「世界は今日から君のもの」には少しですがCGが使われています。脚本の段階からすでに「ここはCGが必要」という部分がいくつかありました。プロデューサーに「予算的に無理!」とか言われないかと心配しましたが、そんなことはなく、CGチームに依頼することになりました。CGにかかる予算は昔に比べるとずいぶん安くなり、規模の小さい映画でも予算なりのCGは出来るようになったのです。
 「明らかにCGが必要」というのとは別に、「出来ればCGで……」というところもありました。冒頭に出て来るクラゲです(なんでこの映画にクラゲが登場するのかは映画を見ていただくとして)。
 海にロケに行ったとき、うまい具合に岸壁の近くにクラゲがいればそれを撮影すればいいのですが、そんなに都合よくいるとは思えません。実際、岸壁でのロケの日、一応海面をしばらく見ていましたが、「います?」「いませんね……」という会話が交わされ、クラゲはCG、ということが決定しました。
 撮影のときはクラゲがいるつもりで海面だけを撮影して、後日CGの担当の人にCGクラゲを入れてもらいます。結果として、満足の行く映像になりました。



CGクラゲ(画面からキャプチャー)


 監督一作目の「ランデブー!」にはゴキブリが出て来るシーンがありました。しかもただ「いればいいと」いうのではなく、こちらの注文通りの動きをしてもらう必要がありました。しかしこのとき「ゴキブリはCGでやりましょう」と言った関係者は一人もいませんでした。それくらい当時(7年前)はお金のかかることだったのでしょう。で、どうしたかと言うと、助監督さんが殺虫剤のメーカーに行って、研究用のゴキブリをたくさんもらって来てくれました。彼は撮影のときにはすっかりゴキブリと仲良くなっていました。

 今回、映画完成後にCGをちょっと手直ししたのですが、このとき僕は別のシーンで気になっていたところがありました。小さい人形にモデルガンから発射されたBB弾が当たって落ちるカットで、撮影のときは実際にBB弾で撃ったのですが、思った程は勢いよく落ちなかったのです。打ち合わせで「あのー、実は別のところで気になってるところがあって……これってCGで何とかなります?」とダメ元で言ってみました。すると「やってみましょう」という答え。そして……出来たものを見ると、見事に弾かれたように落ちていました。「CGって素晴らしい……」と思った瞬間でした。

 


CGで飛んだ!(画面からキャプチャー)


 こういうことは僕が新米監督だから驚いているのであって、いつもやっている人にとっては「普通ですけど何か?」とうことなのかもしれません。

 

クラゲ待ち?

 

[尾崎将也ブログ「カントクのお仕事」 2107年6月1日]

 

 

「世界は今日から君のもの」

監督・脚本:尾崎将也

音楽・川井憲次 主題歌・藤原さくら「1995」
出演:門脇麦 三浦貴大 比留川游 マキタスポーツ YOUほか

上映時間:106分
配給:アークエンタテインメント

7月15日(土)から渋谷シネパレスほかで全国公開

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予告編