初めて手にしたギターは、確かスズキの12000円ほどのガットギター。中学校2年の誕生日プレゼントに買ってもらったのだから、1970年代の初め頃だった。んでもやっぱり「ガットギター」じゃ納得いかなくて友だちのグレコだったか、ヤマハだったかの安いフォークギターを借りっぱなしの毎日だった。


第一志望の私立高校合格のお祝いにと母がエレキギターを買ってくれた、Grecoの「SE-500」。ナチュラルな木目に白いピックガードがイカしたストラトキャスターだった。今思えばとっても綺麗な音をしてた…...んでもね、当時、俺がエレキギターに求めていたのは迫力ある歪んだ音......ストラトとグヤトーンのボリュームとトーンのツマミがふたつしかない大きめのアンプだけじゃ、どう弄ってみてもクリアーなその音が大きくなるだけ...……。

周りにゃエレキを持ってるやつも、ドラムを叩ける奴もいなかったし、ここで俺のロックバンドへの夢は絶たれた(笑) …・・・


んでもってやっぱ、生ギター........

友だちにギターを返した後は、4つ下の弟がどこかの質流品バザーで買ってきた8000円の、メーカーもよくわかんない黒塗りのギターをずっと使ってた。このギター、音は小さかったけど、触り心地といい、音色といい、お気に入りだったんだ。


大学に入って時給1500円の弾き語りのアルバイトなんてのをはじめて、少しまとまったお金が手に入ったので買ったのが、ピックアップなしの Ovation、「Glen Cambel model」 。

なんでこれを買ったのか、今思うと全くよくわかんない.......多分Martin とかを買うにはお金が足んなかったし、「ギターは生音」と思ってたからなんだろうなぁ......


大学を卒業して、録音スタジオでギターを弾く仕事にありつけて「Glen Cambelじゃ、ちょっと......」と思ってスタジオの社長お薦めで買ったのが「Martin  00-45 」 。こいつはパワーこそないものの、音色、バランス、弾きやすさ.....全て揃った凄いギターだったなぁ。ボディが小ぶりで小柄な俺には抱えやすいし。ただね、値段は凄かったし、見かけが派手なのがイマイチだったなぁ......



ここまでのライブでも随分と使って来た楽器、今はもう手元にない......小金に困って売り払ったり、誰かに貸して返してもらってなかったり。


確か20代になった頃、Larry Coryellがめちゃめちゃ好きだった......28歳くらいの頃、大人数で演奏するにはやっぱりピックアップが付いてた方がいいと、秋葉原で買ったのが Ovation「Elite」。

このギター、ピックアップで使うと...さすがにOvation 臭い大味な不思議な音だけれど、それでも指で弾くと細かなニュアンスも伝わるいいギター。「稲野バンド」と名乗り、ようやく自分の作った唄を自分で唄うことに目覚めた自分のいい相棒になった。




同じ頃、占い師「アリエールさん」や「有馬えりさん」、「鎌倉研さん」、「yoshico さん」、「箱石滝生 くん」、『柴田達朗くん」….....いろんな人たちのバックでギターを弾く事が多くて、生ギターの演奏に寄り添えるエレキギターが欲しくて、手に入れたのがGilson「ES-335TD」。

エレキギターには苦い思い出(?!)もあったけど、今回は歪んだ音を求めてた訳じゃない、最初はフルアコを探してた。んでもたまたま「335のいいのが入ったよ」って言われて買ったのがこのギター。思っていた通りの甘いジャジーなトーンから、アンプとの調整で歪んだロックサウンドまで幅広く対応してくれる頼もしいやつ。ここ10年以上、人前で弾くこともなく、寂しい限りだけど......あ、こないだ2022年10月、川口真由美さんのレコーディングの時、1曲だけ使ったな。



335を買った同じ頃、お茶の水のイシバシ楽器のウインドーで光ってたのが Martin「R-18」。

ひと目見ただけで気に入って、弾きもせずに「あれ、ください」と言ってしまったギター。今はすっかりトレードマークのようになってるこのギターも手に入れた当初は糸巻きの状態が酷くてチューニングがすぐに狂った、それに糸巻き交換した後、うっかり不安定な場所に置いて、知らない間にトップが割れてしまったこともあったっけ......それでも、また修理に出してからはやっぱりお気に入りギター。数年前、ご一緒させて頂いた小室等さんに「このギターが出して欲しいと思っている音をあなたは出している、弾きこなしているなんてもんじゃない」とお褒めの言葉を頂いた。後10年もすれば100歳になる、少しは大事に使おう......




Larry Coryellを好きになって生ギターがフィーチャーされたジャズを聴くうちにたどり着いたのはDiango Reinhardt。ジャンゴやら、ピレリやら......ジプシースウィングの魅力にも取り憑かれた

ね、勿論自分じゃ弾けもしないのに......んで、いつかは欲しいなぁ、と思ってたのがマヌーシュ・ギター。そんなギターをある日、共演した群馬のスーパースター・小林進さんが持ってきた。

「いなちゃん、よかったら買わない......!?」

うっかり乗っかっちまった.......買っただけで全然弾いてないAriaの「MM-20」、その型番から言っても高価なもんじゃないんだけどね。単に形が気に入った。いつかこいつも陽の目を浴びせたい......と思ってた。


コロナウィルスが蔓延しだす前までは、こんな俺たちでも地方にツアーへ出掛けてた。もっとも日帰りだったり、多くてもせいぜい2泊くらいだけど......(笑)そんな中、車の中でお手軽に弾ける生ギターがあったらいいなぁ...と思っていた矢先、群馬のライブハウス「YCO」で見かけたのが YAMAHAの「APXT-INA 」。

以前、ベースの平野さんからもらったミニギターはとっても気に入ってたけど、木場ちゃんに修理を依頼したら、全然帰ってこない......だから、マスターにおねだりして安く譲ってもらったのだ。やたらとネックが重くて左手で支えていないと倒れてしまう

以前のミニギターと違って、こちらは流石にバランスもいい、更に生音は小さいけど、ピックアップも付いているからその気になればライブでだって使うことが出来る。それに何より型番に俺の名前が入ってるのが素敵だ(笑)。家では滅多にギターを弾くこともないけど、こいつは小さいから出しっぱなしにしていても邪魔にもならず、今いちばんよく弾く楽器かな。デザインも可愛いし、弾きやすいし、今お気に入りの1本だ。



そして何年か前、手に入れたのがK yairi「YW-1000 」

ひと目で高価なギターだなぁ...とわかる1本。そう、以前使っていたMartin 00-45を彷彿させる風貌、今となっては弾き比べることは出来ないけど、00に勝るとも劣らない豪華な音、更にボディが大きい分、低音の響きが00よりも圧倒的。その豪華なデザイン故、手に入れた当初 facebookで写真を公開したら何人もの人から「似合わない」と言われ、手放すことも考えてたけれど、音の良さには勝てなかった(笑)......何年か前の暮れ、久しぶりの鎌倉研さんのバックの時や、川口真由美さんのバックやレコーディングにも使ったけれど、いつかもしもソロで唄うことがあったら、その時はこのギターで唄ってみたい。



この他にうちにあったギターは、Ariaのエレアコ、型番不明なGrecoのフルアコ、本物なのかもわからないMosriteのエレキ、ベンチャーズモデル、それにFenderの70年代後半のストラトキャスター。


Ariaのエレアコは、ちょうど最初に買った Ovationと見た目はよく似た感じ、もっともラウンドバックではなく、平らなボディ。安物なんだろけど、ピックアップも付いてるし、オープンチューニングにしてスライド専用にでも使えたらいいなぁって思ってた。


フルアコなエレキって、ただそれだけで大人な感じがするし、座って地味に弾く姿は渋くてなかなからイケてる......いつかきちんとメンテしてジャズも弾けたらいいなぁ......とこれもまた捨てられずにいたGrecoの型番不明なフルアコギター。とりあえず音は鳴るようにはしたけど、どうも音程が怪しいような.......


生ギターと違って、エレキギターってのはそのフォルム自体が妙にそそられたりする。ソリッドギター故の滑らかな曲線だったり、大胆なカットだったり......本物なのかどうなのかわかんないし、型番すらわかんないけど、そんなフォルムが好きでとってあったのがMosriteのベンチャーズモデル。まだ一度も使ってないし、今後も予定がない、音は出るのは確認済みだけど......


それにFenderのストラトも。いつかロックバンドで使うんだって思ってたけどね…


でもね結局、マヌーシュギターも、ARIAのエレアコも、フルアコも、ベンチャーズも、ストラトも、その他押し入れに隠れてたマンドリンも、スチールギターも数年前に処分しちゃった…   使わないのに持ってても楽器に申し訳ないし、何より置き場所に困ったからね…    ストラトは、なにわのてっちゃんに安く譲った。


そんなこんなの最近、新しく我が家にやって来たのが、Eastmanのアーチトップギター。


大好きなアーティストさんから「僕は使わないから弾いてよ!」って、2022年の暮れに送られて来た楽器「Eastman  AR-800 Black 」。


黒く塗られててせっかくの木目が隠れちゃってるのは残念だけど、少し小ぶりでボディも薄くてその癖、高音から低音までしっかり鳴ってくれる、削り出しのアーチトップってのがまた素敵な楽器。今後のライブには欠かせない1本になりそう…