今回の個人的アルバム・レビューは「80年代シティ・ポップ」のカリスマ、角松敏生さんの1988年2月に発表された「BEFORE THE DAYLIGHT」を。
全8曲と曲数は少ないですが、1曲1曲の完成度が高い為、全く物足りなさは感じられません。
テレフォンコールから始まる1曲目の「I CAN GIVE YOU MY LOVE」も、この時代ならではです。
無機質な呼び出し音も、この人にかかれば、ちょっとした小道具に変身します。
このイントロを聴いただけで、自然に気持ちが盛り上がって来ます。
個人的なお薦めは6曲目の「REMEMBER YOU」。
イントロから歌の内容の情景が浮かび上がってくるような名曲です。
これは、角松敏生さんだけにしか書けない「大人の恋物語」だと思います。
この前の「CAN’T YOU SEE」という楽曲が、一夜の恋を描いた作品となっていて「REMEMBER YOU」の呼び水となっていて、この曲の世界と見事にマッチしています。
現代のダンスとラップの楽曲に慣れた若い方々には、これが30年以上前の作品という事で、「ん?」と感じるかも知れません。
しかし、当時は、洋楽しか聴かない、いわゆる、うるさ型と呼ばれた方でも、「こいつだけは聴く!」というほど、角松敏生さんは一目置かれる存在でした。
今、改めて聴いてみると、コンセプトが、ブレてない為、中弛みが無く、最後まで、そのまま聴けます。
凍結前の完成品としては個人的にトップクラスだと思います。
プロデューサーの音作りが秀逸です。
気がついた方も、いらっしゃると思いますが、角松敏生さんの歌い方が、前作までの作品と変わっています。
一人のシンガーとして、歌に力を入れ、その実力を試すには、良い機会だったのかもしれません。
この後、凍結への序章が始まると思うと、ターニング・ポイント的位置にある作品になってます。
収録曲