今日は、VAN HALENのリーダー兼ギタリスト、Edward Van Halenのお誕生日なんです。


存命なら、67歳。



残念ながら、一昨年の10月に虹の橋を渡ってしまいました。



今回の個人的アルバム・レビューは、1984年に発表された、VAN HALENの通算6枚目のアルバム「1984」を。


アルバムジャケットには、ローマ数字で、MCMLXXXIVと記載されています。


このアルバム「1984」は、Van Halenのデビュー・アルバム「VAN HALEN(邦題:炎の導火線)」と並び、誰もが認めるバンドの代表作です。


それと同時に、VAN HALENという膨大な熱量を内包するモンスター・バンドの、ひとつの終焉を飾る作品でもありました。


 ギタリストのEdward Van Halenと、ドラマーのAlex van Halen兄弟、ベーシストのMichael Anthonyそして、初代ボーカリストのDavid Lee Rothが、VAN HALENとして活動を開始したのは、1974年の事。


1978年のデビューアルバム「VAN HALEN(邦題:炎の導火線)」では、Edward Van Halenの火花を散らしたような革新的なギター・プレイが話題になりました。



彼のギター・プレイは、その後のHR/HM界に計り知れないほどの影響を与えました。


は、アルバムを発表する度にチャート・ポジションを押し上げ、アメリカを代表するモンスターバンドへと変貌を遂げて行きました。


バンドの結成からちょうど10年目に届けられた、このアルバム「1984」は、先行リリースされた第1弾シングル「Jump」のヒットに牽引される形で、ヒットチャートを駆け登り、発売から僅か、2か月で、100万枚を突破し、全米チャートでは、VAN HALENとして最高位の2位を記録しました。


しかも、5週間という長きに渡り、2位のポジションを維持しました。


(その時、首位に君臨していたのは、Edward Van Halenが、ギター・ソロを弾いた「Beat It」を収録した、Michael Jacksonのモンスター・アルバム「Thriller」でした。)



MTV全盛期という、時代の追い風もあり、この「1984」は最終的に1000万枚以上を売り上げ、ダイアモンド・ディスクに認定されました。



第1弾シングルの「Jump」は、VAN HALENとして、初の全米1位を記録しました。


他にも「I'll Wait」が全米13位・「Panama」も全米13位・「Hot for Teacher」が全米56位と、このアルバムの収録曲が軒並み大ヒットしました。


しかし、順風満帆に見える裏で、バンド内には修復不可能な亀裂が生じていました。


 常に音楽的探求心を追求し、シンセサイザーの本格的導入を試みようというEdward Van Halenと、「我々はギターを武器として闘っていくべき」と主張する、David Lee Rothが対立します。


それまでも鍵盤楽器や、それを彷彿とさせるギター・エフェクトは楽曲の一部で導入されて来ましたが、ここまでポップ色を強く感じさせるサウンドは初めてでした。


David Lee Rothは2年以上に渡り「Jump」の歌詞を書くことを拒否します。


この対立は後々まで尾を引き、David Lee Rothは、1985年に、ソロアルバム「CRAZY FROM THE HEAT」をリリースし、このアルバムを最後に脱退を発表します。(後に復帰)



 『音楽的価値観の相違』と言えば、そうなのですが、バンド史上最大のヒット曲が、バンドの内部分裂を促したのですから皮肉なものです。


結果的にオリジナル・ラインナップとして、最後のアルバムとなった「1984」ですが、リード・トラック「Jump」のイメージのみで聴くと、大きく裏切られると思います。 



 「Jump」は、VAN HALENの代表曲でありながら、VAN HALENとしては、かなり例外的な曲で、Edward Van Halenの実験精神が活かされた楽曲だからです。


 オーバー・ハイムのシンセサイザーで弾かれる重厚、且つ、華麗なアルバムのオープニングのインスト曲「1984」


この僅か1分程のイントロを経ての「Jump」への流れは、新たなVAN HALENを印象付ける目論見があったのではないでしょうか?


もう一つのシンセ曲「I'll Wait」は、VAN HALENにしては珍しいシリアスなトーンの楽曲。


AOR風の曲調に合わせてか、Edward Van Halenにしては、珍しく抑え目なギター・ソロが聴けます。


「Panama」は、VAN HALENが本来持つ、ハード・ロック色とキャッチーさが前面に押し出された楽曲。


Alex van Halenのドラム・フレーズで幕を開けるシャッフル調の「Hot For Teacher」は、アルバム随一の疾走感で攻めます。 


シングル曲が、あまりにも強烈な為なのか、「Top Jimmy」・「Drop Dead Legs」・「Girl Gone Bad」・「House of Pain」の4曲は、シングルで言うところのC/W曲的な印象を持たれがちですが、それは明らかに過小評価だと思います。


どれも一聴して、VAN HALENと分かる、独自のグルーブ、その上で蠢く、目紛しくもオーガニックな楽曲展開や、引き出しの多さに舌を巻く多様なギター・フレーズは、それまで培って来た、Edward Van Halenの音楽的実験の結実したものと言えると思います。


この「1984」には捨て曲など1曲もありません。


 収録曲の全9曲に凄みと洗練が備わっています。








収録曲


 1.1984


  2.Jump


  3.Panama


  4.Top Jimmy


  5.Drop Dead Legs


  6.Hot for Teacher


  7.I'll Wait


  8.Girl Gone Bad


  9.House of Pain