何もない宇宙 | しろグ

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このところ星を観ることがない。
東京に住むようになってからだ、というのではなく、鳥取国にいた時代でも年齢を経るに従い、頭が重くなったように地面のほうばかり見ているようである。

雨上がりの夜に人里離れたド田舎の高台で夜空を眺めると、それこそ“星降る”という感覚が実感出来る。夏の夜空だと、午後9時くらいの天頂には夏の大三角形があり、その後ろ側には天の川がある。天の川を南に流れるように下ればさそり座、いて座というおなじみの星座が現れるが、その辺りが北半球で見られる最も星の賑やかな場所である。

何しろ銀河系の中心方向である。星がひしめき、様々な星雲が重なり合うように場所を占め、肩が触れそうなぐらいだ。きっと混雑していて、お互いにやり切れないに違いない……と思うのだが、それはどうも違いらしい。恒星と恒星の間に広がる空間というのは異様に広大で、銀河系での平均密度は《“太平洋にすいかが3つ”ちらばる程度》と書いてある本を読んだことがある。密集地での星の重なり合いがこの1,000倍だとしても、“太平洋にすいかが3,000個”なのだから、肩が触れるどころではないはずだ。

ところで、宇宙の大きさを考えると、いくら星が数千億個もある銀河が、これまた何十億個も何百億個と群をなしていても、どうやら宇宙はほとんど空っぽと考えても差し支えないようである。部屋に積んである本をめくっていたところ、こんなものがあった。

【見える範囲の宇宙にあるのは】 ※いろいろな体積の単位で表した宇宙の物質密度

1立方メートルあたり原子1個
1辺が10光年の立方体に地球が1個
1辺が1,000光年の立方体に恒星が1個
1辺が1,000万光年の立方体に銀河が1個
1辺が100億光年の立方体に宇宙が1個 だけ

一番上の原子の密度をみてみても、地球の最高の実験室で作る真空はその1兆倍ほどの原子を含み、我々が吸っている空気にはそのまた10兆倍の原子が含まれている、というのだから、宇宙は想像を絶する密度の薄さであり、いっそナシと言ってくれたほうがすっきりするのだが、それだと宇宙そのものがなくなってしまい、本当にすっきりしてしまう可能性が高い……

上の物質密度のリストは、『宇宙の定数』(J.D. バロウ著/松浦俊輔訳/青土社)の中に出てくるもので、こういう注釈がつけられている。

『銀河、恒星、惑星、原子が、平均すると実はどれほどまばらかということが分かる。地球外生命がほとんど見つからないとしても、驚くことはない』

なるほど……



$Landscape and portrait ver. 2
※超深宇宙領域(ハッブル・ウルトラ・ディープフィールド)の画像~
1万個以上の誕生後4、5億年の銀河が映し出されている。通常の渦巻銀河や楕円銀河に混じって様々な奇妙な形の銀河が映し出されているが、これらは宇宙初期の混沌とした状態の中で、銀河同士が影響しあっていた状態を映しだしていると考えられている。