今回紹介する映画は『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』人気漫画の実写化「ガンガンJOKER」で連載中の人気漫画『賭ケグルイ』の実写映画第2弾で、かつて百花王学園を追われた最強の敵、視鬼神真玄と夢子の闘いを描いた話。監督は英勉、主演は浜辺美波。

 

 今回の『賭ケグルイ』最近のギャンブルや大金を賭けたゲーム系の漫画としてはかなりのヒット作になっており、テレビアニメは2期、実写ドラマも2シーズン、原作の方もスピンオフ作品が出てかなり大きなコンテンツになりつつあります。最近そのスピンオフ品の一つである『賭ケグルイ双』もドラマ化されてました。今後もいろんな作品が続くならカイジを超えるコンテンツにもなりそうな勢いがあります。

 

 同じギャンブル漫画でもカイジとは全然違った印象の作品で、カイジは本質的なテーマは「負け組たちが人生をやり直すというもの」で、ギャンブルはあくまでその手段にすぎない。ギャンブルに関しても運否天賦に頼ると基本カイジは負ける、だから運に頼らず勝つためのロジックを積み重ね、自らの力で勝利を手にするのがカイジ。一方、夢子はギャンブルによって大きなリスクを背負うことに喜びを感じる本物のギャンブル中毒者で、ギャンブルをすること自体が目的化した人物。ギャンブルは、当たり外れで一喜一憂して楽しむ娯楽で、運否天賦に人生掛けてしまったから狂気の沙汰なわけだが、夢子はその狂気の沙汰を楽しむ狂った奴なわけです。同じギャンブル漫画のヒット作として比較してみると面白いところです。

 

 あとはキャラクターたちの表情のインパクト。ギャンブルで重要な場面で見せる狂気じみた表情、顔芸漫画としても印象も強い作品でもある。そういう意味ではオーバーな演技が多い英勉監督向きの題材です。かなり舞台的で派手な演技だから好みが分かれるかもしれませんが、そこに抵抗があって前作の映画はいまいちだった人もいるかもしれません。また、一部のキャラクターにコレジャナイ感もあり、特に高杉真宙演じる鈴井がうるさくて結構イライラしてした。良くも悪くも役者陣のオーバーな演技を楽しむ作品という印象で、そこに乗れるか乗れないかで好き嫌いが分かれそうだと思う。

 

 テレビシリーズはある程度原作通りだったから良かったが、オリジナル展開である劇場版はストーリーや肝心のギャンブルが、粗の目立つ作りになってたと思う。ちなみに、この劇場版1作目は家畜たちに焦点を当てた物語でもあって、負け組である家畜たちが団結して逆襲するという話だった。ギャンブルの展開も『カイジファイナルゲーム』と地味に似てる。一番メインとなるギャンブルの勝敗を決めるのがプレイヤーのどちらが勝つかに掛ける外野の掛け金だったが、カイジの時は外野たちが賭けたのは単に勝ち馬に乗ろうとしただけで、カイジという作品の本質的なテーマの否定、結局は金でしか人は動かないことになっていた。しかし『賭ケグルイ』では負け組である”ビレッジ”が立ち上がり、自分たちのリーダーの勝利にかけたことで状況をひっくり返した。これはある意味カイジらしくしてたところで面白かったところ。カイジっぽいところで言えば、本作でいきなり家畜たちの強制労働が描かれていたが、もう完全にカイジの地下帝国と、カイジとの比較も面白い。

 

 今回も前作と同様、映画オリジナルストーリーになってる。良くも悪くも狂った作品であり、ある意味『賭ケグルイ』らしくはある。一番の見どころはやはり役者陣のオーバーな演技、かなり大仰で具体的な演技だから好みは分かれそうではあるが、その分、役者たちも狂演を存分に観れる作品になってる。特に、本作の敵役である視鬼神を演じた藤井流星のインパクトが強かった。全身で狂気を表現している存在感はなかなかのものでした。

 

 存在感という点では池田イライザ演じる会長が素晴らしかった。実写版では本作でようやく物語に大きく絡んできてギャンブルにも参戦したが、周りのオーバーな演技と対照的な余裕を感じさせる落ち着きで、夢子最大のライバルとしての存在感が伝わってきた。あと、今までうるささが目立っていた鈴井も、ただの巻き込まれただけの人という立ち位置から一歩進んで、鈴井なりに決断する場面があったのは良かった。

 

 この実写版で一番ハマってると思う、森川を演じる早乙女は本作でも良かった。ただ映画だと毎回夢子と戦う敵のかませになってるのはかわいそうだけど。話が進むにつれ強キャラになっていくので、そこも少し見せて欲しい気はする。今回は前作よりはマシなかませ役だったが、全体的に役者陣はすごく頑張ってるけど、キャラの扱いに引っかかる部分が多いのがこの実写版。

 

 それと一番の問題は肝心のギャンブルのゲーム性の弱さ。正直なところ、本作に関してはちゃんとギャンブルをしてるか怪しいレベル。本作は3つのギャンブルが登場してるが、そのギャンブルならではの戦略性が無いに等しい。ギャンブルだからある程度ん頼りの勝負になるのは当然として、その中で少しでも有利になる戦術や敵との駆け引き、イカサマやそれをどう見破るか、そう言ったジャンブル戦ならではの面白さがほとんどない。

 

 その問題の最大の原因が敵である視鬼神の戦い方、こいつの戦い方はただの脅し「お前が勝ったらあいつの命はない」と脅して負けを認めさせる。ただ卑怯で姑息なだけで、頭が切れる、ギャンブルが強いではまったくない、めちゃくちゃ小物感がある。そういったギャンブルとは関係ない外側から攻めてくるせいで、肝心のギャンブル自体の内容はどうでもよくなってる。実際、視鬼神は普通にギャンブルしたらあっさり負けるぐらい弱いし。せっかく良い存在感を持っているのにギャンブルをしたらこんな戦い方しかできなくてガッカリ。

 

 しかも1つ目、2つ目のギャンブルは人質をとって脅してきたのに、最後のギャンブルではそれをやらない。せめて最後のギャンブルで外側の人質を救出して純粋なギャンブルに持ち込むとかならまだ分かるが、そういうのもない。で、最後に視鬼神のイカサマがしょぼいものだったりしたのも残念だった。これが最強の敵と言われるとガッカリ感すごい。

 

 前作のギャンブルもかなりご都合感が強かったが、今回はそれ以前の問題だと思う。いくら芝居だったといえ会長のあんな無様な姿は見たくなかった。会長はラスボス的な存在からら、ある程度の小物相手にああいうことはしないでほしい。せっかくの強者の風格が台無しになる。そもそも会長が家畜になる件が強引すぎるし、夢子と通じての裏工作もかなり無理がある。この辺の脚本はほんとめちゃくちゃだと思う。ただ、最後のロシアンルーレットでの命を賭けたギャンブル、それに楽しむほどの夢子と会長の狂気がちゃんと描かれてる分、まだ『賭ケグルイ』という作品の本質からは外れてないと思う。演技にしても、物語にしても、いろんな意味で狂いまくった作品、人によってかなり評価が割れると思う。興味のある方は是非ご覧ください。

 

 

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