今回紹介する映画は『名探偵ピカチュウ』人気ゲームの実写化、ポケモンゲームの一つ『名探偵ピカチュウ』をハリウッドで実写映画化した作品で、人間とポケモンが共存する街・ライムシティに行ってきた青年ティムが、人間の言葉を話す謎のピカチュウと共に父親の死の真相を探っていく物語。監督は『モンスターvsエイリアン』『ガリバー旅行記』などのロブ・レターマン、ピカチュウの声を演じるのは『デッドプール』でおなじみのライアン・レイノルズ。

 

 

 これはかなり話題になった作品、まさかのポケモンのハリウッド実写化、最初にこの映画の企画を聞いた時は耳を疑いました。ただでさえ日本の作品の実写化はハリウッドでさえ外しまくり、日本作品の映画化をいくつかやってきたレジェンダリピッチャーズ製作とはいえ大丈夫か?という思いの方が強かった。

 

 実際に見た感想は、決して絶賛できる映画ではないけど個人的にはかなり満足できた作品だった。少なくとも、ポケモンを実写化するという難題をしっかりクリアした作品だったと思う。日本アニメの可愛らしいデザインをしっかり残しつつ、実写的なリアル感をほどよいバランスで組み合わせたデザインだった。特にポケモンたちも肌の質感、ピカチュウのふわふわした毛とかちょうど良いし、リザードンとかの爬虫類的な質感とかも程よいリアル感があってよかった。若干ぬいぐるみっぽく感じることもあったけど、そんなに違和感はなかった。ピカチュウの瞳と表情の豊かさがより可愛さを引き立てていて、みんなが知ってるアニメのピカチュウとはまた違った表情も多いし、中身がおっさんというギャップがまたいい。

 

 やっぱり一番良かったのはライム・シティの見せ方。しっかり人間とポケモンが共存している街というのを細かいところまで映像的に見せてくれるのが本当に素晴らしい。道を歩いてる人はみんな隣にポケモンを連れてるし、人間とポケモンが一緒に仕事をしているところもたくさん見せてくれる。ポケモンが存在する世界を、しっかり説得力を持たせているのが本当に見事。この世界観に気を抜いたらたちまち崩れる作品だし、その点をしっかり作りこんでるのが素晴らしいところ。

 

 それにポケモンを実写化する上で「ファンならこれはみたい」ところもしっかり押さえてる。ポケモンたちの派手な技もしっかり再現してくれてるし、ちゃんと進化も見せてくれる。ピカチュウのボルテッカーを見せてくれたのはすごったし、ピカチュウ最強の技って言ったらやっぱりこれ。アニメのピカチュウはもう使わなくなっちて残念だったんだけど、実写で最高のボルテッカーを見れるとは。使うと反動でダメージを受けるところも再現してくれてた。

 

 でもポケモンバトルのシーンはちょっと少ない気がしたけど、ポケモンは動物同士を戦わせるという動物虐待を思わせる危ういラインの作品で、アニメやゲームではデフォルメさせてるから気にしない人も多いと思うけど、実写にするとより生々しく見えちゃう可能性が高い。舞台となるライム・シティがポケモンバトルを禁止されてるし、地下闘技場的なところで違法なポケモンバトルが行われてるという描写も配慮した結果なんだと思う。本作は今までは触れられなかったポケモンのグレーゾーンにも踏み込んで来てるところは面白いところ。

 

 何よりこの作品の一番好きなところは、制作者たちのポケモンへの愛がものすごく詰まってる所。ポケモンファンでも知らなそうなポケモンの裏設定もガンガン取り入れてきてる。例えば、ポケモン図鑑を読み込んでる人でもない限り知らなそうな設定であるカラカラの頭の骨が母親の骨とか。端にネタとして使っいるだけじゃなく、主人公ティムがまだ母親の死を引きずってることと微妙にリンクさせているのも面白い。

 

 冷静に考えると母親の遺骨をずっとかぶってるってとんでもない設定で、こういうダークな設定が結構ある。都市伝説的なものもたくさんあるし、ホラー的な要素がある作品だったりもする。この作品も少しモンスターホラー映画的な演出も見られたし、「ゲッコウガ」のとことは完全に『エイリアン』だった。

 

 あと、最初のポケモン映画である『ミュウツーの逆襲』のオマージュも多かったり、何と言ってもエンドクレジットがたまらない。漫画版の『ポケットモンスターSPECIAL』風の絵もいいし、お馴染みの曲も最高。とにかく、全体を通して制作者たちのポケモンへの愛と敬意を感じた作品だった。

 

 ただ映画としては作りが甘いと感じるところは多々あった。正直、ストーリー面はちょっと微妙で、特にミステリーとしてはかなり弱い作品と言わざるを得ない。作中でティムとピカチュウのコンビが自分たちで何かの謎を解いて、事態を好転させるようなところがほぼなく、行く先々で誰かから何かしらの情報をもらって次の場所へ行く、という展開ばかり。自分たちで真相にたどり着いたというカタルシスは全くない。

 

 それに悪役の目的もフワッとしててイマイチ。そもそも「ミュウツーにそんな能力あった」という疑問もあるし、あれだけトンデモなことした割に、そこでそれを活かしたパニックが見られるわけでもないから残念ではある。何より悪役が警備がガバガバすぎてどうしようもない。

 

 あと主要キャラの使い方ももったいないところが多く、ヒロインのルーシーも全然役割がないし、せっかく渡辺謙も出してるんだから、終盤でティムと共闘する展開とかやってほしいかった。ポケモンたちを見せる方に力を入れすぎた結果なのか、人間キャラの魅力がいまいち欠けるのも確か。

 

 ポケモンは、人間とポケモンの友情の物語だから、もう少し人間キャラにも力を入れてほしかったというのが正直なところ。とはいえ、ポケモン実写化という一番のハードルはしっかり超えてくれたし、ポケモンに対する愛とリスペクトにあふれた作品なのは間違いない。ポケモンファンとしては大満足な作品だったし、日本のゲームの映画化は失敗するというジンクスを崩した歴史的作品になると思う。

 

 

 

 

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