今回の個人的アルバム・レビューは、1986年9月に発表された、チャゲ&飛鳥の通算8枚目のオリジナル・アルバム「MIX BLOOD」を。



個人的には、このアルバムはチャゲ&飛鳥の「隠れた名盤」だと思います。



アップテンポな、エレキサウンドの曲が大半を占めるこのアルバムは、聴いていると、何となく、ソワソワして来ます。


あえて悪い表現をさせてもらうと、落ち着きが無いアルバムだという感じです、



チャゲ&飛鳥の、ダイナミックなライブを、そのままパッケージングしたような感じなので、無理もないかもしれません。



完全にライブを意識して作ったであろう、1曲目の「EXPLOSION」


直訳すると「爆発」になります。


大掛かりなイントロに加え、曲中に爆発音が組み込まれているなど、とにかく派手な楽曲です。


そして、間髪入れずにハードロック「MIX BLOOD」へと続く流れは、あまりのエネルギッシュさに気圧されそうになります。


結論から言えば、このアルバムは、この2曲の為に存在すると言っても過言ではありません。


他の楽曲と比べても、頭一つ・二つ抜けているように感じます。



特に「MIX BLOOD」の持つ、異次元的な歌詞とメロディーには、胸をざわつかせずにはいられません。


是非、聴いて頂きたい楽曲です。




「こんなハイテンションのまま、展開されても困る…」というリスナー声が、聞こえたのか、どうなのか、とりあえず「TEKU TEKU」のらのんびりとした雰囲気で一休み。


改めて、ASKAの「動」と「静」によるギャップは本当に魅力的だと感じます。


この曲は、明石家さんまさんに提供した楽曲のセルフカバーになります。



再びボルテージが上がり、チャゲさんの荒っぽいボーカルによる、夜の都会をスポーツカーで疾走するような「不条理なkissを忘れない」へ。


抜けるような青空に、どこまでも響き渡りそうな、爽快ポップナンバー「黄昏を待たずに」へと。



キュートに踊る、二人の姿が浮かんできそうな、アイドルチックに跳ねる「Newsにならない恋」


この曲は、早見優さんへの提供曲です。



とにかく陽気な、南国ダンサブルナンバーの「ADIOS SENORITA」



AORっぽいサウンドに、歌謡曲の要素を取り入れたような「かけひき」と、熱のこもった楽曲が次々と畳みかけてくる。あえて繰り返しますが、やはり落ち着きのない作品です。



アルバムも佳境に入ると、ようやく腰が座ります。



男の悲哀を描いた「シングル・ベッド」は、ラウンジで寛ぐようなゆったりとした曲調と、CHAGEさんの低音が気持ち良いです。


この曲も、明石家さんまさんに提供した楽曲です。



スウィング・ジャズ調の「やっぱりJAPANESE」も、ASKAさんの絡みつくようなボーカルが心地良いです。



奇しくも、両曲共に「ホテル」を舞台にしているのは、単なる偶然でしょうか?



個人的には「やっぱりJAPANESE」で締めても良かったと思うのですが、ボーナストラックのような「月のしずく」で終わります。



この曲は、2曲目の「MIX BLOOD」をリプライズした、別バージョン(バラード)で、サイズも小ぶりになっています。



このアルバムから、第2期ともいえる活動期を迎えたチャゲ&飛鳥は、前面に飛鳥涼さんを出してきた様に思います。


動きながら変化していく2人といった様に見えますが、楽曲そのものは、あまり変わらずに、アレンジが大きく変わってきています。


時と共に、衣装を替えるように変わってきた様に感じます。



このアルバムの楽曲群は、あまりベスト盤への収録がなく、このアルバムでしか聴けない曲が、たくさんあります。



しかしそれ故に「ベストに入る曲が少ない、パッとしないアルバム」という印象を、聴く前の時点で、一部のファンから受けやすいのではないか?と思い、それ故に、個人的に「隠れた名盤だ」と思ったのです。


実際、蓋を開けてみると、「こんなに素晴らしいアルバムだったのか!」と驚嘆せずにいられませんでした。



このアルバムでは、チャゲさんのソングライティングも、かなり光っていて、なかなか凄い内容となっております。



このアルバムが発表されたのが、1986年だという事を考えると、チャゲ&飛鳥の楽曲が、いかに時代を超える普遍性、カリスマ性を持っているかという事を感じずにいられません。



例えこの作品が、今の時代に発売されたとしても、十分に通じ、名盤という評価を得る事が出来るでしょう。



こんな作品が、30年以上前の作品として、皆に知られず埋もれてしまっている事が、非常にもったいないと思います。



しかも前作「TURNING POINT」の発売から5ヶ月という、とんでもなく短いスパンで、このアルバムはリリースされました。



心機一転、レコード会社を移籍したこの年は、さらにもう一枚ミニアルバムをリリースしています。



彼らの内から溢れ出る創作意欲が止まらなかった証拠だと思います。


https://youtu.be/rUP9zSkSYhc





収録曲


  1. EXPLOSION
  2. MIX BLOOD
  3. TEKU TEKU
  4. 不条理なKissを忘れない
  5. 黄昏を待たずに
  6. Newsにならない恋
  7. ADIOS SENORITA
  8. かけひき
  9. シングル・ベッド
  10. やっぱりJAPANESE
  11. 月のしずく