新潮文庫刊・清水潔さんの著書「殺人犯はそこにいる」読了しました。
北関東で、少女5人が姿を消した。
1979年から、1996年の間に、5人の少女が誘拐され、4件が時効に。
残る、1件の事件の被害者少女は、未だ行方不明のまま。
「真犯人は野放しだ!」
日本中に衝撃を与えた怒りの調査報道!
群馬と栃木の県境、半径10キロという狭いエリアで、5人の少女が忽然と姿を消した。
これは同一犯による連続事件ではないのか?
何故「足利事件」だけが「解決済み」なのか?
著書、清水さん執念の取材は、前代未聞の「冤罪事件」と、野放しの「真犯人」に辿り着き、遂に司法の闇を炙り出す。
新潮ドキュメント賞、日本推理作家協会賞受賞作
日本中に衝撃を与え、「調査報道のバイブル」と絶賛された、事件ノンフィクション。
長澤まさみさん、眞栄田郷敦さん主演で放送された、フジTV系のドラマ「エルピス」の元ネタになった「足利事件」または「栃木・群馬連続幼女殺害事件」を追った、ドキュメンタリー作品です。
「報道とは何の為に存在するのか? 謎を追う、事実を求める、現場に通う、人がいる、懸命に話を聞く、行うべきは小さな声を聞き、伝える事ではないのか?」権力や、肩書付きの怒声など放っておいても響き渡る。
しかし、小さな声は国家や世間へは届かない。
その懸け橋になる事こそが、報道の命なのかもしれない。」 ・「何の為に何を報じるべきか、常にその事を考え続けたい」と筆者の清水さんは語っています。
500ページ超えという、かなりの長編ですが、一気に読んで もう一度、じっくり読み込める程、
文章力が素晴らしいのは当然として、緻密な取材に同行して、目の前で見ているような錯覚にも陥る、傑作としか言いようの無い著作。
近年の冤罪の中でも、地方警察による初動捜査の下手くそさ、そして、犯人検挙の功を焦るあまりの容疑者捏造の愚行。
さらには、捏造された容疑者を何としてでも、有罪にし、有罪率99.6%を死守したいと考える、検察のくだらない見栄。
検察から起訴された容疑を精査する事も無く、裁判手続きを平気で行う判事の無能。
それら全てを重ねれば、無罪の人間でも有罪にし死刑にすら出来るという日本の司法の恐怖。
警察や検察、裁判所の思い込み、隠ぺい、暴走で冤罪事件が成立している事に、驚き、落胆もしました。
怖すぎるし、酷すぎる。
「誤りを認められない」などと言う、権力者側のあまりにバカバカしい理由で、5人もの少女を殺めたであろう真犯人を、現在も、野放しにしているなんて、酷すぎて言葉が出ません。
日本は、法治国家だと思っていましたが、人知れぬ裏側では、これ程までに信じられない事件の闇があったと言う事に驚愕しました。
本書のポイントは、大きく分けて二つ、
一つは、冤罪が確定した、足利事件及び、その周辺で起こった、幼児連続殺人事件の真犯人を特定している事。
二つ目のポイントは、国家権力が、無罪の人を死刑にしてしまった可能性が極めて高い事を告発してる事。
緻密な取材と検証を基にした真犯人情報を警察に提供しているのですが、警察は動きません
何故かと言うと、足利事件で採用した、同種のDNA型鑑定を基に死刑判決を下し、死刑を執行してしまったという事件(飯塚事件)が存在するからです。
つまり、足利事件の証拠の正確性・正当性が覆る事で、飯塚事件の結果(=死刑)が覆る事を国家権力は恐れているのです。
国家が、無実の人を殺したと言う事が明らかになれば、警察や裁判所の信用が、地に失墜するのは間違いないでしょう。
しかし、命に比べれば、そんなプライドなど、ゴミみたいなものだと思います。
本書を読めば、警察や検察は、全く信用出来なくなります。
しかし、警察や検察が、地に落ちた信頼を回復する方法が、たったひとつだけあります。
それは、誤りを認め、事件の真相を追求する事に他なりません。
そうして初めて、警察や司法は「正義」を取り戻す事が出来るのだと思います。
「殺人犯はそこにいる」というタイトルに象徴されるように、本書の著者の清水さんは「北関東連続幼女誘拐殺人事件」の真犯人が、未だ野放しになっている事に警鐘を鳴らしています。
1日も早く、警察や検察が、過去の過ちを潔く認め、時刻になっている、少女連続殺人事件も含めて、新たな視点と解釈で再捜査し、真犯人を逮捕して頂きたいと願ってやみません。
是非、読んで頂きたい1冊だと思います。