宮部みゆきさんの初期の傑作「魔術はささやく」を読了しました。
過去に2度、ドラマ化されてます。
1回目は、山口智子さん・吉岡秀隆さん主演で、1990年4月3日に日本テレビ系列「火曜サスペンス劇場・春のスペシャル」にて。
2回目は、木村佳乃さん・中村蒼さん主演で、2011年9月9日にフジテレビジョン系の「金曜プレステージ」枠でドラマ化されてます。
ネタバレしない程度に、ストーリー紹介を。
「それぞれは、社会面のありふれた記事だった。
1人目はマンションの屋上から飛び降りた。
2人目は地下鉄に飛び込んだ。
そして、3人目はタクシーの前に...。
何人たりとも、相互の関連など想像し得べくもなく仕組まれた三つの死。
さらに魔の手は四人めに伸びていた…。
「魔術」によって次々と命を落とす女性達。
主人公の守の父親は、公金横領で失踪。
母親も亡くなり、叔母の家族に育てられていました。
タクシー運転手の叔父が逮捕された事をきっかけに事件の調査を始めますが、知らず知らずのうちに全ての真相に迫っていました。
1989年の日本推理サスペンス大賞受賞作。
2023年「新潮文庫の100冊」
サスペンス小説ですが、社会派推理小説でもあります。
ミステリーとしての面白さもありましたが、それ以上に、主人公・日下守の生き様・人間ドラマに読み応えを感じ、一気読み。
特に、守の学校の友人である、宮下陽一とのエピソードが印象的で、終盤の守の選択の布石になっているのは流石だと思いました。
そして、守の最後の選択は赦しの物語の結末として、非常に美しく、思わず感嘆のため息がこぼれました。
宮部みゆきさんの著書は、小道具の組み合わせにいつも感心させられます。
2024年の現在から見て、1990年代初頭の空気感をとても懐かしく読みました。
この物語の良さは「誰が殺したか?」という、単純なサスペンスではない所だと思います。
裁く側に回った守の心理や、心の揺れなど、タネ明かしが済んだ後も、読みどころが満載で、最後まで楽しめました。
この作品が発表されたのは、今から34年前。
しかし、この物語に登場する女性達が行っていた事は、現在も、度々ニュースやワイドショーなどを賑わせている、男性から、お金を巻き上げ、ホストに貢いでる人達と、殆ど変わらないのでは?と思ってしまいました。
この小説の発表から、既に、34年も経ってるのに人間って、やっぱり変わらないんですね(苦笑)
解説にも書かれていますが、この物語は、まさに「愛の物語」だと思いました。