本日は『日本製鉄の転生 巨艦はいかに蘇ったか』著者は日経ビジネス副編集長、上阪欣史さんの本をご紹介していきたいと思います。この本は非常に面白い本でした、読んだ感想として、日本企業のイメージは保守的、変われない日本企業、大企業であるが故にスピード感がない、決断が遅い、そういったイメージを持たれている企業が復活するための鍵がこの本に詰まっていると感じました。この物語の主役となる橋本社長の守りの改革から攻めの改革、様々な改革をこの本で知ることができます。また、リーダーシップ、経営とはいかなるものなのか、橋本社長の考え方、それに答えた多くの従業員たちの活躍も知ることができます。

 

 直近の業績の推移ですが、青い線が純利益、20年3月期、歴代最大の最終赤字約4300億円もの大赤字を出しました。そこから2年で見事なV字回復を果たしました。売上高も大幅に伸ばしつつ、10%程度の利益率を確保できるようになりました。そこには抜本的と言える大きな改革がありました。そんな日本製鉄ですが、昨年2023年の12月に世界を揺らす発表、USスチールの買収を発表しました。そこにはどのような流れがあったのか、そもそもなぜ日本鉄はV字回復することができたのか、また各方面のプロフェッショナルが活躍している姿が本書で見ることができます。

 

 

USスチール買収

 まず、今回のUSスチール買収を見ていく前に、日本製鉄のグローバル化の歴史について、本書では3段階あったあります。グローバル1.0時代、これは米国への輸出拡大を皮切りに、売込先を中国、アジアにも拡大したという80年代頃までの姿を表しいます。グローバル2.0時代、これは90年代から2010年代を指します。上工程は日本で製造、下工程はグローバルの現地で行う体制です。ここから今進んでいるのがグローバル3.0、上工程から下工程まで垂直統合で海外に根を下ろす形態に変わってきています。

 

 なぜ海外で全ての工程ができる体制にしていってるのか、これは国内の需要が縮小してきているもあり、世界的な流れとして自国生産でする流れになっています。グローバル化と言われて久しいですが、この最近のこういう流れは国内回帰、国内の産業保護、輸入には高い関税をかける、昔は鉄は国家なりと鉄の生産をできることこそが重要である言葉がありましたが、その時代が再来してきてと本書では言われています。本書の中にあった言葉で「鉄鉱は巨大なローカル産業である」、基本自国で生産するのが基本、それが国力なんだ、そういう時代に戻ってきているといえます。そういった世界的な流れを踏まえて、日本製鉄は海外で垂直統合、上工程から下工程までできる体制を作っているわけです。

 

 近年、世界各地でそうした一貫生産ができる体制を各国で進めています。特に、大きな買収だったのがアルセロール・ミタルという欧州の大手企業と組んでインドの大手鉄鋼会社を買収したものです。これは規模が大きかっただけじゃなく、進め方や決定までのスピード感も、それまでの保守的な進め方とは全く違う異例づくめの買収で、巨大企業が非常に軽やかな形に生まれ変わったことが感じられるようなエピソードだったと思います。橋本社長がスピードを再優先するウルトラCを繰り出したエピソードもありました。そしてカルバートの製鉄所もアルセロール・ミタルとの合弁会社、こちらも垂直統合で競争力の高い生産ができるようですが、アメリカもインドと同様に自国生産保護という方向に突き進んでいるので、こうして進出しているわけです。

 

 

 そしてさらなる大型投資として、2023年12月、世界を揺るがす発表としてUSスチール、約2兆円で買収するという発表がありました。この買収価格は40%ぐらいプレミアムが上乗せされ高すぎるんじゃないかと言われていますが、その結果、日本製鉄史上最高額の買収額となっています。

 

 そもそもUSスチールという企業は、1901年創業の名門企業で、1901年は奇しくも旧官営八幡製鉄所が創業を始めた年と同じ、アメリカでも歴史の深い企業です。米国内でも生産量は第3位、かつては首位だった時代もある、とアメリカの自動車産業の歴史を支えてきた企業と言われています。そんな企業が2023年8月に株式の売却先を探すと表明していた前提がありますが、全米鉄鋼労働組合が買収に反対表明、バイデン氏も反対を支持、トランプも当然反対の指示をしています。この買収は双方にメリットがあると主張していますが、アメリカから見れば歴史の深い企業が買収されてしまう、という感情的な理由が多いのではないでしょうか。この買収が無事に成功するかどうかは、今年非常に注目すべきことになると思います。

 

 そして、グローバルで生産能力の拡大を目指す、グローバルネットワークを強化していくというビジョンがあり、現状の生産能力が6600万トン、今回の買収が成功すればUSスチールの2000万トンがプラスされ、1億トンというビジョンがかなり射程範囲に入ってきます。

 

 そしてホームページからの資料の引用ですが、需要の伸びが確実に期待できる地域、当社の技術力・商品力を生かせる分野にアメリカカはぴったり当てはまるわけです。人口も当然伸び、経済規模拡大し、日本より成長率は高い、そして日本製鉄は世界の中でも技術力が特に強みであるんで、高付加価値の高級鋼材の需要がアメリカ市場ではあるので、そこも戦略として一貫している行動になるわけです。この買収が実現すれば「グローバルネットワークを完成させ強い日本を取り戻す」と、買収発表会見で橋本社長が語っていたように日本製鉄は躍進していくと感じられます。

https://www.nipponsteel.com/factbook/doc/07/global.pdf

 

また明日も紹介しますので、良かったらチェックしてみて下さい。

 

 

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