今回の個人的アルバム・レビューは、BOØWYの転換期となったアルバム「BOØWY」の個人的レビューを。

それまでのブリティッシュ・パンクロック路線から一転、ポップロック路線へと転換したアルバム。レコード会社を移籍し、東芝EMIから発売された第一作。 

 プロデューサーに元・プラスティックス・四人囃子の佐久間正英さん(後にブルーハーツ・ジュディ&マリー・GLAYなども手がける大物プロデューサー、但し、このアルバム製作次点では、プロデューサーとして現在ほどの実績は無かったと思われる。)を起用し、ベルリン(ちなみに、このアルバムがレコーディングされたのは、ベルリンの壁崩壊前!)の、ハンザ・トン・スタジオでレコーディングされました。

 佐久間正英さんがプロデュースしたこともあり、このような音作りになったことは間違いないが、しかし彼らのセンスが炸裂したアルバム。

これらの状況を見ると東芝EMIが、いかに彼らに期待していたかがわかります。

前作「インスタント・ラブ」までは、パンク、ニューウェーブの影響を強く受けていた作風がこのアルバムから明らかに変わりました。

それは、完成した音を聞くまでもなく、ジャケットなどに見られる彼らのファッションを見るだけでも実感できます。

前作と比較すると、そのサウンドメイクを含む楽曲の歴然たる違いに気づく。 

 具体的に言うならば良い意味での形振り構わぬアグレッシブさや周囲へのニヒリズム、シニカル、低俗さ及び社会に対する皮肉を込めた下世話な歌詞、ディストーションを激しく利かせたギターと小刻みに揺れるリズムに代表されたパンクサウンドからの脱却。

それが、以前までは考えられなかった「愛」をテーマにした歌詞が多く現れ、それに付随するかのように楽曲色も大きく転換。 

 合間合間にキーボードを取り入れたり(ライブでは最低メンバー構成での演奏を心掛けていたが)、布袋のギター一つとってみても「CLOUDY HEART」に代表されるようなリバーブ・コーラス系のクリアートーンを主体とするサウンドへ大きく転換。

折しも当時は、邦楽界全体として、デジタルサウンドを含む大きな転換期にさしかかる時期だったが、それだけでは片付ける事ができない程の音楽性の違いに驚く。

悪く言えば、所謂売れ線に走る商業主義的な側面もあると言えるかもしれないが、思えばアルバムタイトルに彼らのバンドネームを冠したというのも彼らなりの意味があって、成された事なのでは?と思う。つまり横文字としての「BOØWY」を強調する事で、パンクで激しく突き進んだ「暴威」としての決別を区切りたかったのでは?と勝手に推測するのだ。 

 そうすれば、これだけのサウンド面の激変も納得できなくもない。 

 そのような、思いきった転換を迎えた一発目の作品にも関わらず、ベストやライブで代表曲となるような曲が過半数を占めるのは驚異的。

「Dreamin'」の歌詞「ボルトナット〜♪」のような世間に対する皮肉はそのままに、+αでポジティブさを詞に含蓄する楽曲も、それまでに無かった。 

 「Baby Action」のような、気だるさな中にも、アップビートなノリの良さもまた、それまでとは、どこか違った。

 「唇にジェラシー」の哀愁さと、アーバンな雰囲気や 「ハイウェイに乗る前に」のハイスピード・ビートのノリの良い曲は、そのような過去のサウンドからの脱却を試みたからこそ生み出された曲とも取る事ができる。 

 勿論、決別を切々と謳い上げる名バラード「CLOUDY HEART」も同じ事が言えます。  

「 BOØWY」の方向性を変えたと同時に、本当の意味でのアンダーグラウンドからメジャーへと方向転換した布石となったアルバム。

1曲目の「Dreamin'」からの出だしは強烈で、聴く者のハートをしっかりキャッチする作りになっている。 

 また、ライブの中心曲も多いです。

  3曲目の「Baby Action」・5曲目「ホンキー・トンキー・クレイジー」・6曲目「BAD FEELING」・10曲目「CLOUDY HEART」など。

 また、あまり日の目を見ていませんが、4曲目の「唇にジェラシー」、・7曲目の「CHU-RU-RU」なども聴き応え十分。 

 ほとんど捨て曲がありません。 

 後期のアルバムは、布袋寅泰さん作曲の割合が多いのですが、このアルバムは全10曲中、氷室京介さん作曲が5曲。

(布袋さん作曲が4曲、BOOWYでの作曲が1曲)

 BOOWYが売れた、曲のポップさという部分では、布袋さんの功績が大きいが、氷室さんは、バラードやマイナーな曲に目を見張るものがあります。 

 あまり注目されませんが、氷室さん作曲の「黒のラプソディー」・「唇にジェラシー」・「CHU-RU-LU」などは、このアルバム収録バージョンだけで比較すれば「Dreamin'」・「Baby Action」より個人的には好きです。

 (「Dreamin'」・「Baby Action」は、ライブ・バージョンのほうが断然良いです)

 このあと「JUST A HERO」「BEAT EMOTION」「PSYCOPATH」と、BOOWYの快進撃は続いて行きます。 

 「ドリーミン 」

 黒のラプソディー 

 ベイビー・アクション 

 唇にジェラシー 

 ホンキー・トンキー・クレイジー 

 バッド・フィーリング 

 チュルル 

 ダンス・クレイズ 
 
 ハイウェイに乗る前に 

 クラウディー・ハート