凪小説
「余白の海で会った人」
第1章
すでに持っているもの
まさは海を見ていた。
朝の海だった。
風はほとんどない。
水面は静かで、光だけがゆっくり揺れていた。
まさはヒーラーだった。
でも今日は、何もしていない。
ただ座っていた。
そのときだった。
ふわっと、
どこか甘い香りがした。
振り向くと、
そこに一人の女性が立っていた。
白い服。
風もないのに、髪がゆっくり動いている。
年齢は分からない。
でも、27歳くらいに見える。
彼女は言った。
「あなた、探してるね」
まさは少し笑った。
「まあね」
女性は隣に座った。
「でもね」
彼女は海を見ながら言った。
「人って、
ほとんどの場合
もう持ってるんだよ」
まさは黙って聞いていた。
「幸せも
自由も
答えも」
「全部、もうある」
「ただ」
彼女は少しだけ笑った。
「社会が作った考え方で
見えなくなってるだけ」
波が小さく揺れた。
「だからね」
「何かを手に入れる必要はないの」
「思い出すだけ」
まさは言った。
「君の名前は?」
女性は少し考えて言った。
「ナギ」
「凪って書くの」
まさは笑った。
「なるほどね」
ナギは言った。
「静かな場所だと
人は思い出しやすいから」
まさは海を見た。
何も起きていない。
でも、
すべてがそこにあった。
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