今回の個人的アルバム・レビューは、1993年発表の杏里さんのアルバム「1/2&1/2(ハーフ・アンド・ハーフ)を。
このアルバムは、「夏」というより、「夏の夜」をイメージするアルバムです。
共同プロデューサー・小倉泰治氏による、ブラック・コンテンポラリーな編曲が格好良いです。
軽快なビートや、艶やかなキーボードが、杏里さんのクリアな歌声と、よく調和し軽やかなアルバムになっています。
とても洗練された上質な楽曲・アレンジ・演奏で、都会的な印象です。
しっとりというよりは「クール」
杏里さんとしては、異色のアルバムかもしれませんが、漂う空気感が心地良いです。
都会の生活に疲れてしまった時、部屋で1人で聴きたいアルバムと言えます。
どの曲も、聴いていて気持ちが良い曲で、リラックスできます。
当時でいう、ブラック・コンテンポラリー風のサウンドに、杏里さんのメロディ・歌が、伸びていく様なタイプの楽曲が多く収録されています。
跳ねるようなピアノソロによる、ジャズへと移行しフェードアウトする4曲目の「缶ビールとデニムシャツ」。
6曲目の「あなたを抱いた夜」
JAMMIN ・Dによるラップも交差してくる、英語曲の9曲目「LOVE IS A TWO WAY STREET」も非常にヒップです。
当時のブラコンは、今となれば、サウンドは軽い印象が有るかもしれませんが、音色としては、フュージョンからの影響も大きいので知的で洗練されています。
ライトで、しなやかな大人のサウンドが、むしろ今こそ心地良いです。
10曲目の「HAPPY BIRTHDAY TO ME」では、インタープレイで、鍵盤が、さりげなく品を作ってゆくセンスも抜群です。
小気味のいい、Funkyなカッティングにオシャレなアレンジが爽快です。
作曲は全て杏里さん自身。
作詞は(1)・(2)・(5)・(6)・(7)が吉元由美さん。
(9)はMAXAYNE LEWIS、残りが杏里さんの作詞です。
どの曲も、杏里さんの音色の明るさが、楽曲に透明感を与えてゆきますが、特に聴きどころは、11曲目の「ドルフィン・リング」(映画『結婚』主題歌)です。
彼女の涼しい声が、夏のブルーに溶け込んでゆく様な、清々しいラヴバラードです。
純粋な幸せだけ盛り込まれた歌詞は、珍しいと思いますが、だからこそ、逆の意味で儚く感じてしまうのかもしれません。
また、「まるで中島みゆきさんの作品か?」と思う様な、輪廻による思想的な深みを見せる8曲目の「記憶の神秘」は意外な曲でした。
作詞が彼女自身なので、「こんな引き出しもあるのか?」と驚きましたが、でも、それも「愛」というテーマがよく表れていて、聴き応えがありました。
個人的には、5曲目の「ONE〜愛はふたりの言葉だから〜」がオススメです。
参加ミュージシャンは、Steve Ferrone (Dr)・Darryl Jones (B)・Freddie Washington (B),・Paul Jackson Jr. (G)・Michael Tompson (G)
・Greg Phillingains (Key),・Greg Mathieson (Key),・Lenny Castro (Percussion)・Jerry Hey (Trumpet)などなど多彩な面々。
まさに90'年代の名盤です。
「杏里ファン」・「杏里・初心者」ともに、オススメです。
また 「90's POPSファン」・「90'S ブラコン・ファン」にもオススメだと思います。
「ベスト盤で気に入った曲が、このアルバムに入っている」という方には、是非、聴いてもらいたいアルバムです。
収録曲
- 恋のゆくえ
- 誰かがあなたを待っている
- セット・ユアセルフ・フリー
- 缶ビールとデニムシャツ
- ワン-愛はふたりの言葉だから-
- あなたを抱いた夜
- 夕陽に赤い頬
- 記憶の神秘
- ラヴ・イズ・ア・トゥー・ウェイ・ストリート~近未来の感動
- ハッピー・バースディ・トゥ・ミー
- ドルフィン・リング