遅ればせながら、宮部みゆきさんの初期の傑作
「レベル7」を読了致しました。
宮部みゆきさんの著書は「火車」・「模倣犯」・「楽園」・「ソロモンの偽証」・杉村三郎シリーズなどは読んでいたのですが、この「レベル7」は、何故か未読だったんです(苦笑)
巻末の解説を含めると、770ページ超えの大長編ながら、読み始めると、その面白さに、約6日で一気読みでした。
以下、簡単なストーリー&個人的感想を。
「レベル7まで行ったら戻れない!」という、謎の言葉を残して失踪した、17歳の美人女子高生。
また、記憶を全て失い、見覚えの無いマンションの一室で目覚めた、若い男女の腕に浮かび上がっていた「Level7」の文字。
行方不明の女子高生の行方を探す、知人の女性カウンセラーと、自分達が、一体何者なのかを調べ始める、記憶を無くした男女。
2つの追跡行が、やがて交錯し、思いがけない凶悪な殺人事件へと導いて行きます。
ツイストに次ぐツイスト、緊迫の四日間。
実際に起きた事件2つを、小説のモチーフに組み込んだ、ミステリー・サスペンスの最高峰と呼べる、宮部みゆきさん初期の傑作です。
行方不明の少女や、記憶喪失者の自分探しなど、ミステリー・サスペンスとしては、やや、オーソドックスなストーリー展開かと思いきや、記憶喪失者が.、男女2人のペアだったり、追跡行の協力者に、これ見よがしに、怪しい動きをさせるなど定石から、少し外れた展開で、しっかり読ませます。
「記憶喪失編」と「少女失踪編」の2つの物語がいつ、どうやって繋がっていくのか、ドキドキしながら読み進めましたが、読み始めると、まさに一気読みでした。
「記憶喪失編」での、キーポイントは、記憶を失った男性が、包丁の事を「トーテム」と認識している事と「少女失踪編」で、少女が監禁されている場所に居る、ある男性の存在です。
ストーリーのラストは、想定内と言える、多少の「どんでん返し」はありましたが、最終的に、あるべき形に戻ったと言える終わり方だったので、個人的には、スッキリした気持ちになれました。
巻末の解説を読んで、実際に起きた2つの事件がモチーフになったという事を知りました。
宮部みゆきさんの最初期の作品ながら、この頃から、キャラクター作りの巧みさは際立っており、特に、真行寺一家が、実に魅力的です。
女性カウンセラーの真行寺悦子は、本来、失踪した「みさお」という女子高生を探す程の関係性は無い筈なのですが、それでも捜索に力を尽くす理由付けは「流石、宮部みゆきさんだ!」と思いました。
ただ、ミステリー・サスペンスとしては、必要以上に、仕掛けが、ややこしかったり、一連の事件の黒幕である、村下猛蔵の悪役としての存在感が若干、物足りなく感じるなど、多少のぎこちなさを感じるとはいえ「火車」・「理由」などの、宮部みゆきさんの横綱級の作品と比べれば分が悪いだけで、760ページ超え(巻末の解説を除く)という、大長編小説でありながら、最後まで、読者を飽きさせ無い、リーダビリティーは、やはり「凄い!」の一言です。
これを、デビュー間も無い時期に書いたという事に驚きの一言です。
お薦め本です。