今日は、山下達郎さんのお誕生日なんです。


今回の個人的アルバム・レビューは、1998年に発表された、山下達郎さんの通算11作目のスタジオ・アルバム「COZY(コージー)」を。


前作「ARTISAN」から、7年ぶりにリリースされた、達郎さんファン待望のオリジナル・アルバムです。


山下達郎さんの純粋なスタジオ・アルバムでは、2021年末現在、収録曲が最多・収録時間が最長のアルバムです。

1995年にベスト・アルバム「TREASURES」を発表して以後、久々のオリジナル・アルバムとして話題となりました。


一度は、1996年にオリジナル・アルバム「Dreaming Boy」を発表する計画があり、発売日まで、公表されていましたたが、達郎さん本人が完成度に満足しない等の事情で中断されました。


このアルバムの収録曲で、シングル・カットされていない楽曲にも「〜mix」と付いているのは、元々「Dreaming Boy」用にレコーディングしていた楽曲を新たに作り直した為です。


この7年間に録音された楽曲は、50曲以上とも言われていて、この期間には、CMソングが非常に多く作られていましたが、一部を除いて、ほとんどが未発表のままで、達郎さんのラジオ番組の「サンデー・ソングブック」で一部がOAされるくらいしか耳にする機会が無く、達郎ファンは音源化を待ち望んでいる状態でした。


結果的に、このアルバムに収録されている楽曲はCMソングのフル・コーラス・バージョン中心となっており、ベスト・アルバム的な内容とも言えます。


発売から、僅か10日間で、約80万枚が出荷され発売元のワーナーミュージック・ジャパンによると、購入層の30%以上が(1998年当時、普段レコード店に足を運ばないと言われた)30歳以上の層でした。


爽やかなギターのフレーズが印象的な「氷のマニキュア」から始まり、シングル曲「ヘロン」へと続き「FRAGILE」を挟んで、ミスタードーナツのCMソングとしてお馴染みの「DONUT SONG」へと続いて行く展開になっており、充分に楽しむことが出来るアルバムです。

全て英語詞の楽曲の「FLAGILE」は、達郎さんのラジオ番組のテーマ・ソングとして、最近まで使用されていて、ラジオなどでも、よく耳にする楽曲も多く、達郎さんらしい、丁寧に作りこまれた楽曲の数々が楽しめます。

明るくPOPで楽しい曲や、切ないバラード等が、バランス良く収録されていますので、かなり充実した内容のアルバムだと思います。

Melissa Manchesterとの共作「Stand In The Light」では、明らかに達郎さんが発声を変えて歌っています。

いつもの突き抜けるようなリード・ボーカルでは無く、包み込むような発声で、Melissa Manchesterのボーカルとトーンを合わせている点などは、やはり流石の一言です。


初回限定盤には、オマケとして「ペーパー・フィギュア」が付いてました。









収録曲

  1.氷のマニキュア 

アルバム書き下ろし作品。

ドラムスは元・ローディの阿部薫さん、ギター・ソロは佐橋佳幸さんによる演奏。

このギター・ソロに関しては、レコーディングの際に達郎さん本人を含め、5人程のギタリストが演奏したものの、達郎さんのイメージに合うテイクが、なかなか録れず、アルバムのマスタリングの期日が迫っていた為、最後に佐橋さんが呼ばれた時点で、達郎さんは「今日、佐橋でやってみて、ダメだったら、この曲入れるのを辞めようと思ってんだよね」と、収録を断念する事も考えていたと言うのですが、最終的には、佐橋さんの演奏が「一発OK!」のテイクとなりました。

ちなみに佐橋さんの前で、エンジニアの吉田保さんが、ボツになったギター・ソロのオケをいっぺんに流してしまい、達郎さんに、こっぴどく、怒られてしまったそうです。

この時、佐橋さんは、その内の2〜3人は、誰が弾いているのか、すぐに分かったというエピソードがあります。

なお、2015年には、佐橋佳幸さんが音楽活動の中で関わった楽曲を収録した、コンピレーション・アルバム「佐橋佳幸の仕事(1983-2015) 〜Time Passes On〜」に、達郎さん自身が、オリジナル・マルチ・テープからリミックスを行なった「氷のマニキュア (2015 REMIX)」が収録されました。

  2.ヘロン

元々は、TBS系の朝の情報番組「ビッグモーニング」のテーマソングだった楽曲。

(タイトルは「鳴かないでHERON」でした。)を、キリン・ラガービールのCMソングに使用されるのを機に正式に30枚目のシングルとして楽曲化されました。

オリコン最高10位を記録。

この楽曲の頃から、達郎さんはプロモーション・ビデオを制作し始めました。

  3.FRAGILE(フラジール)

1998年春・SANYOブランド「フラジール」CMソング。

CMバージョンは、ファンクラブ通信販売アルバム「山下達郎CM全集 Vol.2」に収録されました。

  4.DONUT SONG(ドーナツ・ソング)
1996年・ミスタードーナツのCMソングとして書き下ろされた楽曲です。

ツイスト・ハニーディップ・エンゼルクリームなどのミスタードーナツの店頭メニューが歌詞に登場します。

後に、オールタイム・ベスト・アルバム「OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜」にも収録されましたが、ライナー・ノーツで達郎さんは「ミスタードーナツのCMソングでおなじみのこの曲は、渋谷公園通りが舞台ですが、肝心のミスドがなくなってしまった、でも、それも、またよしとしよう、より一層夢想的・妄想的になれるから」と書いています。

この曲も山下達郎CM全集 Vol.2」にCMバージョンが収録されました。

ドラムは、1980年代後半以降、引退状態にあった上原裕さんが音楽活動復帰後初のレコーディング曲となりました。

(作品としては、アルバム「POCKET MUSIC」以来。)

  5.月の光 

アルバム書き下ろし作品。

  6.群青の炎〜ULTRAMARINE FIRE〜

キリン・ラガービールのCM用に制作されましたが、CM本体は数回しかOAされませんでした。

達郎さんとしては珍しい、全編ファルセットの楽曲。

  7.BOOMERANG BABY

(ブーメラン・ベイビー)

加山雄三さんの楽曲のカバーです。

  8.夏のCOLLAGE(コラージュ)

トヨタ・カリーナCMソング。

アルバム発表と最も時期が近いタイアップ作品です。

  9.LAI-LA〜邂逅〜(ライ・ラ)

1994年に沢口靖子さん、香川照之さん主演で放送された、NHKのドラマ「赤ちゃんが来た」主題歌。

10.STAND IN THE LIGHT 〜愛の灯(ともしび)〜 ('98 REMIX)  

28枚目のシングル。

フジテレビ系ミュージック・キャンペーン・ソング。

Melissa Manchesterとの共演作。

シングルとは別ミックス。

オリコン最高23位を記録。

11.SALESMAN'S LONELINESS

アルバム書き下ろし作品。

「DONUT SONG(ドーナツ・ソング)」に出て来る、渋谷公園通りのミスター・ドーナツで、夏の昼下がりに娘さんといた時に、一人カウンターに座っていた、サラリーマンの背中が、寂しげに見えた姿から作られたという楽曲です。

曲自体は、1990年代に入ってから出来ていたと言います。

12.SOUTHBOUND #9(サウスバウンドNO.9) 

1995年日産・スカイラインCMソング。

2019年発売のシングル「RECIPE (レシピ)」に、2019年のライブ・バージョンが収録されました。

13.DREAMING GIRL('98 REMIX) 

1996年発表の29枚目のシングル。

松嶋菜々子さん、上川隆也さん主演のNHK連続テレビ小説「ひまわり」主題歌。

達郎さん曰く「本作のベスト・トラック」との事

PVには、さとう珠緒さんが出演されています。

オリコン最高25位を記録。


14.いつか晴れた日に (ALBUM REMIX)  

31作目のシングル。

1998年にTBS系で放送された草彅剛さん、石田ゆり子さん主演のドラマ「先生知らないの?」の主題歌。

シングルとは別ミックスです。

オリコン最高15位を記録。

15.MAGIC TOUCH ('98 VERSION)  

1993年発表の24枚目のシングル。

シングルとは別ミックスです。

maxellカセットテープのCMソング