ダイハツ工業の歴史 今回は紹介するのはダイハツ工業の調査報告書です。ダイハツ工業が設立されたのは1907年、現在、自動車を生産する国内メーカーでは最も古い歴史を持ちます。元々、大阪高等工業学校の校長らの学者たちが中心となって、大阪に発動機製造株式会社として立ち上げました。

 

 最初はガス燃料の内燃機関などを手掛け、1930年に小型3輪の自動車に参入。この3輪自動車の名前がダイハツで、語源は「大」阪の「発」動機製造から来ています。戦後にダイハツ工業と社名を変え、軽三輪のミゼットなどを販売しました。小回りが利いて取り扱いに便利かつ経済的というコンセプトで大人気で、タイや東南アジアへ輸出されました。

 

 60年代に入ると貿易・資本など自由化の動きが出て国際的な競争にさらされることになりました。自動車メーカーを強化しなければならないので、政府が音頭を取ってメーカーを再編成することになり、トヨタグループの一員になりました。ダイハツはトヨタの完全子会社になったのは2016年です。提携後は部品を共通化したり、受託生産を行い業績を伸ばしました。

 

 80年になるとミラシリーズが登場、スズキと争うことに。順調に成長していったと思いましたがバブル崩壊が起き、軽自動車市場は低迷、さらにシェアも低迷。これらで上場した49年以来初の赤字を計上しました。この赤字脱却のため利益体質の構築を再優先した経営をスタート。

 

 93年に低減価車検討委員会を設置、原価低減に向けて徹底的な見直しを図り見事V事回復に成功、ここからムーブシリーズ、タトシリーズが大ヒットし、2006年度には軽自動車の販売台数でライバルのスズキを超えました。さらに創立100周年を迎えた2007年に当時の会長が主導で事業構造改革を実施。この改革で誕生したのが第3のエコカーであるミライース。開発期間11ヶ月という異例の短期開発を実現しました。これで軽自動車市場においての地位を不動のものとし、2022年度まで販売シェアランキングでずっと首位です。さらにトヨタの完全子会社となり海外事業の生産プロジェクトも拡大、業績を伸ばしています。こんなすごい会社が市場最悪と言われるほどの大問題を起こしました。

 

不正の内容 ダイハツは2023年4月28日に開発していた車両4車種が側面衝突試験の認証試験で不正行為をしていたことを公表。認証試験とは車の申請を行う際に定められた試験方法で、基準に適合するか審査すること。5月15日に第3者委員会を設置、事件の全容解明・分析・再発防止策を調査することに。

 

 調査した結果、ダイハツのロッキーHEV、トヨタのライズHEVでもポール側面衝突試験という、側面に電柱みたいなポールをぶつける試験での不正行為が発見されたため、5月19日に出荷・販売停止して公表しました。その後調査が進み、12月20日に調査報告書が公表されました。

 

 その内容は、不正は全部で174件ありました。具体的に言うと、

  • 試験実施する際に燃料を入れるのですが、容量の90%を超えていたにも関わらず90%に近い数値に変更、数字を偽っていました。これは90%超えても問題ないんですが。
  • 試験車両の重量が法規上許容されている範囲よりも軽かったんですが、データはそのまま利用、重量は数値を変更しました。
  • 試験の時、燃料タンクに入ってる中身が燃えにくい液体(CCF)のことがありますが、実際の中身は水してました。別に水でも法規的に違反ではありませんが。なぜ水にしたかというと「他の試験では水じゃなかったので合わせました」と答えました。
  • 車両につつける固有の番号、車体番号というものがありますが、ダイハツでは開発段階の確認試作車にはつけてなく、届け出する時の確認試作者でつけていましたが、それで試験の時に、車体番号つけるの忘れた為、嘘の車体番号をつけていました。
  • 衝突後、後ろのドアを引っ張って解放しないかってテストがありますが、右側の確認を忘れてたが、左側がOKだったから合格にした。
  • フルラップ全面衝突試験というのもでは、これで頭部の数字を本来より4~5%低く出るように設定して提出しました。不正しなくても超えなかったみたいなんですが。
  • 助手席の頭部の数字に関しても立会試験のデータではなく、事前に行ってたリハーサル時のデータと差し替えて提出しました。
  • 別の試験では衝突時の速度が定められてた上限よりも超えてたので虚偽の数字を記載してました。衝突試験で速度がオーバーって不利になるから安全上問題なさそうだが、説明するのが面倒だったと、他の車種のデータを流用したケースもあったりしました。
  • ヘッドレスト衝撃試験では、助手席側の試験結果しかなく、運転手側の試験結果は助手席と大きな差がないから嘘の数字を使用しました。
  • レザー製シートでの試験結果が必要なのに、ファブリック製しかやってなかったんですが、そのままレザー性として提出しました。
  • 衝突時のお尻と座った位置がどれくらいずれるかっていうチップポイント試験では、事前の試験では法規上より1、2cm高くなって不合格でした。それで前日夜にクッションをはさみやカッターで切り取って加工し、位置を低くして収まるようにしました。逆にウレタンを敷いて高くしたりして調整することも。
  • ヘッドランプを上下に自動調整するヘッドランプレベリング試験でも、後軸重量の数字の虚偽をしたり、必要な慣らし走行をやってなくても、やったかのような数字にしたり、試験実施回数を水増しして認証申請を行いました。
  • 燃費の試験では、排出ガス分析計を取り付ける際に、排出ガスを漏らして有利にするため少しボルトを緩めました。
  • 慣らし走行を行い試験をしなきゃいけないが、直前に排出ガス浄化装置の触媒を新品に交換しました。
  • エアバックの試験で、本来の認証試験では自動で着火するようにしますが、ある車種の試験で、システムの設定が間に合わないのでタイマーで作動させて試験やっていました。

 こういう加工・調整・虚偽・操作などの不正を行っており、全部で174個見つかりました。この不正がなぜ行われていたのか、原因を解説します。

 

また明日も紹介しますので、良かったらチェックしてみて下さい。

 

 

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