今回紹介するのは『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』大ヒットホラーゲームシリーズ『バイオハザード』の実写映画最新作で、巨大製薬企業「アンブレラ」が起こした事故によって地獄と化したラクーンシティからの脱出を目指す者たちの戦いを描いた話。出演はカヤ・スコデラーリオ、ロビー・アメル、ハナ・ジョン=カーメル、アバン・ジョーギア、トム・ホッパーなど。監督・脚本はヨハネス・ロバーツ。

 

 今回は以前の作品とは関係ないリブード、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演のシリーズから一新された完全新作。今回はかなり原作のゲームの要素が強めの映画なので、バイオファンとしても気になってた作品。予告編でもかなりゲームの名場面の再現に力を入れており、ゲームの主要キャラ、名クリーチャーたちも沢山出ており、シリーズファンにはたまらない作品になっていそうな作品です。

 

1作目、2作目の再現にこだわった映画化 バイオの実写化といえばミラ・ジョヴォヴィッチが主演のシリーズが全6作あり、こちらは原作の要素ある程度取り入れつつも、オリジナル路線に行った作品でした。はっきり言って、ミラ・ジョヴォヴィッチを見せるための映画とうい感じでした。そのせいもあり、原作の人気キャラの扱いに不満が多いシリーズでした。

 

 対して今回の『ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、原作ゲームの要素を中心とした作品になっていて、ゲームの1作目と2作目の要素を多く取り入れてます。主要キャラもクリス、ジル、レオン、クレアと1、2作目の主役たちが揃っています。クリーチャーもリッカーやリサ・トレヴァー、Gバーキンと1、2作女の人気クリーチャーが揃ってて、大きく改変されてたミラ・ジョヴォヴィッチ版と比べて、ビジュアルは原作に忠実に再現されてます。

 

 それに、本作はゲームの名シーンの再現にかなりこだわって作られてます。例えば、初めてゾンビと接触した時の、こちらへ振り向いておぞましい顔を見せたトラウマシーン、2のリメイク版で『RE2』の冒頭にあった、トラックのおじさんの場面、ハンバーガー食ってるところまで再現されてます。ゲームに登場する舞台、洋館やラクーン警察署、地下の列車も忠実に再現されてて、洋館にあったピアノを弾くと開く隠し扉の仕掛けもで取り入れてます。

 

 また、バイオと言えばホラー。近年のバイオはかなりホラー路線に力を入れていて、『Ⅶ』はホラー路線の極みのような作品でした。今回のリブート版もホラーよりの作品になってて、特に、洋館の狭い空間で次々にゾンビに襲われるシーン、暗闇を使った恐怖演出は良かったと思います。監督をはじめ今回の作り手たちの「バイオ」のここが好きだった、ここを映画で再現したかった、のが感じは伝わってくるし、バイオファンとしても嬉しいところ。でしたが、残念ながら今回のリブート版、単純に映画としてガタガタで褒められた出来じゃないし、バイオファンとしても少し残念なところが多いです。

 

キャラクターが酷過ぎる 今回の一番の問題は完全にキャラクター、ある程度は原作の設定や役割を踏襲してますが、一部のキャラに関してはほぼ別人級に改変され、ゲームのキャラクターが好きな人たちにとってはこれじゃない感がすごいと思う。まず見た目からして「なんだこれ」という感じ。

 

 クリスとクレアはまだ分かるけど、他の3人は「誰かわかる?」というレベルで似ていない。見た目だけならまだしも、中身もほぼ別人化して、レオンなんかは原作にあった新人警官という部分だけがクローズアップされた結果、終始頼りない陰キャラみたいになっている。

 

 ウェスカーなんかはレオン以上に別人化して、ゲームだと多くの事件の裏で暗躍してるシリーズ最大の悪役でしたが、この映画だと普通の警官になってて、事件の裏で動いてる何者かに操られてるだけの存在になってしまってる。しかもジルと出来ててクリスと三角関係的な要素まであったり、原作のウェルカーらしさがほぼ皆無。それで最後にグラサンかけられても納得できない。クリスにクレア、ジルはかろうじて原形は保ってるけど、レオンとウェルカーの改変はファンとしては受け入れがたいものだと思う。

 

キャラクターの掘り下げがなさすぎる キャラクターの改変はそういうものとして受け入れるとしても、単純に一人一人のキャラ描写が薄すぎる。主人公ポジションのクレアは比較的マシですが、レオンは過去にヘマしてラクーンに左遷されてきたらしいが、その件に関して特に掘り下げられることもないし、過去の失敗から成長するみたいなこともなく、作中のまともな活躍がラストにロケランぶっ放すだけ。ゾンビにもリッカーにも襲われるけど、助けられるばかりで全然役に立たない、全くかっこいい場面がない。

 

 フィルも大した活躍もなければウェルカーの恋人関係もあっさり切り捨ててクリスと抱き合ってるし、グリスとクレアの兄弟関係にしても、お互いの思いを知ったことでわだかまりが解けていくのも特にない。いろいろ面白い設定はあるのに、全然キャラクター同士のドラマを膨らませてくれない。例えば、レッドフィールド兄弟は子供の頃アンブレラの養護施設にいた設定になってて、原作以上にアンブレラとの因縁が強くなってる。しかも、その養護施設は子どもたちを実験に使ってたヤバイ場所でもあり、その研究をしてたのがお馴染みのウィリアム・バーキンでもあるわけです。だから、レッドフィールド兄弟はバーキンとも因縁があることにもなってるわけです。なのに、特にドラマチックに生かされることもなく終わり、すごくもったいない。

 

 何より一番もったいないのはリサ・トレヴァーの扱い。この映画だと、元々養護施設にいた子どもが実験によって変えられてしまった存在で、幼い頃のクレアとであってる設定になってるが、ゲームと違って人を襲うような描写はなく、むしろクレアに養護施設の真相を教えようとしたり、リッカーを倒してクレアを助けたり、完全に味方サイドのクリーチャーになってる。確かに、原作が敵だったのが味方になるのはアリだと思うが、やはりこのリサも扱いが雑すぎて、彼女に関しての背景もうっすらとしか描写されないし、作中の活躍もただ都合よくクレアを助けて、道を示してるだけの存在。しかも、そのまま見送って出番が終わってしまう、あんまりな扱い。どうせならラストにGバーキンと戦うぐらいはすれば良かった思う。クレアとの関係にしても、どうせなら養護施設で昔友達だった子が再開したらこんな姿になってたとか、そういうショッキングな展開にすることだって可能だったのに、何もないので二人の関係も深みがなく、ただの都合のいい存在にしかなってない。冒頭から登場してるからリサが中心の話になるのかもと期待したが、この程度の扱いでホントにガッカリでした。

 

 あと本作のラスボスであるGバーキン。まだ第一形態の時点では意識が残っててクリスとの因縁めいた会話もあるが、それ以前の絡みがなさすぎてとってつけた感じが凄まじい。終盤だったから尺の都合とかで最終形態までいけないのは仕方ないにしても、ロケラン一発で死ぬのはさすがにどうかと思う。しかも、原則通りのシチュエーションなんだから、そこは原作通りに倒せとはすごく思いました。

 

どう考えても詰め込み過ぎ ここまで一つ一つの要素が薄くなってしまったのは完全に詰め込みすぎが原因。そもそも『1』も『2』も単独で映画にしてもいいぐらいの作品なのに、欲張ってその2つをごちゃ混ぜにしてしまった結果、ほとんどの要素が雑になってしまった感じです。個人的には普通に『1』を映画にしてくれれば良い映画になったと思うのに「どうしてこうなった?」感じです。あと、この映画はバイオ初心者には全然お勧めできません。アンブレラやTやGのウイルスに関して作中まともな説明がないので、ある程度バイオに詳しい人じゃないと置いてけぼりを食らうと思います。それに『1』『2』どちらの関係ない『T‐Veronica』の要素まで無駄に入ってて、伏線のつもりか知らないですがあれだけ見たら意味不明です。もっと要素を絞っていれば全然良い実写化になれるポテンシャルはあっただけに本当に残念な出来でした。これならまだオリジナルだと割り切れるミラジョボ版のほうが良かったと思います。興味のある方はご覧ください。

 

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