昨日、8月10日の22時から、NHKで放送されました、スペシャル・ドラマ「軍港の子〜よこすかクリーニング1946〜 戦争は終わったんじゃないのか! すべてを奪われた子供たちの物語」のネタバレ&個人的感想を。


横須賀で、クリーニング店を営んでいた祖父が亡くなり、阿部紗英さん演じる孫娘の瑞稀が、母と一緒に、誰も居なくなったクリーニング店の整理に訪れます。

阿部紗英さんがストーリー・テラーの役割を果たします。

祖父は、小林優仁くん演じる、小川今日一(きょういち)

1946年当時、13歳。

戦後の神奈川県横須賀。

誰も助けてくれない戦争孤児達は、靴磨きや、たばこ拾い、時には犯罪にも手を染めていました。

そんな時代に、小川今日一は、空襲で母親を亡くし横須賀で、クリーニング店を営む親戚の家に引き取られます。

ある日、今日一は、配達の途中に倒れた子供に気を取られている間に配達の自転車ごと盗まれてしまい、店の主人である、岡部たかしさん演じる、河合雄造に、ボコボコに殴られます。

父を亡くし、母一人・子一人だった今日一は、母に仕立て直して貰った、父の服を持って家出します。

横須賀は空襲被害が少なく、焼け野原にならなかったので、米兵が大勢居ました。

米兵からチョコレートを貰う子供達の中に自転車の前で倒れた子供を見つけた今日一は、追いかけますが逃げられてしまいます。

しかし、孤児達の隠れ家を見つけ、原田琥之佑君演じる、リーダーの岡田武弘に、今日一は、親戚の家から持ち出した石鹸を見せ「クリーニングが出来る!」と言って仲間に入れて貰い、武弘の紹介で、娼婦館で働く、松岡茉優さん演じる、ミサからビールの染みが付いた洋服を預かり、仕事を貰います。 

さっそく、大根おろしでビールの染み抜きをします。

伊勢佐木町で、仕立て屋をしていた、田中麗奈さん演じる、今日一の母は、染み抜きに詳しかったのでした。 

そんな母を、今日一は空襲で亡くしました。 

見事に染み抜きを仕上げた今日一は、ミサに洋服を届けに行き、「アイロンが無いから、仕上げが出来ない!」と言う今日一に、ミサは、アイロンを貸してくれ、娼婦館に出入りしている、髙橋來君演じる、高木誠司から「進駐軍から、仕事を貰えば良い!」と言われますが、今日一は「アメリカとは仕事をしない!」と断ります。

今日一は、戦争孤児の仲間達と一緒に、クリーニングの技術で懸命に生き抜こうとします。

ミサの紹介で、別の娼婦仲間からも仕事を得て、ブローカーをしている誠司とも話をするようになり、米軍からの仕事も引き受ける事にします。

犯罪ではなく、人に感謝されてお金を稼ぐ。

その生活の中で、戦争孤児達は、笑顔を取り戻し始め自分達の稼ぎで「家を借りて暮らす」という細やかな夢を抱くようになります。

誠司は、フィリピン・ダバオで母と姉を亡くし、浦賀に引き上げて来ていて、父は、先に出征していて生死は不明。

ある日、今日一は、ミサの紹介で、米兵から仕事を紹介して貰いますが、偶然、今日一を引き取っていた雄造に出会い、ボコボコに殴られ「洗濯を二度としないと誓え! でないと、警察に突き出す!」と怒鳴られます。

それでも誠司は、アメリカ人相手の仕事をしろと前向きでした。

米兵から預かった、洗濯した軍服を届ける途中、仲野太賀さん演じる、傷痍軍人の井上に絡まれ、洗濯物を泥だらけにされてしまいます。

米兵からのクリーニングの仕事を失い、戦争孤児の仲間達が次々と去ります。

ある日、武弘と仲間割れして出ていった少年達に襲われて、武弘が、けがを負い、有り金の全てを奪われて、隠れ家もめちゃめちゃにされます。

養育院で、妹を餓死で亡くしていた、村山輝星ちゃん演じる、凪子は、施設行きを拒み「ミサさんに頼んで娼婦になる!」と言いだしたので、今日一は新たな仕事を探して奔走します。

ミサのところに行った今日一は、米兵相手のデイ・クリーニングという仕事がある事を教えて貰いそこで働く事を決意します。

ミサの所にいた誠司と一緒に帰った今日一は、以前に絡まれた傷痍軍人の井上に尾行され「この、非国民が〜!」と襲われます。

井上から逃げる途中、誠司は、米軍のジープに轢かれて亡くなってしまい、米兵は誠司の遺体を、車に積んで運んで行ってしまいます。

掴みかけた新しい仕事も無くし、次々と、今日一の仲間が去って行きます。

岡橋亮汰君演じる、料理上手の島田真吉は「兄妹でアメリカに引き取りたい!」と言ってくれた人が居ると話し、隠れ家を出て行こうとした、まさに、その時、施設の男達に、無理矢理、車に乗せられ連れて行かれてしまいます。

今日一と、凪子と武弘は、デイ・クリーニングに潜り込み、新しい仕事を始めます。

ある日、三浦誠己さん演じる、誠司の父親が、ミサから聞いたと言って、今日一を尋ねて来て、誠司の行方を尋ねます。

今日一は「誠司は、米兵のジープに轢かれて死んた!」と告げ、誠司の父に誠司の遺品である、家族写真と世界地図を渡します。

今日一や凪子、武弘の誠司への思いを知った、誠司の父は「君達が、誠司と一緒で良かった!」と今日一達に感謝の言葉を告げて立ち去ります。

誠司の父が去った後、今日一は「軍服なんて洗いたくない! 俺は、普通の人達が生活する服をクリーニングしたいんだ! だから、あそこには、二度と戻らない!」と言い、デイ・クリーニングを辞めると言います。

武弘は、その言葉に賛成します。

実は、武弘は孤児では無く、静岡の土建屋の妾の子だと告白し、恥を忍んで故郷の静岡に帰ると言います。

今日一は、施設に入って学校に行き、勉強して、クリーニング屋になりたいと言います。

凪子は「今日一と一緒に居たい」と言い、一緒の施設に行くと言います。

やがて、今日一と凪子は夫婦となり、横須賀の地で、夢だったクリーニング店を開いたのでした。

2人の孫娘が、この物語のストーリーテラーの瑞稀でした。

第二次世界大戦の後の日本では、戦争で親を失い社会からも見捨てられた、戦争孤児と呼ばれた子ども達が大勢居ました。

歴史上初めて経験する敗戦と、未曽有の食糧難に大混乱した戦後の日本。

大人達が、右往左往し、生きる為に必死になる中戦争孤児となった子供達は、大人からも、社会からも見捨てられ、自分達の力だけで、必死に生き延びようとしていたと言う悲しい現実を、このドラマから学びました。

そして「戦争は終わったんじゃないのか!」と叫ぶ、戦争孤児達の魂の叫びを感じました。 

この特集ドラマ「軍港の子〜よこすかクリーニング1946〜」は、西田彩夏さん原作の物語です。

西田彩夏(にしだあやか)さんは、現在32歳で、50本以上の作品に出演する女優さんです。 

西田さんは、今回のドラマの主人公のモデルで、横須賀に実在したクリーニング店の店主の孫なんです。

1歳の時に祖父が亡くなっていた為、記憶は無いものの、戦争孤児だった、祖父の生い立ちを辿っていった時に、大人や社会に見捨てられ、誰も知らない土地で1人働き、生活して生き延びていた事を知ります。 

祖父と同じように、自力で生きて行く子供達の奮闘と戦争の残酷さを通じて、平和を考えるきっかけを作りたいと思い、企画書を制作し「祖父の生きた時代をベースに、横須賀や日本各地で、実際に起こった出来事」をフィクションとして、このドラマが描かれました。

戦後も子供達を苦しめる「戦争とは何か?」 

世界中で、戦争の悲劇が拡大し続ける、今だからこそ、1人でも多くの人に見て貰いたいドラマだと思いました。