今回紹介する映画は『映画おそ松さん』人気アニメの実写化。赤塚不二夫先生の人気漫画『おそ松くん』を原作としたテレビアニメ『おそ松さん』の実写映画化で、童貞でニートの六つ語の兄弟はある日、大企業のCEOから一人を養子に取りたいと言われ、誰がその一人になるかをめぐり戦いを繰り広げることになる話。

 

 主演はアイドルグループ”Snow Man”の6人、監督は『賭ケクルイ』『ぐらんぶる』などの英勉でございます。いい意味でも悪い意味でも注目の実写映画。人気アニメの実写化で、主演がジャニーズとなるとかなり嫌な予感のする映画ですが、原作やアニメ版がギャグ作品ですので、普通に実写化自体向いてるとは思えない作品ですし、その上、クズでで童貞というキャラクターたちを、それと対極の存在であるジャニーズに演じさせるというのは普通に考えたら完全にミスキャスティングにしか見えないです。普通に考えて地雷案件なわけですが、数々の実写化を手がけてきた英勉監督がやるなら「もしかしたら」と思ってた作品です。

 

①実写映画化が向いてないことをネタにしてくる映画 本作の元となっているのが言わずと知れた人気アニメ、ギャグ漫画の神様といわれる「赤塚不二夫」先生の代表作『おそ松くん』で、赤塚先生生誕80周年を記念して再度アニメ化されたのが『おそ松さん』という作品になります。ダメダメな六つ子たちに萌える女性が続出したそうで、社会現象レベルのヒットになったようです。

 

 アニメ自体は人気出るのも分かるぐらい普通に面白いギャグアニメですが、これを実写映画化するのは相当厳しいとは思います。特にギャグアニメは漫画やアニメならではのギャグ演出がたくさんあるし『おそ松さん』は基本1話完結の短編ですので、長編化自体難しい作品でもあると思う。『えいがのおそ松さん』もそれなりに面白い作品ではありましたが、長編映画にする難しさが見えた作品ではありました。

 

 その難易度の多い今回の実写化ですが、少なくとも今回の作り手の方々は『おそ松さん』を実写映画化する上での問題点をしっかり理解してた作品ではあります。どうあがいてもハードルを越えられないから、そのこと自体をネタにしてきたのが今回の実写化です。

 

 そもそも”Snow Man”が六つ子という設定に無理がある。髪型や服をそろえても顔は違うし、6人並ぶと身長差とかもあるので、どうしても六つ子には見えない。でも、この映画はそのこと自体をいじるネタを入れまくってくる。この六つ子に言えない問題に関して「同じ髪型で、同じ服を着てれば、同じ顔に見える」という設定なんだよ、とやけくそ気味に言い切ることで、無理ある設定を、無理あると分かった上でギャグにしてねじ込むという、とんでもない映画なわけです。

 

 長編化に向いてない問題に関しても、今回の大筋は大企業のCEOの養子の座を巡る戦いで、容姿に選ばれるためにそれぞれが勉強なり、就職なり、スポーツなりで自分を鍛えてアピールしようとするわけですが、これだけでは上映時間100分近くは持たせられないから、途中から完全に話が脱線してしまう。途中から『おそ松さん』はほぼ関係ない、完全に”Snow Man”の舞台が始まっちゃう。これも監督は完全に分かった上でやってること。ここで”Snow Man”の残りのメンバー3人が演じるオリジナルキャラ”終わらせ師”というキャラが出てきて、本来の目的を忘れて好き勝手やってる六つ子の話を無理やり終わらせて、本筋の話に戻そうとする。話がずれてる事すらもギャグにして、それを元に戻すキャラまで用意する、メチャクチャです。

 

 さらにメチャクチャになるのはここからで”終わらせ師”の行動も虚しく六つ子がメチャクチゃやるせいで結局本筋に戻れず、このカオスな茶番がいつまでたっても終わらない、話が脱線してるから戻そうとしてるのにいつまでも戻れないことすらもギャグにしてる。たぶんここに乗れるかでこの作品の評価は大きく分かれると思います。

 

 個人的には正直しんどかった。話は完全に止まって延々とギャグだけ見せられるわけですから。そういうものと分かっていても見ている間はきつい。ただこの辺に『おそ松さん』らしさ、英勉監督らしさが出てたと思います。

 

②監督の過去作のパロディが盛りまくり 『おそ松さん』といえばパロディネタが豊富な作品で、今回も色んな作品のネタが積み込まれてて、その中には監督の過去作を思い出すネタもかなり多かった。『カイジ』『ライヤーゲーム』『賭ケグルイ』『バトルロワイアル』をごちゃ混ぜにしたようなデスゲームネタとか、ベタな恋愛映画のような展開から唐突なタイムループとか、いろんなパロディがてんこ盛り。

 

 もちろんそれが面白いという意見もあるけど、結局のところ、おそ松さん達のキャラクターを生かしたパロディというより、ただの”Snow Man”が繰り広げるコント祭という風にしか感じなかった。それに『おそ松さん』は一見ふざけてるだけのギャグアニメに見えるけど、その裏には多かれ少なかれテーマ性やメッセージい性を秘めてる作品でもあると思う。この実写版は全編ジャグに振ってるだけで、そういうのが感じられないのはやはり長編映画としては厳しいところ。

 

③実写映画としては評価し辛い 面白いかどうかは別にしても単純に映画として評価は出来ない。先ほど述べたように全体の軸となる物語自体が弱いから”Snow Man”による長いコントという感じだし演技も舞台の演技。だから、映画というより舞台を見てる気分になるし、ギャグもコントという感じがより強く見える。”Snow Man”の演技自体は全然悪くなく、いろんな意味で体張って全力なのは伝わってくる。でも、六つ子それぞれのキャラクターを表現できてたかと言われると微妙。十四松は割と再現度高くて好評らしいが、とりあえずバカみたいに元気な感じだしてればそれっぽく見えるから一番目立ってたんでしょう。ただ十四松は単に馬鹿なだけでなく、兄弟の中で一番得体の知れないところがあるキャラでもあるから、その不気味さまで出せてたら完璧だったと思います。

 

 あと脇のキャラたちも見た目のコスプレ感はともかく頑張って演じてたと思うが、役割がほぼツッコミをてるだけで終わってたのは少しもったいなかった。英監督はアニメ的な演出を実写映画でやることが結構ある人だが、今回は未だかつてないぐらいその点が目立つから、実写化ならではの良さというのがほとんど感じられなく、これだったらアニメでやればいいのでは?と思うことばかりだったのがやはり厳しいところです。

 

 実写だからできたネタは、せいぜいメタ発言のところぐらいだし、終盤はもうめちゃくちゃを通り越してなんでもありのやりたい放題。しかも無駄に伏線の回収がしっかりしてて、脚本はちゃんと練られてたのは笑っちゃいました。やはり『おそ松さん』を実写映画にする難しさが出てしまってます。そのこと自体をネタにしたりと工夫していると言えばそうだが、映画としては厳しいものだと思う。頭空っぽにしてギャグを楽しむものとしてノンストップギャグ映画として楽しめる人もいると思いますが、ハマらないときつい映画だと思う。この手のジャグアニメは相当うまくやらない限り、テレビで軽く見るぐらいがちょうど良いと思る。それでも興味のある方は是非でご覧ください。

 

 

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