こんにちは。
形成外科指導医、専門医の今西です。


レーザーでほくろをとったら傷跡が残らない

 

みなさまは、こんな言葉を聞いたことありますかはてなマーク

 

今回は、この言葉の真偽に関してお話ししながら、みなさまがほくろをとろうと思ったときに、知っておいた方がよいことをお伝えします。


 

さて、この言葉ですが、ほくろの深さ、治療の目的及び方法によって、真偽が変わります。

この話はあとで詳しくしますね。


まずは、傷跡に関してご説明しますニコニコ

傷ができた時に、傷跡が残る場合と残らない場合がありますよね。

この違いが生じる原理を知らずして、ほくろ治療後の傷跡問題を語ることはできませんバツレッド
 

傷跡が残るかどうかは、傷の深さによってほぼ決まります。
それが、怪我であれ、手術の傷であれ、熱傷であれ、基本的にはダメージがどの深さまで及んでいるか次第です。

では、どの深さまで傷ができると、傷跡が残るのでしょうか?

答えは、皮下組織まで傷が達した時です。厳密に言うと、真皮深層までの傷でも傷跡が残ることはありますが、話を単純にするために、ここでは皮下脂肪まで達した時ということにします。
詳細を知りたい方は、日本創傷外科学会のホームページをご覧ください。






ここで、ほくろ切除に話を戻します。

さきほどの傷跡が残る原理から考えると、


ほくろが皮下組織まで存在していた場合は傷跡が残り、真皮内にとどまっていた場合は傷跡が残らない
 

と言えます。


 

ただ、ほくろを切除する時に、もう1つの観点が加わってくるため、話がややこしくなりますゲッソリ

何のためにほくろをとるのか

という観点です。

何やら哲学的になってきましたねぶー

冗談はさておき、みなさまがほくろをとろうと思う時、その目的は大きくわけて2つだと思います。

① このほくろ、癌じゃないのか心配アセアセ (疾患的観点)
② このほくろがあると、見た目がよくないから嫌
イラッ (整容的観点)

ほとんどの場合、どちらかではないでしょうか。
 

このどちらを重視するかによって、ほくろの取り方が変わることがあります。


疾患的観点を重視するなら、切除したものが何なのか、顕微鏡の検査(病理検査)で調べる必要があります。
また、基本的には、腫瘍の取り残しがないように切除することになります。
その場合、腫瘍ではない正常部分も少しだけつけて、メスやデルマパンチで切除します。
切除範囲は皮下組織に達することが多いので、傷跡は残ることになります。
この場合、残る傷跡をいかに目立たなくするかという観点から、腫瘍切除後の傷を扱うことになります。(工夫して傷を閉じる等)



整容的観点を重視するなら、施術した結果、その部分がどれだけ綺麗になったかが大事になります。
この場合、腫瘍を完全に切除しないという選択肢が出てきます。
前述したとおり、腫瘍を完全に切除しようとすると、深い傷ができる可能性が高いです。
皮下組織まで傷が達すると傷跡が残ります。
そこで、あえて傷跡ができない深さ(真皮)までの切除にとどめて(皮膚を削り取るレーザーを使用することが多いです)、残った母斑細胞とメラニンに色素除去のレーザーをあて、黒い色をとばすことで、傷跡を残さず、色も皮膚の色に近い状態にすることを目指すのです。


この場合は、腫瘍が残存しているので、再発するリスクが高くなります。
また治療が複数回になる場合があります。
そして、大前提として、この方法は悪性が疑われる場合は、決してやってはいけない方法です。顕微鏡の検査をしない分、ダーモスコピー等による診察で、悪性腫瘍の可能性を否定してから行う必要があります。  


このような観点も加えて、ほくろの手術方法を決定するため、ほくろの深さという形態的な特徴だけでは、傷跡が残るかどうかは決まらないのです。



まとめると、ほくろをとるときに傷が残らないケースは、

1  ほくろがもともと真皮内にとどまっているケース
2  腫瘍の皮下組織部分は切除せず、手術部がなるべく通常の皮膚と近い色、質感になることを目指して処置するケース


ということになります。



ただ、②の場合、医師の力量が整容的結果にかなり影響します。

 

また実は、「傷跡がない=整容的に優れている」ではありません。

傷跡ではない色がついた正常皮膚と白い傷跡を比較した場合、どちらを綺麗と感じるかは人によって違うと思います。

 

このあたりが、ほくろ治療の難しいところです。

 


話が長くなってきたので、続きは次回にしますね。

次回は、

結局、ほくろは誰に、どうやってとってもらえばいいの?

についてお話しします。

お付き合いいただけると、嬉しいですおねがい