人殺害事件」の捜査に加わる事に。


2つの事件には繋がりが?


平成という時代を描きながら、様々な社会問題にも斬り込んだ、社会派ミステリーの傑作!


物語中に、昭和の末期のバブル景気への突入から平成のバブル崩壊という時代が描かれ、昭和の終わりから、平成の流行や文化などが、余す所無く描かれ、前作「絶叫」と同様、毒親・児童虐待・援助交際・無戸籍児童・外国人労働者問題・貧困児童など、社会の暗部を鋭く抉ってます。


平成を彩った、懐かしい楽曲や、アイドル歌手、渋谷系の楽曲なども登場し、平成のファッション・文化・世情なども丁寧に描かれてます。


前半は、一家4人が引きこもりの次女に殺害事件について、後半は、若い男女が多摩地区のとある団地の空室で殺された事件についての物語で、ブルーが、時を経た、2つの事件に関与している事を警察が突き止めます。


無戸籍児・児童虐待・外国人への低賃金労働問題・毒親・援助交際など、平成の世に問題が表面化した、格差社会の闇を鋭く抉り綴られてます。



第1部で、捜査1課の班長と、第2部に登場する、女性刑事との繋がりにも注目です。


平成と呼ばれた時代の30年間に絞った背景に、その当時の世情・芸能・流行歌・ファッション・文化などが、非常に丁寧に描かれていて、懐かしくもありました。


主人公のブルーに関しては「殺人鬼に仕立て上げたのは、一体誰なんだ?」と言いたい気持ちが湧きますした。


子供は親を選べません、しかし、親は子供を自由に出来るという事を改めて実感しました。


真っ当に育てる事も、育児を放棄する事も、はたまた、悪魔に育てる事も...。


貧困など、格差社会の問題は、殆ど、親に掛かっていると言っても過言では無いのではないでしょうか?


遺伝的要素が、どれ位あるのかは、分からないですが、育成環境は、この問題を、何世代も連鎖させているように感じました。


この物語には、親の愛情に恵まれなかった子供が何人も登場します。


彼らは、やがて大人となり、子供を産み、育て、躾と称して虐待します。


虐待の連鎖は止まる事はありません。


もし、ブルーが、まともな親の元に生まれていたなら、きっと、全く違う人生を歩んでいたと思うと、ブルーが生きた短い生涯は、あまりにも切ないです。


個人的に、ラスト・シーンが、2パターン用意されているのは、ひょっとしたら、葉真中さんが

物語を書いている内に、ブルーの事が好きになりすぎたのでは?と思いました(笑)。


葉真中顕さんの小説、マジで面白いです。


超・お薦めです。