シリウス | しろグ

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冬の星座「おおいぬ座」のα星。地球からの距離は8.6光年というからご近所さんである。

アニメ映画『風の谷のナウシカ』の終盤で、ナウシカが「シリウスに向かって飛べ!」と叫ぶシーンがあるが、そのシリウスである。未来の世界は「13日間戦争」やら何やらで散々な目に遭っているが、星空は不変だったらしい。星好きとしてはありがたいことだが、ナウシカの世界に住んでいる人々にはそれどころではなかっただろう。何しろオウムの大群が大地をめくり返すような勢いで迫っていたのである……

そのシリウスだが、明るさは-1.47等星なので、太陽を除いた恒星では全天で最も明るい。ただし、絶対等級は1.47なので、星としては中肉中背。質量は太陽の2.14倍なので、もし太陽系の地球の位置にシリウスがいたら太陽系は今の様子とは全く違っていたはずである。表面温度が約10,000℃ということだけでも尋常ではない。

Landscape and portrait ver. 2

今日仕事帰りに三鷹台の駅から帰る道すがら空を見上げると、シリウスが見えた。明るさがマイナス等級とはいっても、東京の夜空である。2等星ぐらいに見えて、どうもさびしい。シリウスと、オリオン座の一等星ベテルギウス、こいぬ座の一等星プロキオンで「冬の大三角形」が見えたり、おうし座の一等星アルデバランと、その背後に広がるヒヤデス星団、更にその上にあるプレアデス星団……かの有名な「すばる」が見えたりするはずなのだが、霧がかかったように、はっきりしない。

もともと冬の夜空は、銀河系の外側を見ているような感じなので、銀河系の中心方向がある射手座が出ない夏に比べて閑静である。もともと地球を含む太陽系は、オリオン腕またはオリオン渦状腕という、閑静な場所どころか、遥かな田舎にある。東京が銀河系の中心で、関東平野が銀河系の巨大なディスクであるとすれば、オリオン腕は鳥取国のようなもの。海岸に立って海を眺めた先は別の国、という感じである。

さて、シリウスには、伴星がある。前回の記事で『死兆星』のことを書いたが、このシリウスの伴星は肉眼どころか小さな望遠鏡でさえも見ることは出来ない。シリウスBというどうでもいいような名前で呼ばれているこの星は、上記の画像の左下に小さく写っている。この星は最初に発見された白色矮星で、我らが太陽の行く末である。主星シリウスの周りを50年かけて一周する。シリウスの軌道の揺らぎより存在が予言され、1862年に見つけられた。

ちなみにシリウスの末路は恐らく白色矮星かと思われるが、超新星爆発を起こすことはないらしいので、お隣さんの太陽系に迷惑が及ぶことはないとのこと。もし超新星爆発なんかを起こされたら、隣の家のガス爆発どころの話ではなく、石油コンビナートのタンクが同時に全部爆発するようなものだろうから、大変な迷惑である。

超新星爆発が発生すると強烈なガンマ線が周囲に一斉に放たれるのだが、このガンマ線の威力は想像を絶するもので、爆発を起こした恒星から半径5光年以内の惑星に住む生命体は絶滅し、25光年以内の惑星に住む生命体は半数が死に、50光年以内の惑星に住む生命体は壊滅的な打撃を受けるとされている。こんな星が近くにないことが、太陽系……そして地球にとっても幸いである。。。

今の時期、夜8時くらいにほんの気持ちだけ南東に顔を向けて見上げると、輝いている。古代から、方角を教えてくれたり、大洪水の時期を知らせてくれた、頼りの星である。その風格あふれる姿も、都会の大地の底にあってはいささか弱々しい。