創業者ビル・ファン 今回紹介するのは「アルケゴス問題」これはとある企業で起きた問題で、この企業の名前は「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」。アルケゴスはファンドではなくファミリーオフィス。そもそもファンドは複数の投資家からお金を集めて投資を行ってリターンを分配する仕組だが、一方でファミリーオフィスは資産がある一族を対象に投資管理や資産運用を行う。有形資産の管理だけじゃなく、税金や法律問題の対応、親族間の人間関係など色々行う。一般的に資産100億円以上の一族とかが行っている。

 

 アルケゴスを立ち上げたのはビル・ファン。韓国生まれ。父親は牧師でキリスト教の家庭に生まれる。高校3年の時にアメリカに移住、カリフォルニア大学を卒業して名門カーネギーメロン大学でMBAを取得。90年に現代証券ニューヨーク支店に入社して金融界に足を踏み入れる。その後、香港の証券会社のアメリカ法人で株式ブローカーを経て、96年タイガー・ファンドに入社。

 

 タイガーファンドはジュリアン・ロバートソンという人物が80年に立ち上げたファンドで、当初の運用資産は880万ドル程度。90年代後半には220億ドル、平均32%のリターンを上げている。ファンはこのロバートソンに憧れて入社した。ここでファンはロバートソンに韓国株の購入を進めた。しかし大きな損失を出して2000年にファンドを解散した。

 

 

 翌年、自らタイガー・アジア・マネージメントを設立。設立にロバートソンが支援して1億ドルの資金でスタート。ファンはベンチャー企業の株を借入れで大量購入して資産をどんどんと増やし、年間40~80%の利益を上げてた。ちなみに彼は慈善活動に熱心で母親と一緒に支援したプロジェクトがあったり、社会貢献の重要性を語ってた。しかし、そんな彼もリーマンショックの前には為す術もなかった。

 

 資産を40%失い、さらに問題が発生。2008年~2009年にかけて機密情報を元に中国銀行と中国建設銀行の株を売って利益を得た、インサイダー取引の容疑がかけられた。結局、2012年にSECと4400万ドルの罰金を支払うことに合意。さらにブローカー・ディーラー・投資アドバイザー・証券ディーラーなどの仕事につくことが生涯禁止となった。一応5年で最審査の権利がある。

 

 この頃からキリスト教への信仰が深くなり、彼は翌年再出発をすることに。SECの処分に違反しないように始めたのがファミリーオフィス、自分の家族の資産を管理する会社を設立した。この企業の名前がアルケゴス・キャピタル・マネジメント。このアルケゴスの資産はどんどんと大きくなっていき、2020年には100億ドル、約1.05兆円になった。この投資の天才がとんでもないことをやらかした。

 

 

投資手法 実はファンの投資の手法はリスクがものすごい高かった。投資先は少数の銘柄に集中させるスタイル、銘柄が高騰しても利益を確定せずに買い続けていたという話も聞く。当初は地元のアジア市場で取引、経営幹部などから情報を聞き出して集めていた。あとこれはヘッジファンド時代の話だが、いろんな情報を集めても知られないように会合には出席しない。

 

 一方でファンは身内にも情報を明かさなく、チーム内では疑問視していた声があった。専門のアナリストがいても、結局ファン自身が最終判断を下す形だった。2008年に自動車の株で大きな損失を出したがファンは動じなかったらしい。それでアルケゴスはどんどん成長していくが、2015年ぐらいに問題が発生。規模が大きくなりすぎてアジア株だけでは運用が難しくなった。

 

 ファンはアメリカ株にも手を出すことを決意。アルケゴスはプライムブローカー、ファンドマネージャーから依頼を受けて証券の取引を行ったり、決済や融資、有価証券の貸し付けとかを行うサービスを利用し始めた。つまり、証券会社のサービスを受けられる。銀行や証券会社などの金融機関からこのサービスを受けたがトータル・リターン・スワップというサービスで問題になった。このサービスを一言で言うと株を持ってなくても株式を持つのと同じ効果を受けられる。

 

 

 投資家などが金融機関とこの契約を結んで、金融機関はその契約に従って株を購入する。そうすると金融機関が株主になるが、この株式の値段が上下して発生する損益は全て投資家が追うことになる。投資家は実質的には株を持ってるのと変わらないし、このサービスを受けるのに手数料を払い、さらに担保も要求される。

 

 そんなことをするのはいくつか理由があり、色々と組み合わせればリスクヘッジができる。あとは投資家側は自分のバランスシート上優価証券を載せなくていいし、大量保有報告書の対象にもならない。つまり存在を隠せる。そもそも株式の保有がないため把握が難しく、アメリカの当局や金融機関も正確に把握してなかった。

 

 もう1つ問題になったのがファミリーオフィス。一族の資産を長期に渡って運用して維持するというのが基本だったファミリーオフィスは近年変わってきてる。それまでヘッジファンドがハイリスク・ハリターン好きだったが、金融危機などの影響で規制が強化された。一定規模以上のヘッジファンドはSECへの登録が義務付けられ、取引記録の保存も必要になった。

 

 一方でファミリーオフィスは一定の条件であればそういうのがなかった。つまり抜け穴になってた。それでハイリスクを好む人たちが次々にファミリーオフィスを立ち上げた。結果、世界の資産規模でヘッジファンドが3.6兆ドルに対して、ファミリーオフィスは5.9兆ドルと言われている。アルケゴスはこういうリスクを好んだファミリーオフィスの1つだった。こんなに資産を持っているのに多くの人には知られていない存在だった。

 

また明日も紹介しますので、良かったらチェックしてみて下さい。

 

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