「家に居る日は、郵便の来るのが楽しみ」と、文筆家の外山滋比古氏が語っていました。

「もう、そろそろ、その頃合いだと思う頃になると、玄関脇の郵便受けの辺りに神経を向ける」と語っていました。

外山滋比古氏は「ダイレクトメール・雑誌・書類類、仕事の連絡など、届いた郵便物を眺めながら分類するのも面白い」と仰っていました。

中でも「表に"平信"と、ことわってあるのは、取り立てて用件はありませんが、という事ですあって、最も心魅かれます」と。

「老いの練習帳」(朝日新聞社・刊)より。

新型コロナウィルスの感染拡大防止の為、直接訪ねて行くのが、憚られる状況の今、「平信」を綴ってみるのはどうでしょうか?

「平信」とは「無事の便り」の意味。

催しの案内などとは違い、定型の書き方は無く、何を書こうか難儀するかもしれません、しかしながら、必要に迫られて書く手紙類ではなく、「わざわざ自分の為に心を砕いてくれた」と、受け取られる側に気持ちが素直に伝わり、かえって喜んで頂けるかもしれません。

古代ローマの哲人、キケロは「友情は数限りない大きな美点を持っているが、疑いもなく最大の美点は、良き希望で未来を照らし、魂が力を失い挫けないようにするという事だ」と語っています。
(中務哲郎・訳)

未だ収束が見えない、新型コロナウィルスの感染拡大。

気が滅入り、閉塞感に包まれている人が多いと思いますが、だからこそ、励まし合いたいと思います。

普段より時間のある今、こんな時こそ、お互いの無事を確認しあう「平信」を記す好機ではないでしょうか?