今回の個人的アルバム・レビューは、1991年に発表された、長渕剛さんの「JAPAN」を。
長渕剛さんの人気が、絶頂に達した時期のアルバムですが、アルバムの内容は人気に便乗した形の内容ではありません。
アメリカのミュージシャン(特に、キーボードのロイ・ビタン)達と真っ向に組んだ、後々ライブの定番ともなる曲が満載の凄いアルバムです。
精力的にドラマに出演していた頃の長渕剛さんがストレートに出ているという感じです。
「シャボン玉」にしても「シリアス」にしても、聴いていると、歌詞が心に突き刺さる。
そして、新しい感じがする「Mother」
この曲の前に、デビュー当時を彷彿とさせる名曲「東京青春朝焼物語」が収められているのが、心憎い。
一度でも上京経験出がある方は、この曲に自分をオーバーラップさせてしまう方が多いのではないでしょうか?
アルバムにはバラエティに富んだ楽曲が並びますが、瀬尾一三さんと長渕剛さんのコンビが全曲をアレンジしたということもあって、統一感があり、散満な印象は、全く感じません。
アコギのハイライトは、前作の収録曲「お家へかえろう」の続編ともいえる「親知らず」です。
「カーステレオで聴くと良いよ」と、リリース当時、長渕剛さん本人が、ラジオで語っていたのですが、歌詞は重く、サウンドも本当に熱く激しい。
長渕剛さんの数ある楽曲の中でも、特に「MOTHER」は普遍性が高い楽曲だと感じました。
泣ける歌が良い歌という訳ではないが、最初にこの曲聴いた時は、涙腺を揺さぶられました。
長渕剛さんの母を思う気持ちが、ストレートに僕の胸に突き刺さった。
長渕剛さん自身を生み、育て、愛してくれた母が、呆けてしまい、徐々に全てを忘れていってしまう哀しみと、母への感謝や切なさを切々と歌い上げる姿には、聴いていて胸を打たれました。
長渕剛さん本人は世間で嫌われても、長渕剛さんが絞り出した歌達は、好き嫌いで済ませられない何かがあると思います。
タイトル曲「JAPAN」を聴いていると、長渕剛さんが、どれだけ日本や家族を愛しているのかが、伝わってきました。
「親知らず」の、「アメリカに溶けないでくれ!」という歌詞から、戦後から続く、アメリカと日本との関係についても熱く語り掛け、問題提起をしているのが伝わって来ました。
また「気張いやんせ」からは、故郷の鹿児島を愛する思いが伝わってきました。
長渕剛さんの歌は、「この歌を聴け!」と横っ面を叩たかれるような衝撃があります。
長渕剛さんを、イメージで苦手な人が多いのはわかります。
しかし、この人程、創作に対する情熱、そして、人としての繊細さを兼ね備えているミュージシャンは少ないと思います。
それはこのアルバムを聴いて頂いたら感じられると思います。
もしも、まだ、長渕剛さんの音楽に触れた事がない人がいたら、「JAPAN」は、まさに最適だと思います。
収録曲
- ジャパン
- 俺の太陽
- しゃぼん玉
- 炎
- アイ・ラヴ・ユー
- 何ボの者(もん)じゃい!
- 親知らず
- ベイ・ブリッジ
- 気張いやんせ
- シリアス
- 東京青春朝焼物語
- マザー