先日、日本TV系で放送された、24時間TVの中で第2次世界大戦で没した、画学生達の遺作を展示する、長野県の戦没画学生慰霊美術館「無言館」の設立までを描いたスペシャル・ドラマが放送され、じっくりと見させて頂きました。



このドラマは、浅野忠信さん演じる、故・水上勉氏の息子である、館長の窪島誠一郎さんが「無言館」を設立するまでの経緯を描いたドラマで、監督兼脚本を、劇団ひとりさんが担当されました。



窪島に多大な影響を与え、戦没画学生の絵を集める為、共に全国各地を駆け巡る、良きバディである洋画家の野見山暁治役に寺尾聰さん。


更に、戦没画学生の遺族や恋人役には、大地康雄さん、笹野高史さん、でんでんさん、由紀さおりさん、秋野大作さん、檀ふみさん、窪島の友人の美術商役に皆川猿時さん、古くなった絵を修復する、絵画修復家役に渡辺真起子さんと、実力派の俳優陣が総出演されました。



そして、劇団ひとりさんが大絶賛したという、フレッシュで圧倒的な存在感を放つ若手キャストの八木莉可子さん、影山拓也さん(IMPACTors/ジャニーズJr.)も出演。



影山拓也さんは、戦争に向かう最後の最後まで、恋人の姿を描き続けた戦没画学生・日高安典を、そのモデルとなった恋人の雪江を、八木莉可子さんが演じられました。



2人は、戦争に日常を奪われた、若い2人の切なく悲しい恋の物語を見事に綴りました。



監督・脚本を務めた劇団ひとり監督は、このドラマについて、「絵に向き合った、画学生達の想い絵を守ろうとするご家族の想い、絵を引き継ごうとする、窪島さんや、野見山さんの想いは、もの凄く美しいものだと、僕は思ったので、極力、その思いに焦点を当てて、脚本を書いたつもりです」と語られる通り、それぞれの登場人物の想いを丁寧に描いていました。



そして、このドラマのもう一つの主役の「絵」について「絵は魂を込めて描くので、自分の分身のようなもの、そんな絵を、ただの小道具にしてはいけない!」と語り、扱う絵に関しては「ちゃんとしたライティングで、視聴者の皆さんにお見せしないと失礼に当たるなと思いました」と、細部にまで拘って撮影された「絵」の数々も、とても印象的でした。


そして、大ベテランの俳優陣の大地康雄さん、笹野高史さん、檀ふみさん、秋野大作さん、由紀さおりさん、でんでんさんは、流石の名優でした。



以下は、ネタバレを。


長野県上田市で、美術館を営む窪島誠一郎は、友人の画家である野見山暁治から「戦争で、命を落とした、美術学校時代の仲間の絵を展示して欲しい」と頼まれ、当初、窪島は難色を示しますが、野見山と共に訪ねた、笹野高史さん演じる伊澤民介の家で、民介の戦死した弟・洋が描いた絵に目を奪われます。


それは「凄く普通の絵」でした。


その絵に「見つけられた」と感じた窪島は、戦没画学生の絵を全国から集め、新たな美術館を設立しようと決意し、野見山と共に絵を集める旅に出ます。



行く先々で遺族らと出逢い、絵に込められた戦没画学生の思いに触れる中で窪島は「俺が、こんなことしていいのか?」と迷い、さらに建設費や、非難に疲弊しながらも「無言館」の設立に奔走。



そのひた向きな思いが、50年の時を超えた奇跡を呼び起こします。



画学生達が、そうまでして夢中で描いたものは、ただの畦道や家族の団らんや愛する女性でした。


しかし、美術館が完成し、展示された絵を見た人々に届いたものは、その時、画学生達が、一番大切にしていたものだったのです。


何気ない日々の欠片を描くと同時に、それを自分達の胸に刻み出征した事に、遺族は悲しみでいっぱいになります。


「大切なものはすぐそばにある」


でも、それは決して「当たり前ではない!」と気づかせてくれたのでした。


何故なら、画学生達にとって、それらは、もう見る事も、触れる事も出来ないものだっただからです。



画学生達の優しい眼差しや思いをリアルに感じ、遺族の前に、もう一度生き返ったように思えたかもしれません。


戦争の残酷さとは、こうした細やかな日常でさえ奪う事だという、画学生達からのメッセージでもあると感じました。


主人公の窪島も、様々な困難に直面しながら美術館の開館を目指します。


画学生達の遺品とも言える絵を、自分が引き継ぐ事の意味や、費用の問題などで疲弊していくばかりでした。


自分でも、何故ここまでするのか分からないまま突き進みますが、最後には、その答えが見つかります。


絵は無言でも、たくさんの大切な事を伝えています。


そして、見る人は無言で、それをしっかり受け止めて、心に小さな灯りを灯して日常に帰っていくという結末でした。


戦後77年、先の大戦を知る方が、年々少なくなっている現在、あの戦争を「忘れずに語り継ぐ」という事は非常に大切だと、僕は思います。


平和が当たり前になり「平和ボケ」に陥っている現在の日本。


いつ、何時、これまで当たり前だった「平和」がある日突然、奪われてしまう日が絶対に来ないとは言い切れません。


しかしながら「戦争」に正義など無く「勝者」も「敗者」も無い。


たとえ形として「勝者」となったとしても、犠牲になるのは、いつの世も名も無き庶民です。


なので、先の大戦を知らない世代が「不戦」の誓いを掲げ、あらゆる国、あらゆる人々と「平和」への対話を繰り返す事が大切だと思います。


僕自身は画家ではなく、駆け出しの作詞家ですが「言霊」を信じて、これからも「恒久平和」・「永遠の愛」・「希望」といった普遍のテーマを持った作品を一つでも多く紡いで行けるよう精進して参りたいと思います。


今なら、まだ見逃し配信などで、ご覧になれると思います。