今回の個人的アルバム・レビューは、1989年3月に発表された、長渕剛さんの「昭和」を。
「昭和」は、1989年3月25日にリリースされた、長渕剛さん11枚目のオリジナルアルバムです。
映画や、ドラマとタイアップした曲もあり、なんとも豪勢な曲が多いのが特徴です。
タイトル曲「昭和」は、「昭和」という、ひとつの時代の終焉を、自身の歴史とも重ねながら、絶妙に表現した傑作です。
東京で、自身の夢に向かって頑張る者達への応援歌とも言える「とんぼ」は、同名のTBS系ドラマの主題歌として、ミリオンヒットを記録しました。
また映画「オルゴール」のテーマソング「激愛」や「NEVER CHANGE」など、数多くの名曲が収録されている同作は、昭和から平成へと移り行く時代の流れの中で、ミリオン・セラーを記録しました。
まさしく昭和が終わろうとしていた頃、伝説のドラマ「とんぼ」での異様なまでの緊張感を引きずったまま発表されたこのアルバムは、「長渕剛」という存在を、世間に叩き付けた、決定的な一枚でした。
真っ暗闇の原風景から、必死に自分自身を見つめ直そうとする様が圧倒的な「いつかの少年」や、あの世までも添い遂げようとする、男と女を狂おしく描いた「激愛」、何の説明もいらない名曲中の名曲「とんぼ」など、収録曲の密度の高さは半端ではありません。
中でも、アルバムタイトルでもある「昭和」は、全てを飲み込み、肯定していこうという凄まじい決意が表れていて深く心を打たれる名曲です。
まさに長渕剛さんの代表作です。
このアルバムは、彼のキャリアの中で、一つの頂点を極めたアルバムだと思います。
そもそも彼のキャリアは、アルバム「HUNGRY」で、1つの幕を降ろしています。
「HUNGRY」で、ロックバンドのシンガーを目指した彼の夢は、無残にも破れ去り、彼自身、病に倒れてしまいます。
復活後、彼自身のキャリアでの最高傑作といえるアルバム「STAY DREAM」を発表し、暗中模索ながら、自己を見詰め直し再出発を果たします。
そこで何かの手応えを掴んだ彼は、その後、アルバム「LICENSE」へと発展し、そして、この「昭和」で、それまでに彼が収穫してきた全ての物が花開く事になりました。
歌手として、男として、人間として、ひとまわりも、ふたまわりも大きくなった、長渕剛さんの新たな自信が、ここに漲っています。
「STAY DREAM」あたりから編み出した、独特の歌唱法も、このアルバムで完成されています。
今では、日本のみならず、アジアの国々でも知られる大ヒット曲「とんぼ」を筆頭に、全収録曲の完成度の高さはまさに驚異的です。
長渕剛さんが、1人のシンガーから、カリスマに変身した記念すべき作品です。
収録曲
- くそったれの人生
- GO STRAIGHT
- いつかの少年
- とんぼ
- シェリー
- 激愛
- ネヴァー・チェンジ
- プン・プン・プン
- 裸足のまんまで
- ほんまにうち寂しかったんよ
- 明け方までにはケリがつく
- 昭和