甲府殺人放火事件の死刑判決に対し、控訴がなされた。控訴期限ギリギリの控訴で、しかも弁護人が控訴している。
弁護人には、本人の意向に関わらず、高等裁判所に控訴したり、最高裁判所に上告したりすることができる。弁護人は、何が被告人の利益になるか、自らの意思で判断することができるし、そうしなければならない責務を負っているからである(固有権)。
ただ、被告人本人は、その後、自ら取り下げることができる。取り下げる例も結構、少なくなく、死刑判決であってでも取り下げられたことがある。そして、取り下げてしまうと一審の判決が確定してしまう。
ところで、どのような気持ちで死刑判決の控訴を自ら取り下げるのであろうか。そこには様々な思いがあると推測される。もし、一日でも早く気持が楽になりたいから取り下げるというのであれば、残忍な方法で家族を惨殺された被害者遺族からすれば、怒り心頭であろうし、二次被害を与えられることにもなる。
他方、内省を深め罪と向き合う気持ちから真摯に一審判決を受け入れるために取り下げるのであれば少しは被害者遺族の気持ちも救われるかもしれない。
ただ、悲しいことに、死刑判決に限らず、全体を見渡すと取り下げる被告人の多くは、前者の気持ちからであることが少なくないように感じる。とても、残念である。