今回は、杉山清貴さんのソロデビューアルバム「beyond」の個人的アルバム・レビューを。

言うまでもなく「杉山清貴 & オメガトライブ」で活躍してきたバンドのフロント・マン、杉山清貴さんの、ファースト・ソロ・アルバム。


当時、オメガトライブを解散して、やりたかった表現が見事に開花しています。


ソロデビューシングルの「さよならのオーシャン」など、ある種男性的なサウンドは、オメガトライブの頃の女性を意識したお洒落な曲達とは対極な位置にあると思います。

大津あきらさんの歌詞も鮮烈です。


先行シングルの 「さよならのオーシャン 」を 聴いた時、そのシリアスなロック・サウンドに度肝を、抜かれました。 


バンド時代の爽やかでポップな、風揺らぐサマー・ソングを思い描いていた僕は、驚きと共にカッコいいサウンドに感動しました。

作曲は 杉山さん自身。

杉山清貴さんって、実はリゾート・ミュージックや、シティ・ポップはなく、こういうタイトなロックを やりたかったのかな ? などとも考えましたが、アルバム収録曲が全曲そうかといえば そうではないんです。


アップテンポな曲あれど「さよならのオーシャン 」 の様な勢いと激しさを持つ楽曲は、他にありません。


ソロ・デビュー・シングルという、気合の入りから良い意味での裏切りを狙ったのでしょうか?

とにかく衝撃的なソロ・デビュー曲でした。


記念すべきソロ・アルバムのオープニングを飾っているのも 「さよならのオーシャン」のダイナミックなショート・ヴァージョン「ocean」。

しかし 「ocean」 は LP バージョンでは、1分少しのイントロダクション的な小品だったのですが、CDバージョンのでは、長く編集されたバージョンです。

これは これで良いバージョンです。 

となると、LP に収録されたショート・ヴァージョンは激レアと なるのでしょうか?


続く2曲目の「what rain can do to love」は、雨音のSE から入る穏やかなAOR ナンバーです。

山口美江氏が綴った英詞が見事です。

作曲は編曲も担当する志熊研三さん。


3曲目の「position 0 の憂鬱」は、エレ・ポップなイントロで始まるスリリングな曲です。 

真夜中の男と女のかけひきを表現しています。

ギター・ソロはかなりロックしています。

杉山さん自身の作曲です。


エンディングに被さって4曲目の「one more night」 の イントロが入って来ます。

畳み掛けるように、アップテンポの曲を配置するなんて、こういう派手なサウンドはバンド時代には披露しにくかっだのでは?と思います。

少しですが 杉山さんのファルセットが聴ける曲です。 

この「position 0 の憂鬱」〜「one more night」の流れはまるでliveです。

特にキーボードとドラムの絡みは圧巻です。
 

5曲目の「alone」の作曲は佐藤健さん。 

杉山さんの穏やかな声が 心地良い、しっとりしたバラード。

ムードある間奏のサックスが良いです。

杉山さんの清涼感のある声にピッタリです。

   

6曲目の「illusion を消した夜」は、雰囲気がバンド時代の楽曲っぽいですが、アレンジが、アルバム・カラーなので、やはり別。 

全体的に緊張感のある楽曲ですが、サビはライトな感じです。

杉山さん作曲です。 


7曲目は「you don’ t know me」前曲同様、イントロに 緊張感が漂います。

もちろん間奏にも。 

それ以外は、疾走感のあるロックを展開しています。

この曲はコーラスが爽やかです。

同タイトルの曲を、ボン・ジョヴィが歌っていましたが、タイトルを歌うサビのメロディーも似ているような 気がします。(笑) 

作曲は杉山さん。  


8曲目は「 long time ago」

ミドル・テンポのバラードです。 

まるでボビー・コールドウェルを思わせるような上質のサウンドです。 

杉山さん作曲の極上AORです。


9曲目は「さよならのオーシャン」

 浜辺でカセットをセットするSEを頭に配置したアルバム・ヴァージョン。 

前述のソロ・デビュー曲です。



10曲目は「reflexive love」

伸びのある杉山さんの声を堪能できる、透明感のある美しい曲です。

後半の盛り上がりはまさにロッカ・バラードの領域です。

これでホーンセクションが前面に出たら、「シカゴ」です(笑)

杉山さん作曲です。 


前曲と繋がるように流れてくるのが11曲目の 「miss・dreamer」 

1986年の夏に日本テレビ系で、放映されたアニメ「三国志 II  天翔ける英雄たち」のテーマ曲。

完全な提供曲です。   

作曲は 佐藤健さん。 

切なさの滲むメロディーが 胸に沁みます。 

ドラマティックな曲です。 

 

アルバム最後を 飾るのは、「shadow」

再びスリリングなナンバーです。

作曲 杉山さん。 

メインでは ないドラムスが、ダイナミック です。

まるでフットルースの 「 ヒーロー 」 みたいな感じです。 

ドコドコ鳴っています。 

カッコいい曲です。 

当時は 普通に聴いていましたが、今聴くと全体的に もう少しエコーを 抑えた、シンプルな音質だった方が良かったような気もします。 

それも時代の 「味 」なのでしょうが、そうすれば今 現在でも、もっとスンナリ聴けたと思います。 

とはいえ 、これこそ 80s年代サウンド。 

この作品が 杉山さんの本当の第1歩だと思います。


一見、男性的なアルバムですが、後半の「reflexive love」〜「miss・dreamer」までは、曲もその配置も練られていて、ソロデビューアルバムとしての完成度の高さが窺えます。

いくつかの曲はバラード・ベスト「バラード・ウィズ・ラヴ」にも収録されています。


beyond...   杉山清貴

Produced  by 杉山清貴

1.ocean   3:42
2.what rain can do to love   4:03
3.position 0 の憂鬱   3:52
4.one more night   4:16
5.alone   4:29
6.illusion を消した夜   4:31
7.you don’ t know me   4:25
8.long time ago   4:18
9.さよならのオーシャン   4:52
10.reflexive love   4:59
11.miss・dreamer   4:18
12.shadow   4:33