今回紹介する映画は『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』ドラえもん映画の最新作。藤子・F・不二雄先生原作の国民的アニメ『ドラえもん』の劇場版第43弾で、リコーダーの練習中に不思議な少女ミッカと出会ったのび太たちは、音楽の達人”ヴィルトゥオーゾ”として”ファーレの殿堂”を復活させるため奮闘する話。監督は『宝島』『新恐竜』などを手掛けた今井一暁。

 

 今年は音楽が題材のオリジナル作品、藤子・F・不二雄先生の生誕90周年記念作品でもあり、いつもより少し気合が入っている感じもあります。監督の今井先生は40作目の新恐竜もやっており、今回は過去2作とは違い川村先生が脚本ではありません。この辺もどうなるのか気になるところですが、良いところと悪いところがはっきり分かれてて、部分的に見ればドラえもん映画の中でも一番好きなところもありますが、同時に作りが荒いところもあって手放しには褒められない感じです。

 

 まず良いところは、本作のテーマである音楽はすごく良かった。冒頭の白鳥から始まる音楽の歴史をたどる壮大なオープニングはすごく印象に残ってますし、音だけではなくアニメーションとしても楽しいのび太たちの演奏シーンやファーレの殿堂に入ったシーンでのいろんな音が出るアスレチックのような場所とか、音楽の楽しさが詰まったシーンがたくさんあります。音楽を使ったバトルも斬新で面白かったところです。

 

 あとは何と言ってもクライマックスの盛り上がりが素晴らしい、本作の悪役である”ノイズ”をのび太たち全員の演奏で倒すという展開ですが、1度敗北寸前まで行くところの無音の絶望感がすごく、音楽がテーマの作品ならではの恐怖の出し方が見事ですし、そんな絶望からの大逆転、”ノイズ”がどれだけ音楽を消そうとしても世界には音が溢れていて、どんな小さなもので人が音を楽しむことは止められない、音楽は人間にとって決して消すことはできない大事なものであることを示す展開、とてつもなく熱い展開でした。

 

 しかもこの終盤の演奏であの曲が少しだけ使われてて、最近のコナンもそうですが、ここぞというタイミングで使われるメインテーマは最高に盛り上がりますので、見事なサプライズだったと思います。個人的にはこの終盤の盛り上がりは、ここ数年のドラえもん映画でもぶっちぎりでベストです。

 

 ですが、この最高のクライマックスに行くまでが残念。ここから悪いところですが、とにかくく終盤に行くまでが退屈、脚本に無駄が多すぎてテンポも悪い、物語上やりたいことは分かりますが、そのやりたいことをストーリーの中に無理なく綺麗に収めきれてなく、強引だったり、ご都合的にに見える場面が目立つ作品になってます。

 

 例えば序盤、ファーレの殿堂に行くまでも地味に長く、みんなで演奏した後に一旦帰り、手紙で呼び出してましたが、そんな回り道しないでその場で連れていけばいいと思いますし、殿堂についてからは演奏シーン、楽しいシーンはありますが、しばらく殿堂やミッカたちの説明がひたすら続くので退屈な時間が多い。活躍するわけでもないロボットたちの紹介とかいいからテポよく進んでいればだいぶ違ったと思います。

 

 これ以上に気になるのが、ストーリーを進めるために無理やり足したようなシーンが結構あること。一番分かりやすいところだと”ミーナ”という歌手がいますが、このキャラは途中まではたまに名前が出たる程度のモブキャラですが、いきなりある重要なアイテムを入手するためのキーパーソンになります。ムシーカ人の血筋が人類に受け継がれてるというのをやりたかったのは分かりますが、全く存在感なかったキャラにそれをやらせるのはどうかと思います。せめて中盤までにどこかしらでミッカと絡ませるとかしないとダメだと思います。しかも、そこそこ時間かけて彼女の元にたどり着いた割に、やったことは笛1個渡しただけで、しかもその笛は劇中ででほとんど役に立たないのは呆れました。

 

 重要アイテムではありますが、やったのは殿堂を中途半端に復活させた程度で、結局決めてとなったのは伸びたの”の”の音、ずっとバカにされてきた”の”の音を活かしたかったのも分かりますが、強引な上せっかく手に入れてきた笛の活躍を奪っちゃってる。ミーナにしても、笛にしても描写の重さに対して扱いが軽すぎる。

 

 1番酷いと思ったのがクイマックスで活躍する”時空間チェンジャー”という秘密道具で、これがいきなり出てきて問題が解決したらただのご都合展開ですが、使ったのはのび太がリコーダー忘れたから取りに戻るのに使ったってだけで、この忘れたから取りに戻るという件、丸々必要ない、時空間チェンジャーをあらかじめ使っておくためだけにある回り道。ご都合展開にならない言い訳のためだけに入れてるシーンだったと思われてもしょうがない。無理やり辻妻を合わせたような強引な脚本というのが目立ちます。

 

 やりたいことは分かりますし、テーマ性やメッセージ性、作品の方向性自体はすごくいいと思いますが、それを一本の物語としてまとめ上げる脚本の力量が足りなかったという印象です。音楽映画として音楽の楽しさが詰まってていいですし、終盤は本当に盛り上がる作品ですが、テンポの悪さ、無理やり辻妻を合わせたようなびな脚本が気になってしまう作品です。無駄なところを削って綺麗にまとめ上げられていればシリーズ屈指の傑作になれた気がするのでもったいない作品だったと思います。とはいえ子供たちが音楽の楽しさを知る作品としてはいいかなと思います。興味のある方は是非ご覧ください。

 

 

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