松本楽譜グリーン刷り五線紙 | 逗子録音所の鎌田雅人のブログ

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音楽プロデューサー、作曲家、アレンジャー、キーボーディスト、鎌田雅人のお仕事の合間日記

1989年~1994年、ワタクシは音楽学校に通っていました。


その頃は、五線紙は学校で売ってるテキトーなので済ませていましたが、


だんだん色気付いてきたことがあります。

書く内容はともかく、自分のスコアをカッコよく見せたい!!

スコアがカッコいいと、女子にモテるのではないか!?と錯覚まで起こして、

よこしまな気持ちで、1992年頃、鴬谷の五線紙の問屋、「松本楽譜」を目指しました。

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(現在の建物とは別の場所でした)



まるで小さな文房具屋さんの香りがする古い店内には、おばちゃんが1人いらっしゃって、

貧乏そうな21歳のチャラチャラした音楽学校生のワタクシに、

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五線紙の紙質や、変わった五線紙や、

プロミュージシャンや作曲家の特注五線紙についてなど、楽しく話してくれました。


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いろいろ見せていただいて、ワタクシが気になったのは、


この五線紙。


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なんだろう、グリーン刷り。五線紙がグリーン?まさかね。






おおおおおお!



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そのまさかでした。


ワタクシは一目惚れしてしまいました。


「この五線紙を俺の音符で埋めたい!!」



と頭から湯気を出し興奮しておりました。


おばちゃんも、

「グリーン刷りが好きな作曲家の方も、たまにいるのよ~」


と。

そうでしょうそうでしょうとも。その作曲家の一人になろうではないか!


そう思いましたが、所持金500円ぐらいだったワタクシは、

「今日は見るだけ!」とカッコをつけて言い訳をし、定期券で松戸の自宅まで帰りました。





翌年、

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日本音楽振興財団の「一日一善!!」の

故・笹川良一会長から吹奏楽曲で作曲賞をいただいたワタクシは、


音楽学校の先生方から少しばかり信用され、


なんと、

パイオニアLDCから発売される、カラオケレーザーディスク

「世界の抒情歌」のレコーディングオーケストラアレンジの仕事をいただく事になりました。


1曲7万円で15曲ほど。。。。。

さらば、貧乏生活!

と頭から湯気を出して、

最初に向かったのは、やはり

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念願のグリーン刷りの五線紙を買い、


夏休みのほとんどをこのアレンジ&スコア書きに費やしました。


もはや古文書となったスコアたち。

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そしてやがて発売されました。


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この「アメリカの歌」は全部ワタクシのアレンジです。

スタジオは、今は無き、「グリーンバード杉並」(別名:テイチク演歌スタジオ)

でした。オーケストラの皆さんと、指揮者で大御所アレンジャーの方に、

スコアの内容をところどころ叱られながら出来た、

最初のリリース作品です。


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それからのわたくしは、バンドのデビューや、ツアーミュージシャン活動、コンピュータを使った音楽制作が多くて、


松本楽譜の事も忘れていました。


バンドも解散し、


2001年、30歳になったワタクシは、


ザ・コンボイのシングルを書く事がありました。

品川プリンスホテルのテレビCMにもなるこの曲、

ブライアンセッツァーオーケストラのような、ビッグバンドでのロカビリーにしました。


そのためには、ドラム、ベース、ギター、

トランペット4人、トロンボーン4人、アルトサックス2人、テナーサックス2人、

バリトンサックス1人

が必要です。あとピアノも入れました。




つまり、そのためのスコアを書かなくてはなりません。

すぐ松本楽譜に行きました。(写真が残ってます)


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おばちゃんに事情を話したところ、


ジャズのビッグバンド用の楽器名が入ったフォーマットの五線紙があって、


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しかも、俺が好きなグリーン刷りがあった。

これはたまらない。音符と休符で埋め尽くさなくては!!!!



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世の中で、この瞬間、

どれほどこのグリーン刷りのビッグバンド五線紙が必要とされているのか。

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きっと今は、この俺だけだ!!!ってことで、ありったけ買って帰りました。

最低25枚は必要でした。

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譜面入れも俺の心をくすぐるものだったので、当然買って、

スコアも書いて、レコーディングして、

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(ミックスは今は無き麻布十番のSTUDIO farmの最後のプログラム)



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そして、発売しました。

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それから、コンピュータの発達もあり、自分で五線紙を作ったり、コンピュータで楽譜を制作してるうちに、だんだん足が遠のいて行きました。


松本楽譜の五線紙は、変わったのでなければ、街の楽器屋さんやインターネットでも買えます。


普段は、気軽に使える12段のノートパッドを買っていました。


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ただ、たまに思い出すのは、鴬谷の店舗。


「松本楽譜かあ・・・・、グリーン刷り懐かしいなあ・・・・」

「今も鴬谷にあるのかなあ・・・、そうだ、おばちゃん元気かなあ・・・・」



と思い続けてはいたんですが、日々の生活や仕事に追われて、

なかなか鴬谷に出向く事はありませんでした。



今回、実に11年ぶりに出かけました。


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入ってみると、おばちゃんはいらっしゃらなくて、

陽気なおじちゃんがいらっしゃいました。


店内はまったく変わっていませんでした。

ワタクシが「グリーン刷り」の五線紙が好きだったと話すと、


おじちゃんは、棚の奥から一冊出して来てくれました。

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かなり昔の物のようで、今は作っていないそうです。

もちろん我がものといたしました。





実はおばちゃんは、3年前に他界されたそう。

五線紙の事を俺に丁寧に嬉しそうに教えてくれたおばちゃん・・・。



五線紙を作るプロフェッショナルがいて、書くプロフェッショナルがいて、

演奏するプロフェッショナルがいて・・・・・


当たり前の事だけれど、

楽譜を書く事に美意識を持たなくちゃって気づかせてくれたおばちゃん。





もっと立派になってから、もう一度お会いしたかった。

ご冥福をただただお祈りするばかりです。





そこでワタクシは決めました。

特注五線紙を作ろうと!!

いまここで、発注しようと!!


おじちゃんと綿密な打ち合わせが始まりました。


松本楽譜には、昭和時代からの特注五線紙のサンプルが眠っています。


なかでも美しかったのは、美空ひばりさんの五線紙。

五線は黒ですが、上下に紫色で縁取りされて、ロゴとお名前が入っています。

おそらく、バックバンド用のパート譜に使用したのだと思います。

美空ひばりさんが、ものすごく紫にこだわったそうで、

本人の自宅のリビングの明かりの下で気に入った紫になるように、

何度も色を調整したそうです。

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北島三郎さんのは、青い縁取りで家紋が入っていました。

すごい迫力。





わたくしは、普段使っている、

先ほど載せました気軽に使える、はぎ取り式ノートパッド12段を、

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名前入りにしてもらおうと思いました。

インクの色?



もちろんグリーン刷りで。


懐かしがってなんかいられない。

新たに自分の手でグリーン刷り五線紙を生み出さなくては!



1色刷りはリーズナブルですしね。


ノートパッド、12段、グリーン刷り1色

名前の書体は、

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アルファベット、ゴシックで。




待つ事2週間、クリスマスを目前に、代金引換で届きました。



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子供の頃のクリスマスプレゼントのような気分です。

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いよっ!待ってました!!松本屋っ!!!!!


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どきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどき


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さあ、表をあげい!!!!!!






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おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。



なんて美しく素晴らしいのでしょうか。



早速書いてみよう。



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素晴らしい書き心地。音符が立体的に見えます。


白黒コピーしてしまえば、それまでですが、書いている時の心地よさは、優越感とも言えます。


20冊単位での発注になります。


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ノートバッドは、街の楽器屋さんで1冊735円で売られてます。

それを考えると今回のは855円くらいですから、

特注とはいえ、割と親しみやすいお値段です。




おじちゃん曰く、最近は五線紙にこだわる音楽家が少なくなってきたとのこと。

自分もそうでした。心を改めます。コピー紙の五線紙は使わないことにします。

ミュージシャンの賢明なる読者諸兄、ぜひ一度、鴬谷の松本楽譜に行ってみてください。

楽しいですよ。





今回は最低ロットの20冊しか発注してませんから、全部使い終わりそうな頃、

また新たな五線紙を発注しようと思います。



ありがとう松本楽譜。ありがとうおじちゃん。


そして、天国のおばちゃん、



頑張っていい曲書くよ!!!!


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