今日は、Tears for Fearsのボーカル&ギターのRoland Orzabalのお誕生日。



今回の個人的アルバム・レビューは、1989年に発表された「The Seeds of Love」を。



音楽を突き詰めるタイプのミュージシャンは、最高傑作を作ってしまうと、解散するか、メンバーチェンジするか、減速してしまうのですが、TFFは、事実上の解散に近い状態でした。


1988年1月に、それまで貯めてあった3枚目のアルバム用の曲を全てボツにして、レコーディング・エンジニア、デヴィット・バスコンビーと作り上げた驚異の音世界です。


Roland OrzabalとCurt Smithは、本作で妥協を一切しませんでした。


1曲目の「woman in chains」は、カンサス・シティのホテルで歌っている所をスカウトした、Oleta Adamsが参加、その濃い音世界が幕を開けます。


2曲目の「Badman's Song」も、なかなかの名曲です、やはり、3曲目の表題曲に尽きます。


これは未来永劫光り続けるであろう名曲です。


本作は間違いなく彼らの最高傑作です。


でも、それだけにこのアルバムは、最高の完成度と緊張感とロックする音楽魂が脈打つ演奏が披露され、収録されています。



このアルバムからの先行シングル「Sowing the Seeds of Love」は、全英シングル・チャートで最高5位、アメリカ(Billboard Hot 100)では、最高2位を記録し、前出の2曲以外にも「Advice for the young at heart」、「Famous Last Words」がシングル・カットされています。



本作制作中に、Ian StanleyとChris Hughesが離脱。


Bob Clearmountainに助力を請いながらの初セルフ・プロデュース作品となりました。



1993年には、日産・シルビア(S14型)のCMソングに、このアルバムの3曲目に収録されている「Sowing the Seeds of Love」が起用されました。


1曲目「woman in chains」と、ラスト前のライブ演奏「year of the knife」は、ロックミュージックの天才ミキサー、Bob Clearmountainが、ミックスを担当しています。



それだけに各楽器の分離の良さと、ノリの良さとロックする駆動感は抜群。



特に「year of the knife」のドラムスと、ギターの切れ味は、何度聴いても頭がいってしまう。



その後に続くアルバムラストの曲との繋がりと対比は素晴らしいの一語。

TFF事実上最後のアルバムとして輝いているだけではなく、ブリティッシュ・ロックの到達点の一つでもある名盤。



4曲の「Advice for the young at heart」は、ベスト・アルバムのラストを締めくくっていた名曲でもあります。


ラテン的というか、海を感じさせる陽気な優しさがあります。


Curt Smithの最高のボーカルナンバーで、バックのサウンド、アレンジも完璧です。

1曲目の「Woman in Chains」では、Phil Collinsがドラムスで参加し、流石のドラミングを披露しています。



Curt Smithのベースラインも味わい深く、Neil Taylorの弾き過ぎないギターが楽曲をクールに盛り上げます。


プログレッシブ・ロックの正統的継承者のサウンド到達点として聴くこともできる1枚です。

アルバムラストの楽曲は壮大なロック・バラードになっていて、アルバム全体を見事に纏めています。



大げさな所は微塵も無いのですが、サウンドと曲と詞が一体となっている様は壮観です。


アルバムのテーマとなっている言葉が繰り返され楽曲が、全体が「no more」という一語で終わります。


前作「Songs from big chair」収録の「Shout」の様な、大ヒット曲が無かった為、影が薄い印象を受けるアルバムですが、トータルな出来映えはこちらも全く劣りません。











収録曲


  1.Woman in Chains


  2.Badman's Song


  3.Sowing the Seeds of Love


 4.Advice for the Young at Heart


  5.Standing on the Corner of the Third World


  6.Swords and Knives


  7.Year of the Knife


  8.Famous Last Words