こんにちは。
形成外科指導医、専門医の今西です。

本日は腱膜性眼瞼下垂を発症している方に対し、片側のみ手術する場合の私の考えをお話しします。

「眼瞼下垂って何?」という方もいらっしゃると思いますが、某検索エンジンでいくらでも詳しい解説が出てくるので割愛致します(決して手抜きではありません💦)。



患者様をご紹介致します。
 

右まぶたが次第にさがってきたという主訴でご来院されました。
ハードコンタクトを長期間使用されているとのことです。


右側のみ挙筋腱膜前転術を行いました。

手術方法
部分切開法 
皮膚切除 なし
眼窩脂肪切除 なし
ROOF切除 なし
内角 処理なし
外角 筋腱移行部まで切離
ミュラー筋と挙筋腱膜の間の剥離なし


術前





術直後

この方は比較的腫れが少ないです。

 

 

 

術後10日



 

 

 

 

術後4カ月




 

最終的にへリングの法則による左眼瞼下垂の悪化を認めず、ホッと胸を撫でおろしました照れ

「ちょっと待って!へリングの法則ってなに?」という声が聞こえるのでご説明します。

へリングの法則とは、
「片眼だけに眼瞼下垂症手術を行うと、反対側の目の開きが悪くなる現象」
のことです。

なぜこのようなことが起こるのでしょう。

これは、まぶたをあけるという行為に複数の筋肉が関与していることが要因です。

眼瞼挙筋とミュラー筋というまぶたをあけるための筋肉はそれぞれ別の神経で支配されており、複雑なネットワークを形成しています。そのため、眼瞼挙筋とミュラー筋を使用した開瞼を、片眼だけで行うことは難しいです。
そういった理由から、片眼のみ重度の眼瞼下垂になっている方は、反対側のまぶたもがんばって目を開く指令を受けていることになります。
その状態で、手術により片眼の眼瞼下垂が改善すると、目を開けようとする指令が脳から出なくなり、反対側のまぶたもその影響を受けて、手術の前よりまぶたの開きが悪くなるのです。
 

今回の患者様では、このへリングの法則が起きる可能性がありました。

 

へリングの法則が一定の確率で起こる以上、その変化を見越して左右同時に手術を行うことは合理的と言えます。

ただ「なるべく小さく、なるべく短く」をご希望される患者様もたくさんいらっしゃいます。

この方もできるだけ低侵襲で、ダウンタイムの短い治療をご希望されました。

 

私は患者様のご希望に最大限お応えしたいと考えていますので、今回のようなご希望がある場合は、「へリングの法則が起きるかどうか」を見極める必要が出てきます。
 
とは言え、なかなか簡単ではありません。

利き目
眼瞼挙筋の機能
眉毛挙上の程度
会話中の表情筋の動き
生活歴
シミュレーション
 

などを総合して判断しています。



次回は、眼瞼下垂症手術をする際の、

 

まぶたの開きをじゃまする組織

 

に関しての私の考えをお話します。

 

お付き合いいただけると、嬉しいですおねがい

 

 

 

術式:眼瞼下垂症手術(挙筋前転術)
リスク:腫れ、痛み、出血、感染、左右差、低過矯正、ドライアイ、眼瞼痙攣等