こんばんは。
形成外科指導医、専門医の今西です。
今回は個人的なお話しをさせて下さい。
昨日とても嬉しいことがありました
以前に手術を担当させていただいた方から、お手紙をいただきました
数えてみると、今までに12通もいただいていました
ありがとうございます
お手紙をいただく機会はわりとありますが、やはりこの方に一番多くいただいています。
みなさまからいただいたお手紙は全て大事に保管してあります
お手紙をいただけるということは、基本的には、結果にご満足いただいているということなので、私としても嬉しい限りです
ただ、この方の場合はちょっと事情が違います。
この方は、耳が取れかかってしまうぐらいの大怪我をされました。
そのままでは耳が欠損する可能性があったため、緊急で手術をしました。
術後2年
手術は成功し、ある程度耳の形態を保つことができました。
しかし、大きな問題が残りました。
外傷性の神経障害性疼痛になってしまったのです。
神経障害性疼痛は、神経、脊髄、または脳の損傷や機能障害によって起こる痛みです。
外傷、帯状疱疹、腫瘍による神経の圧迫等、神経系に影響を与え得ることなら、あらゆることが原因となります。
症状としては、灼熱痛、知覚過敏、電撃痛、しびれなど多岐にわたります。
またこの症状が、慢性的に続きます。
想像するだけで辛そうですよね。
実際、この疾患に罹患された方のQOLは著しく下がります。
さらにやっかいなことに、神経障害性疼痛の治療で、「これをやれば十分痛みをコントロールできる」という治療はまだありません。
薬剤投与、理学療法、神経ブロックなどを複合的に行います(麻酔科の先生にお願いします)が、完全に痛みをコントロールすることは難しいです。
今回の方以外にも、神経障害性疼痛を発症している方を複数人担当していたので、
神経障害性疼痛をどうにかできないか
という思いは徐々に強くなっていきました。
そんな中、ある基礎系論文を読んでいる際、
脂肪幹細胞移植により、神経障害性疼痛が改善する
というアイディアを思いつきました。
また以前に、脂肪と脂肪幹細胞移植による乳房再建に関わらせていただく機会があったので、とっつきやすい分野でもありました。
そのアイディアを検証するために、基礎実験をすることにしました。
科研費を獲得し、基礎実験をした結果、動物実験においては、脂肪幹細胞移植により神経障害性疼痛が改善するという結果を得ました。
ただし、これはあくまで動物実験での結果なので、人間にも同様の効果があるかはわかりません。
この方に脂肪幹細胞移植による治療をおこなうことはなかったため、神経障害性疼痛を完全にコントロールすることはできなかったのですが、気持ちの籠ったお手紙をいただき続けています。
美容外科、形成外科をしていると、こういった機会に恵まれることが多いので、本当に素晴らしい職業だなと感じています
この方の受傷時の状態や手術の写真を掲載してみたのですが、うまく表示されません
刺激が強すぎる写真と判断されているのかもしれません。
原因がわかり次第、再度掲載致します。